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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

彼の彼女は、僕でした

***BL*** 初めての文化祭、幼馴染の妹に「お兄ちゃんの彼女ってどの人?」と聞かれた。僕も成生なるせくんが好きなんだけどな、、、。ハッピーエンドです。


 初めての文化祭。

 高校受験の時、学校見学も兼ねて文化祭を見に行った事があるけど、今年は実行側。

 先生達は、ある程度自由にさせてくれる。

 外部からの入場者は、ネットで申し込み。

 基本、生徒の家族や友達、または来年受験する中学三年生。



**********



「ねぇ!ともくん!お兄ちゃんの彼女ってどの人?」

文化祭で成生なるせくんの妹に聞かれた。

「え?成生くん、彼女いるの?」

「絶対いるよ!だって、最近、帰りが遅いし、いつもスマホ見てるし、服装だってオシャレになってる!」

そうなんだ、、、。知らなかった、、、。

「ごめん、僕は知らないや、、、」

「もう!友くんだけが頼りだったのに、相変わらずだなぁ。そんなにのんびりしてるから、女の子と間違えられちゃうんだよ?!」

え?それ、関係無くない?

「最近、お兄ちゃんとやたら親しい人いない?」

「え〜、、、。うーん、、、と。受付している子は、今、成生くんの隣の席で、黒板の前でジュース販売してる子は、同じ班、、、後は、、、。あ、あそこで片付けしてる子は同じ委員会だよ」

「うー、、、。どの人もお兄ちゃんのタイプと違う、、、」

「成生くんのタイプって?」

「友くん」

フハッ!

「何それ!」

「だって、お兄ちゃん言ってたもん!友くんみたいな人が良いって!」

でも、それって、僕じゃ無いって事だよね、、、。

「成生くんに聞けば良いじゃん」

「聞いたよ?聞いたけど教えてくれないんだもん。最終的に「好きなタイプは友」って言われた」

「美由ちゃんに教えてくれないのに、僕に教えてくれる訳無いよ」

「え?友くんは特別だよ?お兄ちゃんの中で

耳を塞がれた。めちゃ、固定されて聞こえないし、動けない。



**********



「美由?」

お兄ちゃんが、にっこり笑っている。

「友に何話してたの?」

友くんは、最初びっくりしてアワアワしてたのに、耳を塞いでるのがお兄ちゃんと分かると、大人しくなった。

 お兄ちゃんの手を解こうとした手が、そのまま添えられていて、どうしたら良いか困ってる。

「美由のお兄さんカッコイイ、、、」

「友くんさんも可愛い、、、」

「ありがと」

お兄ちゃんが友達に微笑む。

 友くんは、何を話してるの?って顔をしてお兄ちゃんを振り返る。

 お兄ちゃんは、友くんの耳を塞いだまま、ん?って笑いながら見つめ返す。

「友くんは特別で、お兄ちゃんの一番だって」

お兄ちゃんはそっと、耳から手を離すと

「美由、お小遣い上げるから、他所よそに行きな」

「やった!」

そう言って、1000円札を一枚くれた。



**********



 僕は知らなかった。成生なるせくんに彼女がいたなんて、、、。毎日、放課後勉強を教わっていたけど、本当は彼女とデートしたかったんじゃ無いかな?僕が彼女との時間を奪っていると思うと、何だか申し訳無く思った。



**********



 実行委員の子が、友と俺を休憩に出してくれた。

「友?どうした?」

友は考え事をしているのか、元気が無い。美由が何か言ったのかな?

成生なるせくん、彼女がいるの?」

「はぁ?」

二年生のお化け屋敷の教室に長い列が出来ていて、周りがうるさい所為か、つい、俺の声はデカくなった。

「美由ちゃんが彼女がいるって、、、」

「友と、いつも一緒にいるのに、彼女なんている訳無いでしょ?」

友がちょっと下を向いた。

「僕と一緒にいるから彼女が出来ないの?」

「違う違う違う!そうじゃ無いよ?友といつも一緒にいるから、俺に彼女がいないって知ってるでしょ?って意味!」

俺は、静かな渡り廊下の方に出て、話しを聞く事にした。

「彼女欲しいの?」

友が俺の顔を見て言う。

「そりゃあ、欲しいよ」

友が彼女になってよ、、、。

 友が瞬きを一つした。

「そうだよね、、、。彼女欲しいよね、、、」

友?

「うん!僕も協力するよ!成生くんならすぐに彼女出来ると思う!どんな子が良いの?」

いーや!そうじゃ無い!友が彼女になって欲しいのっ!

俺は溜息を一ついた。



*****



 友は昔から、ちょっとのんびりしていて、勘違いしやすいと言うか、思い込みが激しいと言うか、、、まぁ、一所懸命で可愛いんだけどさ、、、。

 俺の好きなヤツは、友なんだ、、、。

 友に、この気持ちをぶつけたら、きっとどうしたら良いかわからなくなって、俺を避けると思う。でも、優しいから、最終的に悩んで悩んで、俺と付き合ってくれるんじゃ無いかな、、、。

 だけど、そんなのはイヤだ、、、。友が純粋に俺を好きになって、俺の彼女になりたいと思ってくれないと、意味が無い。



*****



「友が彼女探してくれるの?」

「うん!何でも協力するよ!」

「そっか、取り敢えずさ、お腹空いたから食堂行かない?」

さーて、どうしたもんかと考えながら、友と二人で食堂に行く。



 階段を降りながら

「ね、美由ちゃんの友達とか、どう?」

どう、、、って、、、。

「まだ、中学生だよ?」

「そうだけど、二人共可愛かったよね?」

友には敵わないけどね、、、。ん?二人共可愛かったって、友はあの子達がタイプなのかな?

「美由の友達はイヤだよ。別れた後、面倒臭いだろ?」

「そっかぁ、、、」

 食堂に入ると、人がまばらだった。模擬店の飲食店が多いから、みんなそっちに行ってるんだと思う。

 俺は、ゆっくり座りたいから食堂の方が良い。

「何食べる?」

いつもは無い、スナックのメニューがある。

 ポテト、唐揚げ、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば。量が少ない分、値段もちょっと安かった。

「全種類買って、シェアしようか?」

友の目がキラキラ光る。量は食べられないクセに、色々食べたがるからな。

「良いの?」

「俺は、別にラーメンも食べようかな、、、」

メニューを見上げながら言うと、友が俺のシャツを引っ張る。

「ん?」

「ラーメン、一口頂戴?」

フッ!

「一口で良いの?」

「じゃ、二口」

「良いよ。ラーメン代は俺が出すけど、後は割り勘な」

友は嬉しそうにニコニコしていた。

 スナックは出来ているのをトレーに載せて、ラーメンの注文をする。取り敢えず、俺が纏めて払って席を取りに行く。

 ちょっと離れて、陽当たりの良い窓際の席に着く。柱と給水機が有って、人の話し声が届かない静かな席だった。

 友はすぐに財布を開けて、精算してくれた。

 こう言う当たり前の所がちゃんとしていて、好きだな。

 お好み焼きを箸で半分に切って、半分を焼きそばの蓋に乗せる。空いたスペースに焼きそばを半分入れて友に渡す。

 友は待ち切れないらしく、焼きそばとお好み焼きから目を離さない。可愛いな。

「一番でラーメンお待ちのお客様ー!」

呼ばれて俺は受け取りに行く。

 俺が戻ると、たこ焼きが一つ無くなっていた。

「友、食べたの?」

「へへへ」

と笑った。

「ラーメン、先に食べな」

と言うと、嬉しそうに二口食べる。

「もう一口良いよ」

友の一口は小さいから、大して麺も減らない。

 友が飯を食うのを見るのが好きだ。沢山は食べられ無いけど、黙々と美味うまそうに食べる。

 

「ねぇ、成生くんはどんな子が好きなの?」

「うーん、飯を美味うまそうに食べる

「そうなんだ。身長とか気にする?」

「162センチ位」

「成生くん、177センチだもんね。僕位の身長か、探しやすいかも」

うん、友の身長。

「髪は?ロング?ショート?」

「絶対ショート」

友がショートだから。

「部活は運動部?文化部?」

「帰宅部」

友、部活入らないもんね。

「ふふ、一緒の時間が大切なんだね」

「年上とか、年下は?」

「同じ歳が良い」

窓から日が入って来て、ポカポカしている。温かくて気持ちが良い。隣に友がいて、周りに誰もいなくて、、、。

「誰か、良いなって思う子いないの?」

「友」

「なぁに?」

ふふ、、、呼ばれてると思ってる。

「成生くん?寝ちゃった?」


 カチャカチャ、食器を片付ける音がする。椅子を引く音。友がトレーを持って、席を外す。優しいな、、、。



**********



 成生なるせくんは疲れていたのか、頬杖を付いて寝てしまった。お腹も一杯だし、お日様が当たって暖かいから、気持ち良いんだろうな。10分位待って声を掛ければいいか。



*****



 模擬店を回りながら、僕位の身長で、ショートヘアの子を探した。運動部の子は、ショートヘアの子もいるけど、圧倒的にロングヘアの子が多い。

 この子はどうかな?って子を見つけて、こっそり成生くんに聞くんだけど、一言

「却下!」

と言われて終わる。なかなか条件が合って、良いなって思う子が現れない。

「彼女作るのって、大変なんだね」

僕がやれやれと思いながら言うと

「そうだね」

と成生くんが言った。

「そう言えば、友は好きな子いないの?」

「え?僕?僕の事はいいよ。聞かないで!」

「友、好きな子がいるんだ」

ぎゃーっ!聞かないでって言ったのにー!

「って、待って?成生くん、好きな人はいないの?」

「ん?」

あ、、、いるんだ。にっこり笑って、誤魔化してる。

「なぁーんだ。好きな人がいるから、条件が合っててもみんな却下なんだ」

納得、納得。僕がどんなにオススメしても、好きな子がいたら、そりゃあ、お眼鏡にかなわないよ。

「告白しないの?」

「うん、告白してくれるの待ってる」

「成生くんが告白したら、すぐ彼女になってくれると思うよ?」

「ホント?!」

「だって、成生くんカッコ良いし、背も高いし、優しいから。さっきの美由ちゃんの友達もカッコ良いって言ってたよ」

「友、可愛いって言われてたよね」

「むぅ。僕はちょっとだけ背が低いからね」

僕が女の子なら、成生くんとの身長差、丁度良いんだけどな、、、。



*****



「友?」

「ん?」

「元気無い」

成生くんに好きな人がいるってわかってから、その事ばかり考えちゃうな、、、。

「そっかな、、、」

写真部の展示をゆっくり見る。知ってる子の名前を見つけて写真を見ると、とても同じ歳の子が撮ったとは思えない、綺麗な写真だった。

 周りの子が、みんな大人っぽく感じる、、、。

 そう言えば、成生くんは幼馴染だけど、恋話こいばなとかした事が無かった。


 自分でも、テンションが落ちてるのがわかる。成生くんに好きな人がいるって聞いてから、自分の気持ちをどうしたら良いかわからない。


 幼馴染だからって訳じゃ無いけど、成生くんとはいつも一緒に過ごしていた。

 高校受験する時も、当然の様に同じ学校にしたし、僕の成績がイマイチだったから、勉強も教えてくれた。

 もし、成生くんに彼女が出来たら、僕はどうしたら良いんだろう、、、。

 今更、一人で休み時間を過ごすとか、無理だよ、、、。



 ドンっ!

狭い廊下で、女の子と肩がぶつかった。

「ごめんなさいっ!」

すぐに謝ったけど、睨まれた。

 ワザとぶつかって来た感じがして、ドキドキした。

「友、大丈夫?」

「うん、ぶつかっちゃった」  

「ちょっと座る?」

「大丈夫、大丈夫。早く教室戻って、係りの仕事、交代しなくちゃ」


 僕はさっきの女の子の事を思い出した。成生くんの事が好きな子だ。



**********



 友の調子が悪い。俺に好きな人がいるって知ったからかな?

 相手が自分とは気付いて無いだろうから、きっと、また勘違いしてる。

 友が少しでも俺を意識してくれたら嬉しいんだけど、、、。



*****



 文化祭の打ち上げが始まる迄、まだ時間がある。開始は6時半、学校の近くのしゃぶしゃぶ屋さんだった。

「移動するには早すぎるね。どうする?」

ホームルームは、3時半過ぎに終わった。片付けは週明けの月曜日、一時間目に時間が取ってある。

「後、三時間か」

家までは自転車で30分かからない。でも、一度帰って、また出てくるのも面倒だな。

 いつまでも学校にいる訳にもいかず、取り敢えず自転車を押して校内から出る。

「ファストフード店で時間潰そうか?」

「そうだね。あんまりお腹空いて無いけど、ジュース飲みたいな」

「じゃ、友、着いて来て」

学校から離れた、小さな商店街のファストフード店を目指す。

 自転車が何台か止まっていたから、他にも学生が来てるんだな、と思ったらクラスの友達が数人いた。みんな考える事が一緒だ。

 ちょっと離れた場所に座り、ジュースを買いに行く。

「友は?」

「オレンジジュースの Lサイズ」

「わかった。買って来るよ」

荷物から財布を取り出し、ジュースを買いに行く。


 ジュースだけで、何時間も居座るのも気不味いから、ナゲットも買った。友は、いつもマスタードソースだから、それにする。

 

 トレーを持ちながら座席に戻ると、友がぼー、、、ッとしていた。

「友?疲れた?」

「ちょっと、、、」

「そっか、ジュース飲んだら、少し寝れば?」

友は考える様に笑った。



 四人掛けのボックス席は、衝立が高くて他の席から死角になっていた。友は、ジュースを飲むと、ソファに横になりウトウトし出した。

 普通さ、テーブルに伏せって寝ると思うんだよね。ま、友らしくて可愛いけどさ。

 しばらくすると、友は動かなくなった。ちょっと立ち上がって、テーブルの向こうの友を覗き込むと、すやすやと本当に寝てた。



**********



 本当に寝てしまった。


 身体を起こすと、成生なるせくんはいなかった。

「時間!」

慌てて確認すると、まだ30分しか経って無い。良かった、、、。成生くん、何か買いに行ったのかな?

 僕は、残っていた、ナゲットを一つ食べる。

 

 成生くん、好きな人がいたんだ、、、。


 知らなかったな。いつも一緒にいたから、気にした事無かった。僕は回らない頭で考えていた。

 ソファに身体を預け、ジュースを飲みながら視線を上げる。衝立の端に成生くんが見えた。全部じゃ無い。襟足と背中。椅子に座っていた。

 僕は、ちょっと立ち上がって確認した。



 さっき、僕にぶつかった子と一緒だ。



 僕は、成生くんが見えない様に、ちょっとだけ隣に移動した。衝立に寄り掛かる様に隠れる。

 二人で何を話しているんだろう。すごく気になるけど、聞くのが怖い。

 もしかしたら、あの子が成生くんの好きな人かな?



「友、起きてたんだ」

はっ!として顔を上げる。成生くんが戻って来た。

「起きたらいないから、びっくりしちゃった」

「ごめん、ごめん。ちょっと呼ばれちゃって」

「、、、」


 お互い、その先が続かない。



*****



 僕達は、それぞれスマホを弄って、たまに話しをして時間を潰した。移動時間も考えて、様子を見ながら片付けをする。


 あの席に、あの子はいなかった。


 自転車に乗り、成生くんの後に着いてしゃぶしゃぶ屋さんに行く。



*****


 

 クラスの、参加出来るメンバーが集まっての打ち上げだった。人数が多いから、食べ放題、飲み放題。

 幹事は大変だろうな、と思いつつ適当に空いてる席に座る。

 幹事の二人が来て

「コースはこのコースで飲み放題だけど、座席毎に清算だから、追加料金出ても大丈夫。終わる時間はタブレットに出るから気を付けて。座席の移動は大丈夫だけど、他にもお客さんがいるから、あまり大きな声ではしゃがないで欲しいな」


 

 一緒に座ったのは、野中くんと宮地くん。

「そう言えば、坂巻、さっき告白されてたな」

野中くんが言い出した。

「え?いつ」

野中くんの隣に座っていた、宮地くんが聞く。

「ほら、さっき、ファストフード店でさ」

僕は成生くんを見た。

「まぁまぁ、取り敢えず、肉、頼もう!」

成生くんは冷静にあしらっていた。

 お肉を頼んでから、飲み物を取りに行く。先に野中くんと宮地くんが席を立った。

 成生くん、告白されたんだ、、、。きっと、あの時だ、、、。

 僕は、聞くに聞けなくて、メニューを見て誤魔化した。



**********



 野中に告白されてるのを、見られていた事は気付いていた。他にも同じクラスのヤツがいたし、見られても別に良かった。

 むしろ、あの時寝ていた友は知らなかったから、どう説明するか悩む手間が省けた。



 でも、友は何も聞いて来ない、、、。



 野中と、宮地はジュースと付けダレ、野菜も持って来てくれた。店員が出汁を入れてくれたから、俺達も飲み物を取りに行く。



「で、何て返事したの?付き合うの?」

野中は直球だった。

「野中っ!」

宮地が止める。

「何だよ?、、、あ?ああ。、、、深瀬は坂巻が告られたの知ってるんだろ?」

「え?」

友が俺の顔を見る。

「知らなかった」

「友は、疲れて寝てたから」

友がコクンと頷く。

 テーブルの横に、猫型ロボットが肉を配膳しに来た。

「おっ!」

宮地と俺で肉を受け取り、完了ボタンを押す。

「何あれ、、、初めて見た」

友の反応が可愛い。

「ロボットが配膳してくれるんだよ。受け取ったら、ボタンを押すんだ。、、、こっち、座る?忙しくなるけど」

「え?いいの?」

「宮地もいるから、平気か」

と言いながら、席をチェンジした。



 友は、隣に猫型ロボットが来ると、いそいそと立ち上がり運ばれて来た肉を受け取る。最後に完了ボタンを押して、ロボットが帰って行くとやっと肉を食べ始める。



 俺と野中、宮地の三人は、俺が告白された話しを続けた。友は聞いているのかいないのか、静かに肉をしゃぶしゃぶしている。

「なんで、付き合わないんだよ」

「ほぼ知らない子だよ?付き合えないよ」

「でも可愛かっただろ?」

「付き合うってなると、顔だけじゃ決められない」

隣で友が、マロニーが取れなくて苦戦してる。

「なに?坂巻は好きなヤツでもいるの?」

友が折角掬ったマロニーを落とした、、、。

「友、こうやって、端に寄せてから取りな」

そのまま友の皿にマロニーを装る。

「ありがとう」

友は、マロニーをちゅるんと食べると満足していた。

「アイツ、誤魔化したな、、、」

「うん、誤魔化した」

煩いなぁ、、、。



*****



 通路を挟んだ斜め前の席で、店員さんが片付けをしていた。片付け用のカートが少し通路の真ん中に出ていたのか、猫型ロボットが通れなくて困っていた。

 友は目を輝かせて見ている。

 ロボットは小さく移動しながら方向を変え、上手く通り抜けた。

 そして、俺達のテーブルに肉を運ぶ。

「お前、偉いなぁ」

と褒めているから

「友、その猫の顔の所にカメラが付いてて、作業場でリモコン操作してるんだよ。話し掛けると、店員に聞かれちゃうからな」

と言うと

「え!恥ずかしい、、、」

間に受ける。

「坂巻。深瀬、信じてるよ?」

と宮地が言うと

成生なるせくん、嘘ついたな!」

ちょっと怒った。

「早く肉。取らないと、待ってるぞ」

友は慌てて、肉を受け取り、空いた食器を一番下のケースにしまって、完了ボタンを押す。

「へへ、可愛いな」

独り言を言う、友の方が可愛いけどね。と思いながら

「友、アイス食べる?取りに行こうよ」

と誘った。



 ソフトクリームに白玉とあずきを載せたら

「何その美味しそうなの、、、」

とびっくりしている。友も真似してソフトクリームを装ろうとレバーを引く、ビビり過ぎてちょっとしかレバーを引けないから、ソフトクリームが出て来ない。もうちょっとレバーを引くつもりが、引き過ぎたのかソフトクリームが急に出て来て慌てていた。

「成生くん、、、」

悲しそうに俺を見る、、、。

「大丈夫、大丈夫。食べるのは友だから」

と言うと

「尚更綺麗なのが良かった、、、」

ぶつぶつ言いながら、白玉一つとあずきを装る。



 予約の時間はあっという間に過ぎてしまい、店の前で解散になった。

 何人かは、二次会にファミリーレストランへ行くみたいだけど、俺と友は自転車で帰った。



*****



 いつもの分かれ道にある信号機の下で、友が

「告白されたんだね」

と呟いた。

「、、、友、公園でも寄って行く?」

俺が誘うと、ちょっと悩んでから頷いた。

 二人で自転車を押しながら、すぐ目の前の公園に入って行く。

 自転車のスタンドを掛け、ベンチに座る。

 大きな木の下にあるベンチで、夏は日陰を作るから、よく使っていた。

 少し離れた場所に時計がある。あんまり遅くならない様に、友を帰さないと。


「友?」

友は小さく息を吐いた。

「もし、成生くんに彼女が出来たらさ」

「うん」

「僕、どうしたら良いのかな?」

うーん、、、。友以外と付き合う気は無いんだけど、、、。

「今まで通りで良いんじゃない?」

「でもさ、朝も、休み時間も、帰りも一緒でしょ?彼女だって、成生くんと一緒に過ごしたいと思うよ?。もし、僕が誰かと付き合ったら、毎日一緒にいたいと思う、、、」

「じゃあ、友とは会わない方が良いのかな?」

「、、、」

友は自分の爪を弄っている。

「その方が、、、きっと良いよね、、、」

「じゃあ、俺に彼女が出来たら、友と遊ぶの辞めるよ」

出来る筈の無い彼女の話なんかするから、ちょっと意地悪をしたくなった。しかも、俺と会わないって言う選択をするから、、、。

「、、、うん、、、」

あー、、、これ、絶っっっ対、友が泣く、、、。

「うん、、、そうする、、、」

友は泣かない様に、唇に力を込めて頑張っていた。

 昼間は、俺の彼女選び楽しそうにしてたよね?

「あんなに協力的だったのに、どうしたの?」

「成生くんに彼女が出来るのは、本当に嬉しかったんだよ?でも、成生くんに好きな人がいるって思ったら、何だか淋しいなって、、、」

友は爪を爪でカリカリ弄りながら、たまにくように爪をいでいた。

「友、爪無くなっちゃうよ」

そう言って、友の手に手を重ねた。

「友にも好きな人、いるでしょ?」

「うん」

友が俺の手を握った。


 、、、でも、その後は何も無い。


**********



 いつか、成生なるせくんから離れないといけないんだ、、、。そう思ったら、何も考えられ無くなった。

 家に帰って、お風呂に入る。歯磨きをして、身体があったまったまま、布団に潜り込むと、膝を抱えて小さくなった。

「成生くん、、、」

小さな声で呟く。

 真っ暗な部屋、真っ暗な布団の中。僕は泣いた。一人きりだから泣いても良いじゃ無いか。

 枕で声を隠して、しくしく、しくしく泣いた。たまに、

「うう、、、」

と声が漏れるけど、大丈夫、誰にも聞かれない。



 しばらく泣いて、少し落ち着いた。

 


 僕は、やっと眠る事が出来た。



**********



「友、、、大丈夫?」

「、、、見ないで、、、」

友は腫れた目を隠すように手を翳し、下を向く。

 昨日のアレで、夜泣いたんだ、、、。

 


 待ち合わせの時間に、友が来ていないなんて初めてだった。

 連絡をすると、本当に忘れていたらしく

「今日、行けない」

と返事が来た。

 俺は今まで、こんなドタキャンみたいな事が無かったから、心配をして友の家に行く事にした。



「友、玄関先で何やってるの?成生なるせくんに上がってもらいなさい」

友のお母さんに声を掛けられて、

「どうぞ、、、」

と入れてくれる。

「成生くん、コーヒーでいいかしら?」

「お願いします」

「後で持って行くからね」

僕達は友の部屋に入った。



 友はまだ、パジャマだった。本当にさっき起きたみたいで、寝癖が少しついている。

「顔洗ってくるから待ってて、、、」

友はそう言って部屋を出た。

 入れ替わりで友のお母さんがコーヒーと、友の朝ごはん、後、腫れた目を押さえる為の冷たいおしぼりと氷水を載せたトレーを持って来た。

「成生くん、あの子、何かあった?誰かに振られたのかしら?」

心配そうに言う。

「僕にはちょっと、、、」

と、返事をする。

 友のお母さんは、立ち上がりながら

「おばさん達、用事が有って出掛けるけど、ゆっくりしてってね」

と言って、部屋を出て行った。


 顔を洗った友が戻って来た。目の腫れは引いていない。どうして夜泣くと目が腫れるんだろう、、、。

「夜、泣いたの?」

友の唇がキュッと締まった。

 友は、こう言う時、「泣いてない」とか嘘を言わない。ジッと黙っている。

「何で、泣いたの?」

何と無くわかっているのに、ワザと聞く。

 友は、視線だけ動かして俺を見る。腫れた目が、痛々しい。


 俺は冷たいおしぼりを友に渡した。



*****



 スマホで、泣いた後の目の腫れを引かせる方法を調べたら、冷たいタオルで冷やす、温める、マッサージをすると良いって書いてあった。

 友のベッドに上がる。いつもの事だから、友も気にしない。

「友、おいで」

俺が手を広げると

なぁに?」

と近寄って来る。俺が手を広げたままでいると、そっと抱きついて来た。

 いや、そうじゃない。そうじゃないけど、つい抱き締めてしまう、、、。本当はマッサージしたいから、仰向けで寝て欲しかったんだけど。まぁ、良いか。

「マッサージすると腫れが引くらしいから、仰向けで寝てくれる?」

「あ!、、、ごめん」

友は謝ってから、そっと俺の方に頭を寄せて、仰向けになった。


 俺は、自分の両手を擦り合わせ、温める。

 そっと、友の目頭を押さえると

「気持ち良い、、、」

と呟いた。

 おしぼりで冷やして、俺の掌で温めて、マッサージをする。何回か繰り返して、大分腫れが引いた。

 友はゆっくり起き上がると、目の周りを押さえながら触るとお礼を言った。

「今日はもう、出掛けるの辞めようか、、、」

「うん」

と言いながら、ベッドに横になる。友は目の前にある、俺のズボンのベルト通しを弄っている。

 何か言いたい時の友だ。

「どうした?」

「、、、」

何かあるんだろうけど、どう言ったら良いか悩んでる所かな?友が話し出すまで待てば良いか。

「朝飯、食いな?」

「うん」

うんって言いながら、俺の腰に抱き付いた。一度力を込めてギュッとすると、ゆっくり起き上がり、俺の背中に寄り掛かる。

 漸く身体が離れたと思ったら、勉強机に置かれたトレーから、朝食のピザトーストの乗ったお皿を持ち上げた。

「、、、成生くんも食べる?」

「ちゃんと食べないと」

「半分しか食べられない」

「友、、、食欲無いの?」

唇がキュッと締まる。

「こんなに大きいの食べられない」

「じゃ、食べられるだけ食べたら頂戴」

「ありがと、、、」

友はゆっくりピザトーストを食べた。

「ん」

と言って、残ったピザトーストを皿毎俺に寄越す。

「友、ケチャップ付いてる」

親指で、口の横に付いたケチャップを拭うと、友の顔が赤くなった。

 いや、そんな顔されるとこっちまで恥ずかしくなるしっ!

 友は慌てて、俺の親指を握り、ケチャップを拭って舐めた。

「友、そんなの舐めたらダメだろ?」

「だって、成生くんが舐めたらいけないと思ったから、、、」

「だからって」

「何で?成生くんの指は汚く無いよ?」

そうじゃない、、、。綺麗とか、汚いとかじゃ無くてさ、、、!

「僕、成生くんとならキスだって出来るし、、、」

「、、、」

「成生くんの事、好きだから、別に汚く無い」

ポロポロポロと涙を溢した。

「成生くんに好きな人がいても、僕は成生くんが好きなんだから、、、」

友が呟いた。



 俺は、友の顔を包んで上を向かせる。唇がキュッとなってる。そっとキスをすると更に涙がボロボロ溢れた。

「俺の事、好きなの?」

友の顔を見ながら聞く。

「成生くんが好き」

両手を広げて抱き付いて来る。

「友ー!母さん達、買い物行って来るからー!」

二人でビクッと反応する。

玄関が開き、鍵が閉まる音が聞こえた。

 俺は、つい友を隠す様に抱き締めていた。


「ごめんね。成生くん、好きな人がいるのに、、、」

友が俺の心臓の音を聞く様に、胸に耳を当てる。

 自分でもドキドキしているのが分かった。俺の心臓の音、聞かれちゃってるんだな、、、。

「成生くんが好きな人と付き合えれば良いな、って思う。、、、嘘じゃない、本当だよ。、、、でも、やっぱり淋しいなって思っちゃう、、、。僕、嫌なヤツだよね」

俺のシャツを握り締める。

「、、、俺も、好きな人と付き合いたい」

友が顔を押し付けた。涙を拭いてるんだ。

「、、、友みたいに頑張って告白する、、、」

友は、もう一度俺を抱き締めて深呼吸した。唇をキュッと結んで顔を上げる。

「成生くんも頑張って、成生くんなら大丈夫、きっと付き合って貰えるよ」

笑った。

 友、こう言う時、無理して笑うんだよな、、、。

「友?、、、」

なぁに?と首を傾げる。

「好き。、、、俺と付き合って、、、」

キョトンとした顔をしている。

「好きな人って、僕?」

あぁ、やっと言えた。長かったな、、、。

「じゃあ、僕が告白するの待ってたの?」

「友、優しいから、俺から告白したら好きじゃ無くても付き合ってくれそうだから」

「す、好きじゃ無ければ付き合わないよ?!告白されたからって、誰とでも付き合える訳じゃ無いからね?」

「本当に?」

「、、、本当だよ。好きな人と付き合いたい。僕は成生くんが良いんだよ」

「そっか、良かった」

俺は、友を抱き締めた。



**********

 


 成生なるせくんの家で、定期テストの勉強をする約束をした。

「友、今日の英語どうだった?」

「、、、聞かないで、、、」

僕は、英語が一番苦手だ。

 成生くんとテストの見直しをする。隣に座る成生くんの顔を見ていたら

「友?聞いてる?」

って言われて、我に帰る。

「ごめん」

だって、成生くんの顔、カッコ良いから。いつまでも見ていたい。

 成生くんの顔が近付いて来て、頬にキスされた。

「今は集中して」

キスされたら、集中なんて出来ないよっ!

 顔が真っ赤になった。



**********



 玄関の鍵が開く音がする。誰か帰って来たんだ。

 廊下を歩く音、リビングのドアを開けて美由ちゃんが入って来た。 

「友くん、いらっしゃい」

「美由、お帰り。何か食べる?」

「うん、お腹空いちゃった!」

「待ってて、今、ご飯作るから」

美由ちゃんにうどんを作る為に、立ち上がり台所に行く。僕達もさっき食べた肉うどん。

 

 美由ちゃんは鞄を置きながら、僕の側に座る。

「ねぇ!友くん!お兄ちゃんの彼女わかった?」

「えっと、、、」

「美由!友に近付き過ぎ、、、ちょっと離れて」

 成生なるせくんが台所から声を掛ける。

「?。お兄ちゃん、どうしたの?」

美由ちゃんに聞かれて、どう返事をしたら良いかわからない。

 台所から聞こえる、カチャカチャと言う音と、うどんの匂いがする。

 成生くんがうどんを載せたトレーを持って来る。美由ちゃんの前に置きながら

「友は、俺の彼女になったから、手を出さないでね」


 彼の彼女は、僕だった。




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