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荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~  作者: 釈 余白(しやく)
第五章:エピローグ

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50/50

50.踏み出す一歩

「おはようママ、今日から二学期だね。なんだか緊張してきちゃったけど平気かな? 寝癖ついてたりスカートにシワがあったりしてない?」


「ええ大丈夫よ。念のためもう一度聞くけど本当に平気なのね? 無理をしてもいきなり解決はしないんだからよく考えるのよ? ボイスレコーダーは持ったわね? 使い方も平気かしら?」


「大丈夫だってば。いくらなんでもこっそり録音とかやりすぎじゃない? 証拠があっても訴えるわけじゃなかったら相手を刺激するだけじゃないかなあ」


「それでも構わないのよ。担任や校長副校長へつきつけてやればぐうの音も出ないわ。そこまで行けば後はどうとでもできるんだから、あなたは難しく考えなくてもいいから心配しないでね」


「でも私、あの子たちにやり返そうと思ってるのよね。もちろん自分から仕掛けるつもりじゃなくて、またなにか言われたり嫌がらせを受けたらって意味だよ? それくらいしないと学校へ行く意味ないって思ってるんだもん」


「ミクは気が強いところもあるし弁が立つからやり過ぎないようにね。もちろん学校で問題になればママが出て行くこともできるから心配はしなくてもいいけれど、もしかしたらさらに孤立する羽目になるかもしれないでしょう?」


「今以上なんてないからなにがあっても平気だよ。それに中学は私立へ行ってもいいんでしょ? さらに先のことを言うなら、高校は絶対に東京へ行きたいの。それだけ認めてくれるなら私なんだって頑張るわ」


「まったく…… まだ運命の人に会ったなんて年じゃないでしょう? パパも何とか言って下さいよ。あなたが甘やかしすぎるからこうして夢見がちになってしまうんじゃないの?」


「いやいや、ミクはちゃんと現実を見てるからこそ、こっちで進学するよりも東京へ出たいと言っているのだろ? その時におふくろたちがまだ元気なら可能かもしれないね。パパは出来れば大学の付属高校へ行ってそのまま進学してもらいたいよ」


「でも有名私立はお金かかるよ? 私は都立高校行って国立大学目指してるの。せっかくだから一番いいとこね。ライバルがいるから負けられないのよ」


「公立高校は内申もあるから今みたいな学校生活だと難しいかもしれないわ。私立の中学へ行ってもそのまま高校へ上がらないのはもったいないし…… でも考えがあって頑張りたいなら、まずは思うようにやってみなさい。将来やりたいことが見つかった時には、子供時代からの取り組みが評価される物なのだから、良くも悪くもね」


「良くも悪くもって、そっち側で仕事してるママが言うわけ? もっと当事者意識をもって取り組んでほしいわ。私もママの被害者ってことになるかもしれないでしょ?」


「それはそれ、これはこれ、仕事と家庭は別だし、ママだってまだ一人で何もかもできるほどではないのよ? ミクはこれから先が長いのだから勉強して出来ることや可能性を増やすことが大切ね。結果的に必要なかったなんてものはいくらでもあるのはわかっているわ。でも無駄になったことは悪いことではない、ミクがそこまで理解できるようになったら、ママ嬉しいわ」


「効率よく要領よくって生き方はダメなの?」


「ダメじゃないわよ? でも可能性は減ってしまうのが現代社会ってこと。それを知った上で省くのと、知らずに取り組まないのでは結果も経過もまったく違うはずでしょうね」


「それじゃとりあえず今は私にできることをやっていくわ。勉強や恋愛もその一つだし、パパと釣りへ行くのも大切な経験の一つってことね。でも今は将来ママみたいに仕事を頑張っている姿を想像できないんだよねえ。グランマみたいに専業主婦がいいけどいきなりは難しいかなぁ」


「簡単で楽な生き方なんてそうそうないわよ? でも釣りには行かなくてもいいと思うわよ? 事故にでもあうんじゃないかと心配だし、帰ってきたら生臭いし、生臭くない時は機嫌悪くていい事なんて一つもないわ。だいたいパパのご機嫌取りなんてする必要ないの。お小遣いが欲しいならしっかり勉強して家のことをやってくれたらママがあげるから」


「じゃあ釣りにも行って、家の手伝いもちゃんとやればお小遣い二倍になるね。東京までの交通費を稼がなきゃならないから大変なのよ。手紙もただじゃ出せないもん」


「まったくちゃっかりしているわね。パパは釣りについて来てくれたくらいで喜んでお小遣いあげないで下さいよ? 何事もほどほどでお願いしますね。お仕事はいくらやっても構いませんけど家事もしっかりやってくれないと困ります」


「わかっているさ。ママは口うるさくて参っちゃ―― いやなんでもない。そうだ、ミクも行政書士を目指したらいいよ。独立すれば完全に自分のペースで仕事が出来るから気楽でいいぞ?」


「でもそれってママが働いてるから成り立ってるんでしょ? パパ一人だったら家族三人食べて行かれないって聞いたよ? 稼ぎが少ないんじゃなくてろくに仕事しないからだって」


「こりゃ手痛い意見を喰らっちゃったな。でもその分、ミクと一緒にいられる時間も多いし、家事をしっかりやってママを助けることができてるだろ? 怠けてるように見えてしまうかもしれないけど、それも悪いことばかりじゃないってことだね」


「さすが口だけはうまいんだから。でも一つの選択肢ってことで覚えておくね。だけどまずは二学期の学校からがんばる! 学校の子たちなんて櫻子よりは大したことない気がしてるし―― きっと大丈夫だわ!」


「櫻子って誰のこと? グランマの家の近所で知り合った子かしら? 新しいお友達って男子って言ってたわよね?」


「その知り合った何人かのうちの一人なの。私のライバルで親友、になるかもしれない強くてステキな女の子よ。それじゃ行ってきます!」


 自宅へ戻ってきたミクはすっかりと吹っ切れた様子で明るく前向きな少女に戻っている。その姿を見た両親は目を細め、元気よく家を出て地球の学校へと向かう娘の姿を笑顔で見送るのだった。

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