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荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~  作者: 釈 余白(しやく)
第二章:初めてのコイ

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11.マナー違反

 約束の日の前日、僕はバーベキューをやってもらう代わりに、一日中手伝いに当てることになっていた。でもそれくらいでお願いを聞いてくれるのだからうちの親も大概甘い方だろう。


 昼間は苺の面倒を見て母ちゃんに昼寝を提供し、その後は買い物へ行ったり洗濯を手伝ったりと母ちゃんにこき使われた。夕方なったら仕事から帰ってきた父ちゃんの背中を流し、車を洗って車内に掃除機をかけるフルコースでピカピカにしてやった。



 その甲斐あって、約束していた日曜日には庭にバーベキューセットが並べられ、肉が山に盛られ、その横には冷凍のフライドポテトやフランクフルトまである。


 そしてもちろん主役と言ってもいいテナガエビが容器に詰め込まれていた。こいつらは母ちゃんの手によって酒に漬けられて締めてあり、後は素揚げを待つばかりだ。


「でもいくらなんでも肉多すぎない? 他にも誰か呼んだの?」僕が母ちゃんへ尋ねると、うんうんと頷いている。と言うことは健二の母ちゃんあたりが来るのだろう。


 父ちゃんの幼馴染である健二の母親は、珍しく父ちゃんの毒牙にかからなかった女子だと聞いている。それはその兄が父ちゃんの天敵だったからというのが理由らしいが、その健二の叔父さんは海外に住んでいるので滅多に帰ってこない。


 そしてうちの母ちゃんは父ちゃんたちより一つ下の後輩で、中学からの友達とのことだ。涼太の父親も年の近い幼馴染だが、どちらかと言えば真面目な子供時代だったらしく、うちの父ちゃんたちとは別の人種である。


 そんな親たち世代が集まると子供らをいじりたがって迷惑なのだ。それでも僕らが幼馴染同士仲がいいのと同様、父ちゃんたちもいまだに仲がいいのはなんだか嬉しいものだ。



 大体の面子を予想しながら準備が一段落した僕は、土手までミクを迎えに行くことにした。家を教えてもらってないから土手で待ち合わせしたのだ。


「あれ? 随分早いじゃん。まだ十分前だから僕が先だと思ってたんだけどなあ」すでに来ていたミクへと声をかけた。


「楽しみにしてたから早過ぎてしまったみたいね。今日はお呼ばれだから緊張してるってのもあるわ。迷惑でないのならいいけど」ミクはそう言って首をかしげるような仕草で笑った。


 今日のミクは白いブラウスにふんわりした濃紺のスカート、最初に会った時と同じ紐がぐるぐる巻かれたような赤いサンダルを履いている。色目はともかく、なんとなく不思議の国のアリスや赤毛のアンみたいな雰囲気を感じる。少し古風な服装と言えばいいのだろうか。


「今日みたいな長めのスカートがホント良く似合ってるよ。最初に会った時の白いワンピースもかわいかったもんなあ」


「すごいわね、そんな前の服装を覚えてる男子がいるなんて驚きだわ。しかもそれほど変わった格好ではなかったでしょ?」


「変わってるってことは無かっただろうけど、僕にとっては特別に見えたんだ。もちろん服装もだけどミク自身のこともだよ? なんだろうね、これが一目惚れってやつかもしれない」僕は思い切って本音をぶっちゃけてしまった。


「もうっ…… 会っていきなりそんなこと言うの? これから遊ぼうって日の一番最初に告白めいたこと言うのはマナー違反よ。そんなこと言われたら一日中意識しながら過ごさないといけなくなるじゃないの。こう言うのは別れ際に言ってもらいたいものだわ」


 ミクは文句を言いながらも顔は笑っていて、告白が嬉しかったのか僕の行動がおかしいと思っているのかどちらかだろう。もしくはその両方かも知れない。ただ別れ際に言うものだと言う意見はもっともだと感じていた。


 なぜなら僕もすでに意識しすぎて直視が難しくなり始めていたからだ。ミクがどう思っているかはわからないけど、間違いなく僕は彼女が好きだし、出来るだけ多くの時間一緒にいたいと考えてしまう。


「まあ、もう言っちゃったから取り消せないしさ。答えを聞きたいわけでもなくて、僕の気持ちを知ってもらいたかっただけなんだ。だからあんまり気にしないでもらえるとありがたいかな」


「私もこよみのこと嫌いじゃないし、どちらかというと好き、だと思う…… でも私はずっとそばにはいられないのよ? あと少しで宇宙へ帰らないといけないんだもの」


「それでもいいさ、夏休みの間だけでもまだ何回も遊べるだろ? それに――」僕は喉の渇きを感じつつも、何とか最後まで言い切ろうと言葉を溜めた。


「―― それに、次は秋の連休か冬休みに僕がミクのいる宇宙まで行くから!」


「それ、本気で言ってるの? そんな簡単に行けるほど近くはないのよ?」そう言った瞬間のミクは笑っていなかった。でも不可能だと笑い飛ばされるよりは大分マシだ。


「そりゃなんとかするさ。頑張るよ。ロケット代くらい稼いでみせる! だからまずは僕が信用に、信頼に値する男かどうか見極めてくれよ。夏休みはまだまだ残ってるからさ」僕は力強く宣言した。


「キミはスゴイのね。今まで見たどの地球人よりも、どの宇宙人よりも心の強さを感じるわ。だからお望みどおりに見極めてあげるわ。まずは今日からかな」ミクの顔に笑顔が戻り、僕らはバーベキュー会場へ向かって歩きはじめた。


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