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荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~  作者: 釈 余白(しやく)
第三章:特別な夏休み

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16.行き当たりばったりの思いつき

 ミクが秘密を打ち明けてくれた後も、僕たちの関係は特に変わることもなく毎日のように遊んでいた。最初は毛嫌いしていた健二でさえもいつの間にか気にしないようになっていたし、涼太とはしょっちゅう難しい話をしていて僕の嫉妬心に火をつけてくれる。


「それにしても暦がこんなに嫉妬するたちだなんてなあ。俺が話すくらいなんでもないだろ? それに嫉妬するくらいなら自分も勉強して共通の話題ってやつを身につければいいんだよ」涼太の意見はもっともだ。


「でもそんなの一夜漬けで出来るもんじゃないだろ。向き不向きもあるし、僕には難しすぎるよ。逆にどうして二人は宇宙だとかなんとか法則とかに詳しくなったんだか不思議で仕方ないよ。なあ健二もそう思うだろ?」


「そりゃ思わなくはないけど勉強したからってことじゃないのか? オレだって魚の名前ならいっぱい覚えてるし、レキだって虫とか鳥とかにも詳しいじゃんか」


「こよみは鳥に詳しいの? 私は詳しくないけど見るのは好きよ? カワセミとかメジロなんてキレイだもんね」ミクのこの言葉に僕は飛び上がって反応した。


「よし! じゃあこれからカワセミを探しに行こう! 一番近くて良さそうなのは農業公園かな。舎人公園まで行けばオオタカも見られるかもしれないけど、でっかいカメラ持った大人が多くてうろちょろしてると嫌な顔されるんだよなあ」


「スゴイ! 近所でカワセミが見られるなんてステキね。歩いて行かれるところがあるなら私行ってみたい!」


「おいレキ、いくらなんでも歩きはきつくないか? チャリの二人乗りは今厳しいからなあ」


「そうだなあ、さすがにミクを前かごに乗せるわけにはいかないし、誰かから借りられるといいんだけど、今から急には難しいだろうし。父ちゃんに相談してみるから後日ってことにして、今日は土手でタヌキでも探してみるかあ?」


「タヌキもいるの!? 都会でも意外に野生動物は多いのかな? 河川敷があるからかしらね。なんだか面白い」ミクのオモシロポイントがわからないが、僕らにとっての身近な遊び場が褒められたようで嬉しかった。


 だがそんな褒め言葉の後に続いた言葉は、僕の気分をひっくり返すに十分なものだった。しかもミクだけでなく涼太までもが賛同したのだから余計に気分がめいると言うものだ。


「ねえ、念のため確認しておきたいんだけど、キミたちって夏休みの宿題、いつやってるの? 毎日遊んでいるところしか見てないからちょっと気になっちゃったわ」


「俺は夜にコツコツやってるけど、こっちの二人はきっと手つかずだろうな。毎年同じ思いしても全く懲りないんだから大したもんだよ。しかも暦なんて親公認で宿題やらないからなあ」


「親公認ってどういうことなの? まさか宿題やらないで遊び呆けてていいなんて言う親がいるだなんてことないわよね?」ミクが当然感じるであろう疑問を投げかけてくるが、その質問に対する答えはイエスだ。


「驚くかもしれないけどその通りだよ。うちの父ちゃんは勉強は学校でやるもんだから家に帰って来てまでやらなくていいって言うんだ。宿題を出すなんて学校で教えきれない教師の怠慢だからけしからん、なんて屁理屈を堂々と担任へ言っちゃうくらいさ」


 これにはさすがに驚きで声も出ないらしく、口元を抑えて目を丸くしている。それは僕も同じことで、小学校に上がって初めて出された宿題を家で広げてたら父ちゃんに妨害された時は次の日学校へ行くのがイヤで仕方なかったもんだ。


 それを六年まで続けてくるとさすがに慣れてしまい、今は宿題をやってなくても堂々としていられるし、先生も今やなんとも言わないようになってしまった。


「でもまったくやらないわけじゃないんだよ? 興味がある分野はちゃんとやってるし普段の授業だってまあまあ真面目に受けてるさ。さすがに高校くらいは受からないとまずいからね。父ちゃんは今すぐ学校やめれば一緒に仕事連れてってやるとか言い出すんだから参っちゃうよ」


「こよみのお父さんってなんか凄い人なのね…… この間お邪魔した時はニコニコして愛想のいい方だなって思ったくらいで、聞いていたような雰囲気じゃなかったでしょ?」


「あの時はミクへ近づけないように母ちゃんたちが頑張ってくれたからね。夜にはメッチャ問い詰められてうるさくて仕方なかったんだよ? とにかく自分でも他人でも色恋の話が好き過ぎて困るんだよなあ」


「ふふ、お母さんも大変なのね。今度お会いした時はきちんと挨拶した方がいいかしら。将来はお嫁に行くかもしれないでしょ?」ミクが唐突にトンデモないことを言いだしたので、僕は思わずのけぞって橋脚に頭をしこたまぶつけてしまった。


「いってえ! ちょ、ちょっとミクったら急に何言いだしてんのさ。お嫁にって結婚ってことだよ!? まだ小学生なのにそんな先のことわかんないじゃん」


「あら、あんなカッコいいプロポーズしてくれたのに責任取ってくれないの? こよみがそのつもりないなら仕方ないけどー」ミクはイタズラ顔で肩をすくめた。


 そうか、これはミクなりに考えた僕への仕返しってことだろう。その効果はバツグンで、僕の顔はきっと今真っ赤になっているだろう。とにかく頬が熱くて仕方ない。


 もちろん笑っているのはミクだけじゃなく、健二も涼太もニヤニヤといやらしく笑ってる。こりゃしばらく冷やかしが続きそうな気配だなと苦笑した。


 だがそんな覚悟をした僕の耳に飛び込んできたのはもっと別の言葉で、意外なんてもんじゃなかった。まさか健二からこんなセリフが出るなんて想像したことあるはずもなく、僕は自分の耳を疑いにかかる。


「よし、それじゃこれから二人の結婚式しようぜ! レキはアレ作れたろ? 王冠みたいなやつさ」健二はそう言って炎天下の芝生を指差した。


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