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荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~  作者: 釈 余白(しやく)
第三章:特別な夏休み

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19/50

19.将来設計

 待ち合わせ場所の図書館に涼太が来ないため、僕とミクはバス通り沿いにある『和菓子乃三橋』まで行ってみた。すると夜から熱を出して寝込んでいるらしい。やはり昨日ムリしすぎたのがたたったのか、軽い熱中症のようだ。


「涼太には悪いことしちゃったかもだなあ。多分僕とミクが並んで座ってた時に、気を使って知らんぷりしててくれたんだと思うんだよね。だからってずっと空き缶拾いしてるのは意味わからなかったけど」


「そう言われると罪悪感が出てしまうわね。なにかお見舞いでも持って行った方がいいかしら」ミクは本気で心配そうな顔を見せた。


「でもアイツんちは和菓子屋だし、熱を出すと冷たい和菓子を食べさせてもらえるから悪くないなんて普段から言ってるからなあ。それこそ四葉のクローバーでも持って行ってやるくらいしか思い浮かばないよ」


「そんなレアなものを探して今度は私たちが熱中症になったら元も子もないわ。今回は早く良くなるようお祈りするくらいにしようかしらね」


「うんうん、どうせ一日で良くなるから心配いらないさ。前にも同じようなことはあったんだ。虚弱ってわけじゃないけど、アイツは普段から寝不足なんだよ。夜遅くまで勉強してるのが普通みたいでさ」


「彼って努力家ですごいわね。塾の全国学力テストでも結構上のほうらしいって言ってたもの。私も成績はいい方だけど、ほとんどの教科は涼太には負けてるわ。しかも運動もできるんでしょ?」


「そうなんだよなあ。足が速くていっつもリレーの選手だし、サッカーもクラブ入ってるやつとタメ張るくらい。ソフトボール投げは辛うじて僕のが上だけど、他では勝った記憶がないよ」


「キープするためにあまり無理をしないようにしてもらいたいわね。何事も上位に居つづけるのは大変なんだもの。周囲の期待もいつの間にか当たり前に変わったりするしね」ミクの言い方は、自分に思い当たることがありそうな語り口だ。


「その点、僕みたいな凡人は楽でいいな。父ちゃんも母ちゃんも真面目で優しければなんとかなるって気楽な考え方だしね。ミクのところはどうなの? 多分大切にしてくれてるんだろうなとは思ってるけど」


「そうね、甘やかせすぎじゃないかと思うくらいには両親どちらも優しいわね。だから学校も出来れば行きたいんだけど…… きっとすごく心配してるはず」


「僕がウルトラマンになったらすぐに駆けつけるからそれまで待っててよ。あんまり無理をしたり抱え込んだりすると良くないと思うんだ。その―― へんなニュースとかもあるじゃん?」


「うん、おかしな真似だけはしないと約束するわ。だって将来はきっと明るいってこよみが教えてくれたし約束もしてくれたから。中学に上がればまた違ってくるだろうし、それでもだめだったら高校はこっちに来ようかな」


「マジで!? そんなことできるもんなの? そしたら同じ高校に通えるじゃん!」


「あのね? 高校って学力で行くところ決めるものだと思うよ? 同じところへ行かれるよう頑張れる? 涼太と同じくらいを目指してもらえると嬉しいんだけど?」


 僕は頭の上からでっかい岩が落ちて来たような気分になり、正直言ってかなり落ち込んだ。でもミクはそんなこと構う様子もなく言い放つ。


「でも別に同じ高校でなくてもいつでも会えるようになるだけで十分だけどね。こよみの気持ちが変わらないかだけが心配かな。周りにカワイイ女子がいっぱいいるんだもん。ほらまた会ったわよ?」


 ミクが目配せをした方向には、自転車に乗ってこっちへ向かって走ってくる女子軍団が見えた。いつものように櫻子たちである。


 なんでこうも良く遭遇するのかと言いたいところだが、家が近いんだから当たり前だし、行動範囲もそれほど変わらないし行き先も限られている。どうせまた駄菓子屋かゲーセンだろう。


「よお、またゲーセン行くのか? 時代遅れのプリにはまって無駄遣いしているらしいって涼太が言ってたぞ。それとも駄菓子屋でも行くのか? 買い食いばっかしてると太るぞ? 宿題もやらないでいい気なもんだな」最後の一言はどちらかと言えば自分のことだったがまあそれはどうでもいい。


「なに言ってんの? アタシがどこ行こうが勝手でしょ! アンタこそ宿題なんてやる気もないくせに。バーカ、そうやって毎日イチィチャしてればいいよ。バーカバーカッ!」櫻子は相変わらず酷い暴言を吐きながらすれ違っていった。取り巻きの女子までが思い切り笑っていて頭にくる。


「私ちょっと思うんだけど、仲が悪いとか暴言吐かれるとか言うけど、それがわかってるのになんでいちいちちょっかい出すの? しかもトゲのある言い方するじゃない? 傍から見てるとこよみは櫻子が好きなのかなって見えるのよね……」


「はあ!? それはナイナイ、マジで絶対にないよ。僕にはミクがいるし、その前だってずっとあんな調子なんだよ? 僕にしてみりゃなんとかどうにかして言い返させないようやり込めたい相手さ」


「それはそれでかわいそうじゃない? 向こうはこよみのことが好きなのに。きっと私が横から出て来て取っちゃったって思ってるわよ? まあ確認する方法はないけど間違いないわ。これは女の勘ってやつね」


「百歩譲ってそれが事実だとしてもさ、僕はアイツになびいたりしないし興味もないよ。顔が良くて口が立つだけの性格ブスだもん。いっつも取り巻き連れてるけど、頭も良くて面倒見もいいだけなんだよ。運動も出来る方だからまるで女版涼太って感じだけど、すぐに人を見下すところがあるんだよなあ」


「ちょっと聞いただけでもすごい女子なんじゃないの? みんなに支持されるのもわかるけど、きっと男子にも人気なんでしょうね。私と違って根暗でもなさそうだし」


「ミクが根暗? バカ言っちゃダメだよ。そう言うのは落ち着いて大人びてるって言うんだ。自分の魅力はちゃんと把握してないともったいないよ? こんなにワンピースが似合う女子は見たことないってくらいだし」


「そう言ってもらえると嬉しいけど過剰過ぎて照れちゃう…… こよみのその口の上手さもきっと長所なのよね? 誰にでもその調子らしいのが欠点でもあるけど!」


「でも心を込めてるのはミクに言う時だけだよ。僕らの出会いはきっと運命だったんだからね。今はどうしたらキミを救い出せるかばかり考えてるんだ、本当だよ?」


「―― もう…… ホントこよみったら…… あっ、なんでこっちに――」


 涼太の家からまた図書館に戻るはずだったのに、なぜか二人はいつもの土手へ向かって反対に歩いてしまっていた。そしてこの方向はと言うと――


「仕方ないなあ、ここから戻るのも面倒だしウチで勉強しようか? まあ祖父の家だけど気兼ねしなくていいよ? 頑張ったら祖母がおやつを出してくれるでしょ」


 思いがけず訪れたミクからの誘いに僕がノらないはずがなく、ずうずうしく彼女のプライベートへ押しかけるのだった。


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