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荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~  作者: 釈 余白(しやく)
第三章:特別な夏休み

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30/50

30.トリプルデート!?

 久しぶりに三人そろった今日は、いよいよ追い込みとなった夏休みの目標達成へ向かって大切な一日となる。ハズだった……


 僕は意気込んでそう考えていたのだが、元々別に目標に掲げていたわけでもない健二と、病み上がりだけど餌の都合もあって付き合ってくれている涼太だった。


 さらには、健二が美咲を誘っていたのは想定内だったが、あの涼太までが知らない女子を連れてきて僕らは仰天だった。しかもミクほどではないがまあまあかわいいし、背が高くてスラッとしていて陸上女子っぽさもある。



「たしかこないだ病院ですれ違ったよね? あれって涼太の見舞いだったのか。ちらっと見かけただけだったし、雰囲気からは中学生だと思ったんだけどな。まさか同い年とは驚きだよ」僕は正直に感想を述べたのだが、あの後ミクに見とれていたのかと問い詰められたことを思い出して、愛想笑いどころか苦笑いを浮かべてしまった。


「背が高くて羨ましいわね。私は小さい方だから凄く差を付けられてる気分。きっとうちのだんな様(・・・・)は背が高い女性が好みだろうし」なかば自虐的な台詞を口にしたミクは、僕の背後へ回した手で背中の辺りをつねってくる。


「そ、そんなこと言うもんじゃないよ。意外に無い物ねだりってこともあるんだからさ。それに僕自身もっと背が高い方がいいさ。そのほうがミクともっと身長差ができるだろ? 背の高い男の方が一緒にいて気分がいいだろうし」ミクのコンプレックスをフォローしつつもささやかながらチクリとやり返しているつもりの僕だ。


 するとこの言葉を聞いて引き出された涼太の彼女の発言が、どちらかというと逆効果になったらしい。


「すれ違っただけだったのによく覚えてたね。それに三橋君が言ってたように女性への思いやりが自然で驚いちゃった。確かに背が高いのはコンプレックスなの。かわいい彼女さんが羨ましいなあ。えっと私は常原(つねはら)八重(やえ)と言います。三橋君とは塾で一緒なの」それはあくまで社交辞令的な言葉だったはずだが、ミクはますます気に入らないと言う顔を隠しながら僕の足を踏んづけてきた。


「わざわざ連れてきた割りには随分とよそよそしいな。レキみたいにどこでもイチャイチャするのはどうかと思うけど、つれなくするのはかわいそうじゃね?」健二が余計なことを言いだすと、涼太はあっさりと否定した。


「別に付き合ってるわけじゃないし、今日も家の前で会ってついてきちゃったんだから仕方ねえだろ? まさか訪ねてきたもんを帰れとは言えないさ。でも今日の予定は釣りだからな。美咲ちゃんこそ大丈夫なのか?」


「美咲は魚捌けるんだってよ。もちろん今日この場でって意味じゃねえぞ? 家で手伝いしてるから出来るようになったってことな?」誰もそんなこと考えちゃいない。


「私は見てるだけだから大丈夫。どんなことするのか興味あっただけだし、勝手に着いてきちゃったんだから気にしないでいいよ?」どうやら八重は健気な性格のようである。


 それでも女子同士仲良くしてくれればそれはそれで悪いことじゃない。それに地元には友達がいないと言っているミクにとって、同年代女子との交流は中学進学へ向けての予行練習になるかもしれない。


 しかしいざ釣りを始めるとそんな状況にはならないものである。ミクは僕の持って来た竿を手にすると、さっさと仕掛けを用意しテナガエビ釣りを始めてしまった。


 健二は健二で鯉釣りなんてはなからする気もなく、ミクに負けじと美咲にテナガエビ釣りを教えている。自分の竿には仕掛けすらつけずに竿立てに置いたままである。


 こうなると余計に八重が哀れに見えてしまう。涼太は大した気遣いもせず、自分のすぐ後ろへ座って見ているようにと言ってそれきりだ。もちろん八重は立ったままでモジモジしているので、僕はミクのために用意してきた折り畳みクッションで涼太の頭を引っぱたいてから差し出した。


 となると今度はこちらが引っぱたかれる番になるのだろう。そう言うところはちゃんと見ていたミクが釣りあげたテナガエビと共に戻ってきて僕の前に仁王立ちした。


「ねえちょっと? 脚を伸ばしてくれる? 川に向かってまっすぐね」八重を構うことでミクが機嫌を悪くするのはわかっていたので僕は素直に従った。


 どうせなにかイタズラでもするつもりなのだろうと考えていた僕は、直後にミクが取った行動で身動きが取れなくなってしまったのだ。


「なっ、なんでそんなとこに座るんだよ。動けないし恥ずかしいじゃんか……」僕の脚を伸ばせと命じたのは、その上へと座り込むつもりだったからだった。


 小柄なミクが乗っかったからと言って別に重いわけじゃないが、さすがに人前で密着するのはかなり恥ずかしい。それに、風で揺れるミクの髪からはなにやらいい香りが漂ってきて僕の心を惑わせてくる。


『ちょっとミク、一体どうしたのさ。確かに不満を感じたかもしれないけど、涼太に任せてたらあの子がかわいそうじゃんか。さすがにあのまま立ってられても困るしさ』そう背後からささやいたのだが、ミクは突然耳を押さえながら立ち上がった。


『急になにするのよ! 耳に息吹きかけたらくすぐったいでしょ!』小声で叫ぶミクの顔は真っ赤になっている。


『だって真ん前にいるんだから仕方ないじゃん。それに自分だって恥ずかしかったくせに。顔が真っ赤だよ?』


『うるさいわね、くすぐったかったからに決まってるでしょ。もう、こよみったらエッチなんだから……』なんでエッチと言われなきゃいけないのかはわからないが、そのことについて父ちゃんへ聞いてみるのはまずい予感がしたし、母ちゃんへ知られてたら大事になりそうな気がした。



「なっ? オレの言った通りだろ? あいつらってああやっていっつもイチャイチャしてんだよ。普通小学生であそこまでするか? 月九か火サスかよって感じだもん、参っちゃうよなあ」健二がわざと大きめの声で美咲へ耳打ちのフリをしている。


 なんでもあっけらかんと言い放つ健二と、おおらかでサバサバしている美咲の組み合わせは悪くないように見えた。それに引き替えもうひと組はまるでお通夜である。


 連れてきた当人とは言え涼太はなにもしてやらないだろうし、社交的ではないミクにフォローは無理だ。健二と美咲は言わずもがな。となるとナントカできるのは僕だけと言うことになるし、何とかしないと気まずくて仕方ない。


 というわけで僕は先ほどの失敗をふまえ、事前にミクへと相談することにしたのだった。


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