14.告白返し
昼に迎えに行った時と同じく僕は土手へと向かっている。ひとつ昼と違うことはミクを送っていくところなので一緒に歩いていることだ。
「今日は色々あったけど楽しかったよ。一緒にいられてスゴく良かった。またこういう日があると嬉しいね。来てくれてありがとう」僕は素直に礼を言う。
「私こそありがとうね。地球に来てから始めての体験ばかりで楽しかったわ。それに―― こよみが真っ直ぐ伝えてくれた気持ちも本当はすごく嬉しかったの」ミクはいつもの調子と思わせつつも、正直に気持ちを伝えてくれた。
「それだけ聞かせてもらえたら十分さ。僕らはまだ子供だから、好きだからどうしたとかその先どうするとかはあんまり考えられないけどさ。付き合うとかそう言うのもわかんないし、住んでる星も違うから夏休み終ったら簡単には会えないもんね」
「あのね、私もこよみのこと好きになってる気がしてるの。でも今言われたことと同じでその先どうするのかはわからない。やっぱりまだ子供だから何だろうね。だから私も―― ちゃんと言っておかないといけないと思うの……」
ミクは言葉を溜めながら、今なにかを言うために考えをまとめている様子だ。その内容は何となく察しがついたが、無理矢理に聞き出すのもなんとなく違うような気がしている。
「ねえミク? もし僕に言わないいけないって思ったことがあったとしてもさ、無理に言わなくてもいいと思うよ? だって僕は別に君がどの星から来てようが、今どこに住んでいようが構わないんだもん。大切なのはミクが確かにここにいるってことだけだし、夏休みが終わって離れることがあったって、頑張れば会えるってなら頑張るだけさ」
考え込んでいたミクより先にもう一度想いをぶちまけた僕は、今日二度目の告白をしたことについてまた怒られたらどうしようと考えていた。しかしミクは優しく笑って僕を見つめる。どうやら答えが出たらしい。
「あのね、わかっていると思うけど私は地球人なの。まあそれは今更改まって言うのも恥ずかしい子供染みた設定だとは思ったけど。でも宇宙や科学が好きなのは本当のことよ? 勉強も好きだし地元ではパパと一緒に釣りにもいっているわ。こんな私のこと嘘つきだと思っちゃう?」
「嘘つきってなにが? 宇宙人だって言ってたこと? いやあ、まさかいくらミクにべた惚れの僕でもそれは信じてなかったよ。だから嘘になってないってことだし大丈夫。それよりも僕は、ミクが宇宙から来たって言わないといけない理由のほうが気になる、いや、気になるんじゃなくて心配になってるって感じかな」
「えっ!? なんで心配するの? 私何も言ってないし心配されるようなことを匂わせたこともないはずだわ。まさかこよみったらエスパー!?」
「エスパーって…… それこそ宇宙人よりぶっ飛んでるよ」僕は声を出して笑ってしまった。それに釣られたらしくミクも口元を抑えながら笑っている。
そうこうしているうちに土手の上まで来てしまったが、まさか土手に家があるわけもなく、今日はきちんと家まで送るつもりだった。今日はこないだよりも時間が遅く、辺りもそろそろ暗くなろうかという時間だ。
なにせバーベキューの後に父ちゃんが引っ張り出してきたベーゴマをやったり、釘刺しをやったりと、一体何時代の子供なのかと思いつつも思いっきり昔の遊びに夢中になってすっかり遅くなってしまった。
「今日は家まで送って行くからね。暗くなってきたのに女子一人で帰すなんてこと僕にはできないし、父ちゃんにも怒られちゃうから諦めてくれよ?」僕がそう言うとミクは素直にうなずいた。
「ホントに優しいわよね。紳士ってこういうことなのかしら? でもすぐそこだからガッカリしないでよ?」そう言って今登ってきた土手の遊歩道を二人で歩きだすと、ミクは話の続きを切りだした。
「それで私のことなんだけど、宇宙から来たって言っても当たり前に地元のこと。スゴイ田舎で自然には恵まれてるかな。だから毎年何回かはパパに渓流へ連れて行ってもらっているの。でも鯉とかテナガエビは本当に初めてだったのよ?」
「渓流かあ、すごいや、僕らからしたら上流の魚は憧れだよ! 山女魚とか岩魚を釣るんでしょ? マジで凄すぎる。渓流釣りって繊細だって聞くし、こんな下流の魚を簡単に釣っちゃうのもうなずけるよ」
「ふふ、ちょっと褒めすぎよ? そりゃそっと静かに釣る渓流とは違ったけど、テナガエビはあわせが独特で刺激的だったわ。こよみたちのお蔭で楽しい夏休みを過ごせているわね」
「なら良かったよ。宇宙だろうが田舎だろうが、こっちに来て嫌な思いして帰ったんじゃ申し訳ないし情けないからね。でもなんでこんなとこに来たの? 親類がいるとか?」
「ええそうよ、祖父と祖母がこのすぐ近所なのよ。パパの実家ね。鯉のエサ釣りは祖父に聞いたことがあっただけの知識だから、あの時はうまく行って実はビックリしちゃってたのよ? ニゴイも始めてみたから鯉じゃないなんてわからなかったしね」
「そっかじゃあ半分は地元民みたいなもんじゃないか。でもミク自体は今住んでる田舎の生まれなの? 渓流があるような街ってどういうとこなんだろ」
「あんまりいいところでもないかな…… 今こよみが半分地元民って言ったけどね? 祖母は外国の人なのよ。だからママがハーフだし、私はクオーターってことになるわね。だから顔立ちもちょっと違うでしょ?」
確かに純粋な日本人とは少し違うのだろうが、濃すぎるぐらいふさふさなまつ毛やオレンジがかったそばかす混じりの頬はとてもチャーミングで、一目見た時に僕の心を打ちぬいていた。それに少し巻き毛っぽい髪も、言われてみると茶色が強くて魅力の一つである。
「僕は別に外見で人を判断するつもりもないし、したこともないつもりだけどね。でもミクの見た目はとても魅力的でかわいいと思ったよ。始めて見た時は赤毛のアンの本から出て来たんじゃないかって思ったくらいだからね」
「そうやって好意的に見て貰えたのは久しぶりね。実は私、小学校ではイジメられてるのよ。五年生になったころから急に女子から無視されたりするようになってしまって……」ミクは少し辛そうに語り出した。




