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荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~  作者: 釈 余白(しやく)
第二章:初めてのコイ

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13.交換の約束

「おーい、どうしたんだよ、どっかの帰りか? 今バーベキューやってんだけど寄ってけば? ポテトとかフランクもあるよ」僕が櫻子たちに声をかけると、健二が後ろから蹴っ飛ばしてきた。


「なに言ってんだよ、あんなのに声かけたらややこしくなるからやめとけっての。なんでレキはすぐトラブルになるようなことするんだよ」そうは言うが、まるで僕が好んでトラブルを引き起こしているような扱いは心外だ。


「私が言うのもなんだけど、確かにこの場面で女の子たちを呼ぶのはスゴイ度胸だと思うわ。もし私が嫉妬して怒りだしたらどうするつもり?」ミクまでが僕の行動を責めたてる。


「でも無視する方がまずいだろ。声をかけたけど断られた方がどちらにとっても面目が立つってもんさ」僕の言い分が一番正しく思えるが、それは結果次第かもしれない。


 ミクたちが言うように、櫻子が僕のことを好きだと言うなら確かに侮辱的だと思われる可能性はある。なんせ他の女子と一緒に居るところに出くわして、そこへ合流するよう誘われているのだ。自分には興味持ってないと宣言されたも同じだろう。


 だが僕にとってはそれが正しい。櫻子のことは幼馴染で仲悪くしようとは思ってないが、向こうは僕を嫌っているような行動ばかりとる。かと言って全く喋らないわけでもなく、クラス内でも放課後でも顔を合わせれば普通に会話はするし、四年生くらいまでは良く遊んでいたのだ。その度ケンカもしたが。


 声をかけられた側の櫻子たちは、自転車に跨ったままで何やら相談し、こちらを一瞥してからアカンベーをしてから走り去って行った。


「なんだよあれ、だったら最初から停まって覗くんじゃないっての。まったくアイツは失礼な奴だよなあ」僕は本心でそう言ったのだが、健二も涼太も賛同している様子はない。


「暦のそういうところ、俺はある意味尊敬するよ。櫻子もそうだけど、アイツだけじゃなくて一緒に居た香澄だってバレンタインにチョコくれてたじゃんか。そんな相手が別の女子とイチャイチャしてるの見た直後に誘われてどうしろってんだよ」涼太はまったく良く覚えてるもんだ。僕はすっかり忘れていたってのに。


「バレンタインのことなんてもう忘れたよ。なんとも思ってない相手に貰ってもそんなには嬉しくないだろ? そりゃミクがくれたなら話は違ってくるけどさ」僕はそう言いながらはるか先のバレンタインを想像した。


「残念だけど宇宙にはバレンタインは無いのよ? けどこよみがなにか欲しいなら夏休みの記念になにか用意してもいいわよ? 交換するのもステキね」


「マジで!? よし、なにかすごいもん考えておくからさ。絶対だよ!?」僕は大興奮でミクへとにじり寄った。


「え、ええ、そんなに期待されても困るけど、なにか喜んでもらえるものを考えておくわね。健二と涼太もなにか欲しいかしら? ―― もう、こよみったら案外嫉妬深いの? 友達になった記念って意味だから膨れなくてもいいじゃないの」


「でもあんまいい気分にはならないもんだろ? そこは差をつけてもらえないと泣けてくるさ。マジで頼むよ」


「オマエ、そんな風に思うなら櫻子のことも察してやれよ…… 他人事ながら不憫すぎてかわいそうになるぜ。確かに素直じゃないアイツが悪いってのもあるだろうけどなあ」涼太がまた櫻子のことを引っ張り出した。


「全然違うだろ、僕はちゃんとミクに告白したんだからさ」と、つい口にしてしまった。すると健二と涼太は驚いているし、ミクは不満げな表情のまま顔を赤らめてしまった。


「確かに隠してとは言わなかったけど、なんでそんなことを堂々と言うの? 私が恥ずかしいってことわかってるでしょ? ホントこよみにはビックリよ……」


 そう言ってミクは、手元に置いていたサイダーをひといきで飲み干した。だがそれは僕の使っていたグラスだ。気が付いていないミクを見ていると何となく気まずくなってきた。


 僕は苦し紛れに苺の頭を撫でながら心を落ち着かせようとしたが、その意図に反して胸の鼓動は高鳴るばかりである。針のむしろとか、居ても立っても居られないと言うのはこういうことを言うのだろう。


「おにいちゃんすごいドキドキしてるね。おとうさんみたいによっぱらってるの?」抱きよせていた苺にまで暴露され、僕の動揺と緊張は最高潮に達した。


「ダイジョブ、酔ってなんかいないから余計なことは言わなくていいからな? 苺はポテト食べたいだろ? ほら取りに行こう。ミクはサイダーおかわり持ってくるよ」


 そう言いながら歩き出したものの、右手と右足が同時に出るくらいには動揺していた。それでも何とか母ちゃんのところへたどり着くと、揚げたてのポテトを皿に盛ってもらい、サイダーのペットボトルと氷を手にみんなのところへと戻った。


「それにしてもレキがこんなに動揺するとは意外だよ。今までこんなことなかったじゃんか。もしかしてコレが初恋ってやつなのかね」健二は弱みを見せた僕の様子がおかしくてたまらないらしい。


「健二と違って、絶対にこういうところを見せないもんかと思ってたよ。まあ確かにミクはクラスの女子たちよりずっとかわいいと思うけどな」涼太までがここぞとばかりに冷やかしてくる。


 当事者の僕とミクはと言うと、お互いを意識しすぎているのか、視線を合わせることも出来なくなっている。結局この後は、背中合わせに近い状態でやけ食いやけ飲みして過ごしたのだった。


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