彼の彼女は、僕でした
***BL*** 初めての文化祭、幼馴染の妹に「お兄ちゃんの彼女ってどの人?」と聞かれた。僕も成生くんが好きなんだけどな、、、。ハッピーエンドです。
初めての文化祭。
高校受験の時、学校見学も兼ねて文化祭を見に行った事があるけど、今年は実行側。
先生達は、ある程度自由にさせてくれる。
外部からの入場者は、ネットで申し込み。
基本、生徒の家族や友達、または来年受験する中学三年生。
**********
「ねぇ!友くん!お兄ちゃんの彼女ってどの人?」
文化祭で成生くんの妹に聞かれた。
「え?成生くん、彼女いるの?」
「絶対いるよ!だって、最近、帰りが遅いし、いつもスマホ見てるし、服装だってオシャレになってる!」
そうなんだ、、、。知らなかった、、、。
「ごめん、僕は知らないや、、、」
「もう!友くんだけが頼りだったのに、相変わらずだなぁ。そんなにのんびりしてるから、女の子と間違えられちゃうんだよ?!」
え?それ、関係無くない?
「最近、お兄ちゃんとやたら親しい人いない?」
「え〜、、、。うーん、、、と。受付している子は、今、成生くんの隣の席で、黒板の前でジュース販売してる子は、同じ班、、、後は、、、。あ、あそこで片付けしてる子は同じ委員会だよ」
「うー、、、。どの人もお兄ちゃんのタイプと違う、、、」
「成生くんのタイプって?」
「友くん」
フハッ!
「何それ!」
「だって、お兄ちゃん言ってたもん!友くんみたいな人が良いって!」
でも、それって、僕じゃ無いって事だよね、、、。
「成生くんに聞けば良いじゃん」
「聞いたよ?聞いたけど教えてくれないんだもん。最終的に「好きなタイプは友」って言われた」
「美由ちゃんに教えてくれないのに、僕に教えてくれる訳無いよ」
「え?友くんは特別だよ?お兄ちゃんの中で
耳を塞がれた。めちゃ、固定されて聞こえないし、動けない。
**********
「美由?」
お兄ちゃんが、にっこり笑っている。
「友に何話してたの?」
友くんは、最初びっくりしてアワアワしてたのに、耳を塞いでるのがお兄ちゃんと分かると、大人しくなった。
お兄ちゃんの手を解こうとした手が、そのまま添えられていて、どうしたら良いか困ってる。
「美由のお兄さんカッコイイ、、、」
「友くんさんも可愛い、、、」
「ありがと」
お兄ちゃんが友達に微笑む。
友くんは、何を話してるの?って顔をしてお兄ちゃんを振り返る。
お兄ちゃんは、友くんの耳を塞いだまま、ん?って笑いながら見つめ返す。
「友くんは特別で、お兄ちゃんの一番だって」
お兄ちゃんはそっと、耳から手を離すと
「美由、お小遣い上げるから、他所に行きな」
「やった!」
そう言って、1000円札を一枚くれた。
**********
僕は知らなかった。成生くんに彼女がいたなんて、、、。毎日、放課後勉強を教わっていたけど、本当は彼女とデートしたかったんじゃ無いかな?僕が彼女との時間を奪っていると思うと、何だか申し訳無く思った。
**********
実行委員の子が、友と俺を休憩に出してくれた。
「友?どうした?」
友は考え事をしているのか、元気が無い。美由が何か言ったのかな?
「成生くん、彼女がいるの?」
「はぁ?」
二年生のお化け屋敷の教室に長い列が出来ていて、周りがうるさい所為か、つい、俺の声はデカくなった。
「美由ちゃんが彼女がいるって、、、」
「友と、いつも一緒にいるのに、彼女なんている訳無いでしょ?」
友がちょっと下を向いた。
「僕と一緒にいるから彼女が出来ないの?」
「違う違う違う!そうじゃ無いよ?友といつも一緒にいるから、俺に彼女がいないって知ってるでしょ?って意味!」
俺は、静かな渡り廊下の方に出て、話しを聞く事にした。
「彼女欲しいの?」
友が俺の顔を見て言う。
「そりゃあ、欲しいよ」
友が彼女になってよ、、、。
友が瞬きを一つした。
「そうだよね、、、。彼女欲しいよね、、、」
友?
「うん!僕も協力するよ!成生くんならすぐに彼女出来ると思う!どんな子が良いの?」
いーや!そうじゃ無い!友が彼女になって欲しいのっ!
俺は溜息を一つ吐いた。
*****
友は昔から、ちょっとのんびりしていて、勘違いしやすいと言うか、思い込みが激しいと言うか、、、まぁ、一所懸命で可愛いんだけどさ、、、。
俺の好きなヤツは、友なんだ、、、。
友に、この気持ちをぶつけたら、きっとどうしたら良いかわからなくなって、俺を避けると思う。でも、優しいから、最終的に悩んで悩んで、俺と付き合ってくれるんじゃ無いかな、、、。
だけど、そんなのはイヤだ、、、。友が純粋に俺を好きになって、俺の彼女になりたいと思ってくれないと、意味が無い。
*****
「友が彼女探してくれるの?」
「うん!何でも協力するよ!」
「そっか、取り敢えずさ、お腹空いたから食堂行かない?」
さーて、どうしたもんかと考えながら、友と二人で食堂に行く。
階段を降りながら
「ね、美由ちゃんの友達とか、どう?」
どう、、、って、、、。
「まだ、中学生だよ?」
「そうだけど、二人共可愛かったよね?」
友には敵わないけどね、、、。ん?二人共可愛かったって、友はあの子達がタイプなのかな?
「美由の友達はイヤだよ。別れた後、面倒臭いだろ?」
「そっかぁ、、、」
食堂に入ると、人がまばらだった。模擬店の飲食店が多いから、みんなそっちに行ってるんだと思う。
俺は、ゆっくり座りたいから食堂の方が良い。
「何食べる?」
いつもは無い、スナックのメニューがある。
ポテト、唐揚げ、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば。量が少ない分、値段もちょっと安かった。
「全種類買って、シェアしようか?」
友の目がキラキラ光る。量は食べられないクセに、色々食べたがるからな。
「良いの?」
「俺は、別にラーメンも食べようかな、、、」
メニューを見上げながら言うと、友が俺のシャツを引っ張る。
「ん?」
「ラーメン、一口頂戴?」
フッ!
「一口で良いの?」
「じゃ、二口」
「良いよ。ラーメン代は俺が出すけど、後は割り勘な」
友は嬉しそうにニコニコしていた。
スナックは出来ているのをトレーに載せて、ラーメンの注文をする。取り敢えず、俺が纏めて払って席を取りに行く。
ちょっと離れて、陽当たりの良い窓際の席に着く。柱と給水機が有って、人の話し声が届かない静かな席だった。
友はすぐに財布を開けて、精算してくれた。
こう言う当たり前の所がちゃんとしていて、好きだな。
お好み焼きを箸で半分に切って、半分を焼きそばの蓋に乗せる。空いたスペースに焼きそばを半分入れて友に渡す。
友は待ち切れないらしく、焼きそばとお好み焼きから目を離さない。可愛いな。
「一番でラーメンお待ちのお客様ー!」
呼ばれて俺は受け取りに行く。
俺が戻ると、たこ焼きが一つ無くなっていた。
「友、食べたの?」
「へへへ」
と笑った。
「ラーメン、先に食べな」
と言うと、嬉しそうに二口食べる。
「もう一口良いよ」
友の一口は小さいから、大して麺も減らない。
友が飯を食うのを見るのが好きだ。沢山は食べられ無いけど、黙々と美味そうに食べる。
「ねぇ、成生くんはどんな子が好きなの?」
「うーん、飯を美味そうに食べる友」
「そうなんだ。身長とか気にする?」
「162センチ位」
「成生くん、177センチだもんね。僕位の身長か、探しやすいかも」
うん、友の身長。
「髪は?ロング?ショート?」
「絶対ショート」
友がショートだから。
「部活は運動部?文化部?」
「帰宅部」
友、部活入らないもんね。
「ふふ、一緒の時間が大切なんだね」
「年上とか、年下は?」
「同じ歳が良い」
窓から日が入って来て、ポカポカしている。温かくて気持ちが良い。隣に友がいて、周りに誰もいなくて、、、。
「誰か、良いなって思う子いないの?」
「友」
「なぁに?」
ふふ、、、呼ばれてると思ってる。
「成生くん?寝ちゃった?」
カチャカチャ、食器を片付ける音がする。椅子を引く音。友がトレーを持って、席を外す。優しいな、、、。
**********
成生くんは疲れていたのか、頬杖を付いて寝てしまった。お腹も一杯だし、お日様が当たって暖かいから、気持ち良いんだろうな。10分位待って声を掛ければいいか。
*****
模擬店を回りながら、僕位の身長で、ショートヘアの子を探した。運動部の子は、ショートヘアの子もいるけど、圧倒的にロングヘアの子が多い。
この子はどうかな?って子を見つけて、こっそり成生くんに聞くんだけど、一言
「却下!」
と言われて終わる。なかなか条件が合って、良いなって思う子が現れない。
「彼女作るのって、大変なんだね」
僕がやれやれと思いながら言うと
「そうだね」
と成生くんが言った。
「そう言えば、友は好きな子いないの?」
「え?僕?僕の事はいいよ。聞かないで!」
「友、好きな子がいるんだ」
ぎゃーっ!聞かないでって言ったのにー!
「って、待って?成生くん、好きな人はいないの?」
「ん?」
あ、、、いるんだ。にっこり笑って、誤魔化してる。
「なぁーんだ。好きな人がいるから、条件が合っててもみんな却下なんだ」
納得、納得。僕がどんなにオススメしても、好きな子がいたら、そりゃあ、お眼鏡にかなわないよ。
「告白しないの?」
「うん、告白してくれるの待ってる」
「成生くんが告白したら、すぐ彼女になってくれると思うよ?」
「ホント?!」
「だって、成生くんカッコ良いし、背も高いし、優しいから。さっきの美由ちゃんの友達もカッコ良いって言ってたよ」
「友、可愛いって言われてたよね」
「むぅ。僕はちょっとだけ背が低いからね」
僕が女の子なら、成生くんとの身長差、丁度良いんだけどな、、、。
*****
「友?」
「ん?」
「元気無い」
成生くんに好きな人がいるってわかってから、その事ばかり考えちゃうな、、、。
「そっかな、、、」
写真部の展示をゆっくり見る。知ってる子の名前を見つけて写真を見ると、とても同じ歳の子が撮ったとは思えない、綺麗な写真だった。
周りの子が、みんな大人っぽく感じる、、、。
そう言えば、成生くんは幼馴染だけど、恋話とかした事が無かった。
自分でも、テンションが落ちてるのがわかる。成生くんに好きな人がいるって聞いてから、自分の気持ちをどうしたら良いかわからない。
幼馴染だからって訳じゃ無いけど、成生くんとはいつも一緒に過ごしていた。
高校受験する時も、当然の様に同じ学校にしたし、僕の成績がイマイチだったから、勉強も教えてくれた。
もし、成生くんに彼女が出来たら、僕はどうしたら良いんだろう、、、。
今更、一人で休み時間を過ごすとか、無理だよ、、、。
ドンっ!
狭い廊下で、女の子と肩がぶつかった。
「ごめんなさいっ!」
すぐに謝ったけど、睨まれた。
ワザとぶつかって来た感じがして、ドキドキした。
「友、大丈夫?」
「うん、ぶつかっちゃった」
「ちょっと座る?」
「大丈夫、大丈夫。早く教室戻って、係りの仕事、交代しなくちゃ」
僕はさっきの女の子の事を思い出した。成生くんの事が好きな子だ。
**********
友の調子が悪い。俺に好きな人がいるって知ったからかな?
相手が自分とは気付いて無いだろうから、きっと、また勘違いしてる。
友が少しでも俺を意識してくれたら嬉しいんだけど、、、。
*****
文化祭の打ち上げが始まる迄、まだ時間がある。開始は6時半、学校の近くのしゃぶしゃぶ屋さんだった。
「移動するには早すぎるね。どうする?」
ホームルームは、3時半過ぎに終わった。片付けは週明けの月曜日、一時間目に時間が取ってある。
「後、三時間か」
家までは自転車で30分かからない。でも、一度帰って、また出てくるのも面倒だな。
いつまでも学校にいる訳にもいかず、取り敢えず自転車を押して校内から出る。
「ファストフード店で時間潰そうか?」
「そうだね。あんまりお腹空いて無いけど、ジュース飲みたいな」
「じゃ、友、着いて来て」
学校から離れた、小さな商店街のファストフード店を目指す。
自転車が何台か止まっていたから、他にも学生が来てるんだな、と思ったらクラスの友達が数人いた。みんな考える事が一緒だ。
ちょっと離れた場所に座り、ジュースを買いに行く。
「友は?」
「オレンジジュースの Lサイズ」
「わかった。買って来るよ」
荷物から財布を取り出し、ジュースを買いに行く。
ジュースだけで、何時間も居座るのも気不味いから、ナゲットも買った。友は、いつもマスタードソースだから、それにする。
トレーを持ちながら座席に戻ると、友がぼー、、、ッとしていた。
「友?疲れた?」
「ちょっと、、、」
「そっか、ジュース飲んだら、少し寝れば?」
友は考える様に笑った。
四人掛けのボックス席は、衝立が高くて他の席から死角になっていた。友は、ジュースを飲むと、ソファに横になりウトウトし出した。
普通さ、テーブルに伏せって寝ると思うんだよね。ま、友らしくて可愛いけどさ。
しばらくすると、友は動かなくなった。ちょっと立ち上がって、テーブルの向こうの友を覗き込むと、すやすやと本当に寝てた。
**********
本当に寝てしまった。
身体を起こすと、成生くんはいなかった。
「時間!」
慌てて確認すると、まだ30分しか経って無い。良かった、、、。成生くん、何か買いに行ったのかな?
僕は、残っていた、ナゲットを一つ食べる。
成生くん、好きな人がいたんだ、、、。
知らなかったな。いつも一緒にいたから、気にした事無かった。僕は回らない頭で考えていた。
ソファに身体を預け、ジュースを飲みながら視線を上げる。衝立の端に成生くんが見えた。全部じゃ無い。襟足と背中。椅子に座っていた。
僕は、ちょっと立ち上がって確認した。
さっき、僕にぶつかった子と一緒だ。
僕は、成生くんが見えない様に、ちょっとだけ隣に移動した。衝立に寄り掛かる様に隠れる。
二人で何を話しているんだろう。すごく気になるけど、聞くのが怖い。
もしかしたら、あの子が成生くんの好きな人かな?
「友、起きてたんだ」
はっ!として顔を上げる。成生くんが戻って来た。
「起きたらいないから、びっくりしちゃった」
「ごめん、ごめん。ちょっと呼ばれちゃって」
「、、、」
お互い、その先が続かない。
*****
僕達は、それぞれスマホを弄って、たまに話しをして時間を潰した。移動時間も考えて、様子を見ながら片付けをする。
あの席に、あの子はいなかった。
自転車に乗り、成生くんの後に着いてしゃぶしゃぶ屋さんに行く。
*****
クラスの、参加出来るメンバーが集まっての打ち上げだった。人数が多いから、食べ放題、飲み放題。
幹事は大変だろうな、と思いつつ適当に空いてる席に座る。
幹事の二人が来て
「コースはこのコースで飲み放題だけど、座席毎に清算だから、追加料金出ても大丈夫。終わる時間はタブレットに出るから気を付けて。座席の移動は大丈夫だけど、他にもお客さんがいるから、あまり大きな声ではしゃがないで欲しいな」
一緒に座ったのは、野中くんと宮地くん。
「そう言えば、坂巻、さっき告白されてたな」
野中くんが言い出した。
「え?いつ」
野中くんの隣に座っていた、宮地くんが聞く。
「ほら、さっき、ファストフード店でさ」
僕は成生くんを見た。
「まぁまぁ、取り敢えず、肉、頼もう!」
成生くんは冷静にあしらっていた。
お肉を頼んでから、飲み物を取りに行く。先に野中くんと宮地くんが席を立った。
成生くん、告白されたんだ、、、。きっと、あの時だ、、、。
僕は、聞くに聞けなくて、メニューを見て誤魔化した。
**********
野中に告白されてるのを、見られていた事は気付いていた。他にも同じクラスのヤツがいたし、見られても別に良かった。
むしろ、あの時寝ていた友は知らなかったから、どう説明するか悩む手間が省けた。
でも、友は何も聞いて来ない、、、。
野中と、宮地はジュースと付けダレ、野菜も持って来てくれた。店員が出汁を入れてくれたから、俺達も飲み物を取りに行く。
「で、何て返事したの?付き合うの?」
野中は直球だった。
「野中っ!」
宮地が止める。
「何だよ?、、、あ?ああ。、、、深瀬は坂巻が告られたの知ってるんだろ?」
「え?」
友が俺の顔を見る。
「知らなかった」
「友は、疲れて寝てたから」
友がコクンと頷く。
テーブルの横に、猫型ロボットが肉を配膳しに来た。
「おっ!」
宮地と俺で肉を受け取り、完了ボタンを押す。
「何あれ、、、初めて見た」
友の反応が可愛い。
「ロボットが配膳してくれるんだよ。受け取ったら、ボタンを押すんだ。、、、こっち、座る?忙しくなるけど」
「え?いいの?」
「宮地もいるから、平気か」
と言いながら、席をチェンジした。
友は、隣に猫型ロボットが来ると、いそいそと立ち上がり運ばれて来た肉を受け取る。最後に完了ボタンを押して、ロボットが帰って行くとやっと肉を食べ始める。
俺と野中、宮地の三人は、俺が告白された話しを続けた。友は聞いているのかいないのか、静かに肉をしゃぶしゃぶしている。
「なんで、付き合わないんだよ」
「ほぼ知らない子だよ?付き合えないよ」
「でも可愛かっただろ?」
「付き合うってなると、顔だけじゃ決められない」
隣で友が、マロニーが取れなくて苦戦してる。
「なに?坂巻は好きなヤツでもいるの?」
友が折角掬ったマロニーを落とした、、、。
「友、こうやって、端に寄せてから取りな」
そのまま友の皿にマロニーを装る。
「ありがとう」
友は、マロニーをちゅるんと食べると満足していた。
「アイツ、誤魔化したな、、、」
「うん、誤魔化した」
煩いなぁ、、、。
*****
通路を挟んだ斜め前の席で、店員さんが片付けをしていた。片付け用のカートが少し通路の真ん中に出ていたのか、猫型ロボットが通れなくて困っていた。
友は目を輝かせて見ている。
ロボットは小さく移動しながら方向を変え、上手く通り抜けた。
そして、俺達のテーブルに肉を運ぶ。
「お前、偉いなぁ」
と褒めているから
「友、その猫の顔の所にカメラが付いてて、作業場でリモコン操作してるんだよ。話し掛けると、店員に聞かれちゃうからな」
と言うと
「え!恥ずかしい、、、」
間に受ける。
「坂巻。深瀬、信じてるよ?」
と宮地が言うと
「成生くん、嘘ついたな!」
ちょっと怒った。
「早く肉。取らないと、待ってるぞ」
友は慌てて、肉を受け取り、空いた食器を一番下のケースにしまって、完了ボタンを押す。
「へへ、可愛いな」
独り言を言う、友の方が可愛いけどね。と思いながら
「友、アイス食べる?取りに行こうよ」
と誘った。
ソフトクリームに白玉とあずきを載せたら
「何その美味しそうなの、、、」
とびっくりしている。友も真似してソフトクリームを装ろうとレバーを引く、ビビり過ぎてちょっとしかレバーを引けないから、ソフトクリームが出て来ない。もうちょっとレバーを引くつもりが、引き過ぎたのかソフトクリームが急に出て来て慌てていた。
「成生くん、、、」
悲しそうに俺を見る、、、。
「大丈夫、大丈夫。食べるのは友だから」
と言うと
「尚更綺麗なのが良かった、、、」
ぶつぶつ言いながら、白玉一つとあずきを装る。
予約の時間はあっという間に過ぎてしまい、店の前で解散になった。
何人かは、二次会にファミリーレストランへ行くみたいだけど、俺と友は自転車で帰った。
*****
いつもの分かれ道にある信号機の下で、友が
「告白されたんだね」
と呟いた。
「、、、友、公園でも寄って行く?」
俺が誘うと、ちょっと悩んでから頷いた。
二人で自転車を押しながら、すぐ目の前の公園に入って行く。
自転車のスタンドを掛け、ベンチに座る。
大きな木の下にあるベンチで、夏は日陰を作るから、よく使っていた。
少し離れた場所に時計がある。あんまり遅くならない様に、友を帰さないと。
「友?」
友は小さく息を吐いた。
「もし、成生くんに彼女が出来たらさ」
「うん」
「僕、どうしたら良いのかな?」
うーん、、、。友以外と付き合う気は無いんだけど、、、。
「今まで通りで良いんじゃない?」
「でもさ、朝も、休み時間も、帰りも一緒でしょ?彼女だって、成生くんと一緒に過ごしたいと思うよ?。もし、僕が誰かと付き合ったら、毎日一緒にいたいと思う、、、」
「じゃあ、友とは会わない方が良いのかな?」
「、、、」
友は自分の爪を弄っている。
「その方が、、、きっと良いよね、、、」
「じゃあ、俺に彼女が出来たら、友と遊ぶの辞めるよ」
出来る筈の無い彼女の話なんかするから、ちょっと意地悪をしたくなった。しかも、俺と会わないって言う選択をするから、、、。
「、、、うん、、、」
あー、、、これ、絶っっっ対、友が泣く、、、。
「うん、、、そうする、、、」
友は泣かない様に、唇に力を込めて頑張っていた。
昼間は、俺の彼女選び楽しそうにしてたよね?
「あんなに協力的だったのに、どうしたの?」
「成生くんに彼女が出来るのは、本当に嬉しかったんだよ?でも、成生くんに好きな人がいるって思ったら、何だか淋しいなって、、、」
友は爪を爪でカリカリ弄りながら、たまに剥くように爪を剥いでいた。
「友、爪無くなっちゃうよ」
そう言って、友の手に手を重ねた。
「友にも好きな人、いるでしょ?」
「うん」
友が俺の手を握った。
、、、でも、その後は何も無い。
**********
いつか、成生くんから離れないといけないんだ、、、。そう思ったら、何も考えられ無くなった。
家に帰って、お風呂に入る。歯磨きをして、身体が温まったまま、布団に潜り込むと、膝を抱えて小さくなった。
「成生くん、、、」
小さな声で呟く。
真っ暗な部屋、真っ暗な布団の中。僕は泣いた。一人きりだから泣いても良いじゃ無いか。
枕で声を隠して、しくしく、しくしく泣いた。たまに、
「うう、、、」
と声が漏れるけど、大丈夫、誰にも聞かれない。
しばらく泣いて、少し落ち着いた。
僕は、やっと眠る事が出来た。
**********
「友、、、大丈夫?」
「、、、見ないで、、、」
友は腫れた目を隠すように手を翳し、下を向く。
昨日のアレで、夜泣いたんだ、、、。
待ち合わせの時間に、友が来ていないなんて初めてだった。
連絡をすると、本当に忘れていたらしく
「今日、行けない」
と返事が来た。
俺は今まで、こんなドタキャンみたいな事が無かったから、心配をして友の家に行く事にした。
「友、玄関先で何やってるの?成生くんに上がってもらいなさい」
友のお母さんに声を掛けられて、
「どうぞ、、、」
と入れてくれる。
「成生くん、コーヒーでいいかしら?」
「お願いします」
「後で持って行くからね」
僕達は友の部屋に入った。
友はまだ、パジャマだった。本当にさっき起きたみたいで、寝癖が少しついている。
「顔洗ってくるから待ってて、、、」
友はそう言って部屋を出た。
入れ替わりで友のお母さんがコーヒーと、友の朝ごはん、後、腫れた目を押さえる為の冷たいおしぼりと氷水を載せたトレーを持って来た。
「成生くん、あの子、何かあった?誰かに振られたのかしら?」
心配そうに言う。
「僕にはちょっと、、、」
と、返事をする。
友のお母さんは、立ち上がりながら
「おばさん達、用事が有って出掛けるけど、ゆっくりしてってね」
と言って、部屋を出て行った。
顔を洗った友が戻って来た。目の腫れは引いていない。どうして夜泣くと目が腫れるんだろう、、、。
「夜、泣いたの?」
友の唇がキュッと締まった。
友は、こう言う時、「泣いてない」とか嘘を言わない。ジッと黙っている。
「何で、泣いたの?」
何と無くわかっているのに、ワザと聞く。
友は、視線だけ動かして俺を見る。腫れた目が、痛々しい。
俺は冷たいおしぼりを友に渡した。
*****
スマホで、泣いた後の目の腫れを引かせる方法を調べたら、冷たいタオルで冷やす、温める、マッサージをすると良いって書いてあった。
友のベッドに上がる。いつもの事だから、友も気にしない。
「友、おいで」
俺が手を広げると
「何?」
と近寄って来る。俺が手を広げたままでいると、そっと抱きついて来た。
いや、そうじゃない。そうじゃないけど、つい抱き締めてしまう、、、。本当はマッサージしたいから、仰向けで寝て欲しかったんだけど。まぁ、良いか。
「マッサージすると腫れが引くらしいから、仰向けで寝てくれる?」
「あ!、、、ごめん」
友は謝ってから、そっと俺の方に頭を寄せて、仰向けになった。
俺は、自分の両手を擦り合わせ、温める。
そっと、友の目頭を押さえると
「気持ち良い、、、」
と呟いた。
おしぼりで冷やして、俺の掌で温めて、マッサージをする。何回か繰り返して、大分腫れが引いた。
友はゆっくり起き上がると、目の周りを押さえながら触るとお礼を言った。
「今日はもう、出掛けるの辞めようか、、、」
「うん」
と言いながら、ベッドに横になる。友は目の前にある、俺のズボンのベルト通しを弄っている。
何か言いたい時の友だ。
「どうした?」
「、、、」
何かあるんだろうけど、どう言ったら良いか悩んでる所かな?友が話し出すまで待てば良いか。
「朝飯、食いな?」
「うん」
うんって言いながら、俺の腰に抱き付いた。一度力を込めてギュッとすると、ゆっくり起き上がり、俺の背中に寄り掛かる。
漸く身体が離れたと思ったら、勉強机に置かれたトレーから、朝食のピザトーストの乗ったお皿を持ち上げた。
「、、、成生くんも食べる?」
「ちゃんと食べないと」
「半分しか食べられない」
「友、、、食欲無いの?」
唇がキュッと締まる。
「こんなに大きいの食べられない」
「じゃ、食べられるだけ食べたら頂戴」
「ありがと、、、」
友はゆっくりピザトーストを食べた。
「ん」
と言って、残ったピザトーストを皿毎俺に寄越す。
「友、ケチャップ付いてる」
親指で、口の横に付いたケチャップを拭うと、友の顔が赤くなった。
いや、そんな顔されるとこっちまで恥ずかしくなるしっ!
友は慌てて、俺の親指を握り、ケチャップを拭って舐めた。
「友、そんなの舐めたらダメだろ?」
「だって、成生くんが舐めたらいけないと思ったから、、、」
「だからって」
「何で?成生くんの指は汚く無いよ?」
そうじゃない、、、。綺麗とか、汚いとかじゃ無くてさ、、、!
「僕、成生くんとならキスだって出来るし、、、」
「、、、」
「成生くんの事、好きだから、別に汚く無い」
ポロポロポロと涙を溢した。
「成生くんに好きな人がいても、僕は成生くんが好きなんだから、、、」
友が呟いた。
俺は、友の顔を包んで上を向かせる。唇がキュッとなってる。そっとキスをすると更に涙がボロボロ溢れた。
「俺の事、好きなの?」
友の顔を見ながら聞く。
「成生くんが好き」
両手を広げて抱き付いて来る。
「友ー!母さん達、買い物行って来るからー!」
二人でビクッと反応する。
玄関が開き、鍵が閉まる音が聞こえた。
俺は、つい友を隠す様に抱き締めていた。
「ごめんね。成生くん、好きな人がいるのに、、、」
友が俺の心臓の音を聞く様に、胸に耳を当てる。
自分でもドキドキしているのが分かった。俺の心臓の音、聞かれちゃってるんだな、、、。
「成生くんが好きな人と付き合えれば良いな、って思う。、、、嘘じゃない、本当だよ。、、、でも、やっぱり淋しいなって思っちゃう、、、。僕、嫌なヤツだよね」
俺のシャツを握り締める。
「、、、俺も、好きな人と付き合いたい」
友が顔を押し付けた。涙を拭いてるんだ。
「、、、友みたいに頑張って告白する、、、」
友は、もう一度俺を抱き締めて深呼吸した。唇をキュッと結んで顔を上げる。
「成生くんも頑張って、成生くんなら大丈夫、きっと付き合って貰えるよ」
笑った。
友、こう言う時、無理して笑うんだよな、、、。
「友?、、、」
何?と首を傾げる。
「好き。、、、俺と付き合って、、、」
キョトンとした顔をしている。
「好きな人って、僕?」
あぁ、やっと言えた。長かったな、、、。
「じゃあ、僕が告白するの待ってたの?」
「友、優しいから、俺から告白したら好きじゃ無くても付き合ってくれそうだから」
「す、好きじゃ無ければ付き合わないよ?!告白されたからって、誰とでも付き合える訳じゃ無いからね?」
「本当に?」
「、、、本当だよ。好きな人と付き合いたい。僕は成生くんが良いんだよ」
「そっか、良かった」
俺は、友を抱き締めた。
**********
成生くんの家で、定期テストの勉強をする約束をした。
「友、今日の英語どうだった?」
「、、、聞かないで、、、」
僕は、英語が一番苦手だ。
成生くんとテストの見直しをする。隣に座る成生くんの顔を見ていたら
「友?聞いてる?」
って言われて、我に帰る。
「ごめん」
だって、成生くんの顔、カッコ良いから。いつまでも見ていたい。
成生くんの顔が近付いて来て、頬にキスされた。
「今は集中して」
キスされたら、集中なんて出来ないよっ!
顔が真っ赤になった。
**********
玄関の鍵が開く音がする。誰か帰って来たんだ。
廊下を歩く音、リビングのドアを開けて美由ちゃんが入って来た。
「友くん、いらっしゃい」
「美由、お帰り。何か食べる?」
「うん、お腹空いちゃった!」
「待ってて、今、ご飯作るから」
美由ちゃんにうどんを作る為に、立ち上がり台所に行く。僕達もさっき食べた肉うどん。
美由ちゃんは鞄を置きながら、僕の側に座る。
「ねぇ!友くん!お兄ちゃんの彼女わかった?」
「えっと、、、」
「美由!友に近付き過ぎ、、、ちょっと離れて」
成生くんが台所から声を掛ける。
「?。お兄ちゃん、どうしたの?」
美由ちゃんに聞かれて、どう返事をしたら良いかわからない。
台所から聞こえる、カチャカチャと言う音と、うどんの匂いがする。
成生くんがうどんを載せたトレーを持って来る。美由ちゃんの前に置きながら
「友は、俺の彼女になったから、手を出さないでね」
彼の彼女は、僕だった。
沢山の作品の中から選んで頂いて嬉しいです。ありがとうございます。




