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十二章 エルリットの日記

階段を下りて二階層目についた。

二階層目は真っすぐな通路を中心に右に一本、左に二本道があるどこか生活感がある通路だった。

中央通路の奥にはエルドリア城で見た白色の結界がある。

鍵が必要だろうと考えた私たちは鍵を求めてまず右にある成人男性一・五人分ほどの広さしかない通路を進んだ。

この通路を突き当りまで進むとそこには木製の扉があった。

「入る?」

華は梨々香を見てそう言った。

「入りましょう」

梨々香はそう言うとドアノブに触れた。

どうやら、ここは管理者が生活する階層らしい。

私たちが進んだ先にある場所は部屋のようになっていて簡素な机と本棚とベッドがある。

ここにはエルリットという名の墓守の男性が住んでいたらしい。

苦労や葛藤、エルドリアとの関係、家族との関係が記された日記が何冊もある。


--月--日

今日、いつもより大きな祝福を受けた人が死んだ。

生きたのはたったの七年だった。

墓地に来たエルドリアが観察するように死者を見てる。

何を考えてるのだろうか。

--月--日

あぁ・・・悲しみを見る度に灯への信仰が薄れていく。

エルドリアも灯の城へ立ち寄らなくなった。

なにやら灯を消す計画を企ててるってウーリが言ってた。

母に言うべきだろうか・・・

--月--日

最近自我がないような状態で生まれてくる生者を多く見るようになった。

赤子は俺を見て泣くはずなのだが、泣きもせずただボーっとしてる。

そうだ、ドミニクに話してみよう。あの子は俺に無い知恵を持ってる。

--月--日

俺は生まれてくる生者に祝福を授けるのが仕事だと母から教わった。

でも、全部間違ってた。灯は俺を騙してた。灯は世界の律すら壊しかねない怪物を育ててた。

母は全て知ってた。俺たちを隠してた。

俺は取り返しのつかないことをしてしまった。

--月--日

エルドリアの計画がついに実行された。

エルドリアの刺客たちが無事に白き灯の神人を殺した。

灯は消え、新しい時代がやって来る。

--月--日

魔術全盛の時代が始まった。

灯の信仰を捨てた人々は魔術の本を片手に闘争し、競争し、旅をしてる。

俺にとっては生きにくい時代だが、墓地へ訪れる者たちも本を片手にどこか楽し気なのは良いことだ。

--月--日

ドミニクの使者が俺に黒い欠けた月を持ってきた。

偉大なる遺志と呼ばれててドミニクの愛情でできてるらしい。

ドミニクは偉業を成し遂げこの世から去ったとも聞かされた。

--月--日

黒い液体に覆われていて見えない・・・


「何この液体・・・」

華は日記を覆う乾いた黒い液体を見てそう言った。

「調べてみましょうか」

梨々香は日記を覆う乾いた黒い液体を見てそう言った。

日記を閉じた瞬間、日記が光になって死の律剣に吸い込まれていった。

すると、死の律剣が放つ神気が強くなった。

彼はエルドリアと対をなす存在だった。

自由なエルドリア、束縛されるエルリット。

美しきエルドリア、醜きエルリット。

大罪人のエルドリア、大聖人のエルリット。

彼は消灯計画に加担し、一つの大信仰を消した。

彼を束縛し、醜い姿に変え、大聖人に仕立て上げるものはなくなった。

彼はこの日から自由と責任を背負って生きていくのだ。

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