プロローグb-The boy was common.【全ては暗黒の世の底へ】
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プロローグb-The boy was common.
【全ては暗黒の世の底へ】
「いらっしゃいませー」
「ごめんください、店員さん。」
「雪里のところの坊やじゃないか!」
「久しぶりです。其の紅い薔薇をいただけませんか。」
「了解だよ。しっかし、本当に久しぶりだねえ。こんなに大きくなって…
此処を離れて十年か、長いようで短いものだねえ。」
「…本当に」
久しぶりですね。
其の言葉をその店員は聞くか聞かないかの内の早業だった。
先ほどまで気さくに話していた十四ほどの少年の手が、学生鞄の中に入った後、出てきたのは黒光りする拳銃だった。
幸いか否か、その店は人通りの少ない位置にあり人は居なく、さらに近くにある、大きな道路を大型トラックによる騒音で、乾いた拳銃の音は掻き消された。
いや、本当の理由はそうではないのかもしれなかった。
「だけど、それじゃあ僕の名前を知っているのでしょう。」
少年は拳銃を再び鞄にしまいながら呟く。鞄を開いたときに、ちらりと銀の柄が太陽の光で光った。
少年の髪は黒く、右目は黒、左は紺のオッドアイだった。其の表情は心底楽しそうに笑っていた。其の表情はそれ以外の意味を成さなかった。
少年は店の外に出て歩き出す。
真っ黒なパーカーに包まれて隠されたその背中には、異様な傷があった。痛々しい、
一対二枚、二対そして一枚の羽の様な傷だった。
突然少年がポケットに入れていた手を握りしめて、ニタリと笑みを浮かべて言う。
「また一人殺された。」
ささやきは小さく、道行く人には聞こえない。
背中の傷は三対の羽へと変わっていた。