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荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~  作者: 釈 余白(しやく)
第三章:特別な夏休み

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17.背伸びした二人

 まさか苺のために覚えたことがこんなことに役立つなんて。いや、役に立っていると言えるのかは微妙なところだ。なんで僕がこんなことをする羽目になったのか……


 なんと言ってもいくら小学生だからと言っても男子三人女子一人がシロツメグサを集めている姿は、とてもじゃないが知り合いには見せられない。


「ホントこよみは色々なことができるのね。男子なのに花冠が作れるなんてステキじゃない。しかもそれを私にくれるんでしょ? 約束した交換とは違うけど、これはこれでとてもロマンチックで嬉しいわ」ミクはまんざらでもない様子で明らかに喜んでいた。


 だがあまり乗り気には見えない涼太はなぜか空き缶や菓子の容器などのゴミを集めているし、言いだしっぺの健二でさえもすでに飽きた様子でバッタを捕まえて放り投げたりしている。


「なあ、涼太はともかく健二が言い出したんだからもっとまじめにやれよ。人にやらせるために言い出すとかあり得ないだろ。ところで涼太はなんでごみ拾いしてるんだ? ボランティア精神にあふれすぎてなんか怖いよ」僕は愚痴っぽいことを言いつつも、嬉しそうなミクを眺められて大分ご機嫌だった。


「いやあ、シロツメグサ集めてるとか誰かに見られたらハズイじゃん。だからまあカモフラージュ的にさ。それにこれはこれで充実感が得られるかもしれないな。いい事するって気持ちいいじゃん?」


 なぜコイツはこう良くできた人間なのだろうか。自己学習自己鍛錬も欠かさないし、考え方も小学生とは思えない立派なものだ。はっきり言って僕や健二とは人種が違うと感じる。それなのに保育園が同じってところからずっとつるんでいるんだから、縁というのは不思議なものだ。


 ミクと出会ったのだってただの偶然だし、最初のおかしな言動にひるまなかったのだって、ただその時はそう言う気分だっただけかもしれない。まあこれはミクのルックスに魅かれたのが大きな要因なのは間違いないが……


 ほんの少し前の出来事を思い出しながら僕はせっせこと花冠を編み始め、ミクがそこへ摘んできたシロツメグサをどさっと置いてから横へと座った。ちょっとというか大分距離感が近くてドキドキしてしまう。


 少し離れたところでは涼太が相変わらずごみ拾いをしているし、健二は完全に飽きたのを隠そうともせず芝生をゴロゴロと転がりながら昼寝でもしそうな勢いである。


 どちらも完全に自分たちの世界へ入っていて勝手にしており、僕らのほうを気にする様子は無さそうだ。その光景が目に入ったことが心を惑わせたのか、僕は思い切った行動に出てしまった。


「ミク? さっきのこと本気で言ってるの? 嬉しいけどビックリしちゃったよ」花冠を編む手をいったん止めて、地面へつけているミクの手にそっと重ねた。


「ちょっ、ビックリなのはこっちじゃないの。急にどうしたの? 早く編んでくれないと結婚式ができないわよ?」重ねた僕の手の下から、ミクの小さな手がするりと抜け出て行った。


 ちょっと焦り過ぎたのかなと落胆した僕だったが、その直後ミクは僕の手を掴みあげて裏返しにする。そこへ自分の手のひらを重ねて指を絡ませるように握ってきた。


 ぎゅっと握り合った二人の手は、真夏の炎天下にいることもあってじっとりと汗ばんでいる。本当は緊張で汗をかいているのかもしれないけど、こう暑いと夏のせいにできて都合がいい。


 僕は頭の先までのぼせて来てしまい、思わずゆっくりと顔を寄せて行く。いやいやいや、確かにマンガやドラマでは見たことがあるけど僕らはまだ小学生だしこんなのは早すぎる。


 そう意識をしっかり持とうとしても、僕の視線はミクのぷっくりとした下唇を見つめて離そうとしなかった。そんな僕の行動に気付かないほど鈍い彼女ではない。口元がニヤリと笑みに変わると声に出さずになにかを呟いた。


「えっ? 今なんて?」ハッと我に返った僕はミクへ尋ねると視線を唇から目元へと移す。


「おませさん、って言ったのよ。こよみったらホント女たらしなんだから。今までもこうやって大勢口説いて来たんじゃないでしょうね? こんなところでキスしようとするなんて、本当に小学生なのか信じられなくなっちゃう。実は宇宙から来たなんて言わないわよね?」


「まさか!? そんなありえないこと言わないでくれよ。ちょっとうっかり近寄り過ぎただけさ。今まで一度だってしたことないんだから。ホントに自分が何しちゃうのかわからないくらい頭がクラクラしてたよ、驚かせてごめんね」


「ううん、驚いたけど嬉しいとも感じたかな。でも本当に誰ともしたことないの? それが本当なら―― 私と一緒だし、別にしちゃっても良かったかな…… なんてね」ミクは自分で言って自分で照れている。それがサイコーにカワイくて、僕は思わず握り合った手に力をこめた。


 その手をミクがさらに強く握り返してきて僕は思わず「いてっ」と声を出した。するとその直後にミクは――


「スキありっ!」そう言って自分の唇を僕の頬へ一瞬だけ触れさせた。


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