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3.4 魔獣百鬼夜行

 四人での夕食を終ると、リサたちは宿の三階の寝室――女部屋で、四人で会話をした。そのあとは、男部屋と女部屋に分かれて就寝する予定だ。


 日は落ちたが、シャワーはまだ浴びていない。


 ひとしきり会話が終わり、フィズナーとベルディグロウが去って行ったところで、リサは窓の外の様子がおかしいことに気づく。


「これって――」

 

 百鬼夜行。


 黒い塊――オオカミの形であったり、ゼリーのような不定形であったりするものたちが、通りをぞろぞろと歩いている。


 すぐさま、女子部屋のドアがノックされ、開く。フィズナーもベルディグロウもこの異常事態に気づいたようだ。彼らは再び部屋に入ってくる。


 フィズナーが言う。


「魔獣の群れだ。方向からして、魔獣闘技場のほうから出てきてる。何者かが、魔獣の檻を開け放ったのかもしれない」


 ひい、というノナの短い悲鳴。


 外は次第に騒がしくなってくる。外を見てパニックを起こしている人たちの叫びもあれば、都市警固兵が戦闘を行っている声もする。


 外の様子を見て、リサは決心する。


「わたしたちも出なきゃ。魔獣闘技場で何か起こったんだよ」


 それを聞いて、フィズナーは呆れたように笑う。


「いつも通りだな。こういう事態には、さも当然のように首を突っ込む」


「だって、きっとわたしたちなら解決できるよ」


「そうだろうが……。おっと!」


 フィズナーが反応したのは、窓から飛び込んできた大きなコウモリ型の魔獣に対してだった。リサたちが窓を開けて外の様子を見ていたので、飛び込んできたのだった。それをフィズナーは、さっと腰の剣を抜き斬り伏せる。


 またも、ノナの短い悲鳴があがった。


 リサはこの状況を見て、窓を閉め、考える。


「敵はどうも無差別攻撃をやってるみたい。フィズ、ここでノナを守ってあげてくれる?」


 そう言われて、フィズナーは手を口に当て、しばらく考える。ノナは窓から急に魔獣が飛び込んできたせいで、ベッドの布団をかぶって怯えている。この状況で、ノナを連れていくのも置いていくのも難しいだろう。


「わかった。相手は魔獣だしな。リサの光の槍と、ベルディグロウの旦那の大剣が有利を取れる相手でもある。俺はここでノナの安全を守っておく」


 頼もしいフィズナーの言に、ノナはぐずぐずと鼻声で感謝する。


「……ありがとうございます。元騎士様、さすがです」


「まあ、やらかしすぎて、『元』だけどな」


++++++++++


 リサとベルディグロウは宿を飛び出し、それぞれの武器を構える。リサは光の槍、ベルディグロウは大剣だ。


 もちろん、宿の扉はきちんと閉めた。魔獣の動きに統率が乏しい以上、宿の扉を開け放すわけにも行かない。最悪、宿の中に入られてモンスターハウスだ。


 外灯の明かりのおかげで、魔獣の様子が見やすいのはありがたいところだ。


「グロウ、行こう」


 光の槍で魔獣たちをなぎ倒しながら、リサはベルディグロウに言った。もちろん、彼にも異存はない。


「ああ。闘技場で抱えている魔獣の量としては多い。誰かがいまも生成し続けているはずだ」


「生成って?」


「空冥力の歪みを意図的に発生させ、それを起点にして魔獣をつくりだす技術だ。遠隔型術士の技のひとつだ。これを扱える者は『魔獣使い』の称号を得る」


 そう答えながら、ベルディグロウは大剣で魔獣たちを叩き潰していく。彼の攻撃は、対人戦闘では威力過剰になるため抑え気味になるが、相手が人間でなければ遠慮なく腕を振るえる。


「じゃあ、敵は『魔獣使い』ってことかな?」


「どうだろうな。魔獣の扱いは難しく、うまく制御できない者は自ら使用を控える。だが、無秩序なこの様子。『魔獣使い』としては使用を禁じられる部類だ」


 魔獣闘技場へと走りながら敵をなぎ倒すリサは、ベルディグロウの説明に納得する。魔獣百鬼夜行は壮観だが、一体一体が弱く、とかく攻撃的なだけだ。魔獣生成時の設定を誤ったようにしか思えない。


「じゃあ、そのへたっぴをさっさと倒さないとね」


 リサが言うと、ベルディグロウは同意する。


「ああ。早急に無力化して、都市警固兵に引き渡そう」


 ふたりは魔獣の大軍を蹴散らしながら、魔獣闘技場へ向かって走った。


++++++++++


 魔獣闘技場へ到着すると、まず、入口が開け放たれていることにリサは驚いた。日の出ている間に車から見たときには閉まっていたはずだ。


 魔獣はやはり、闘技場の中から出現している。リサとベルディグロウは互いに目配せすると、闘技場の中へと突撃する。


 出現する魔獣を倒しながら、敵の出現経路をさかのぼっていくと、広い場所へと出た。周囲を観客席に囲まれていて、さながら野球場だ。違いは野球場ほど広くはないことだ。大立ち回りはできるが、魔獣からいつまでも逃げることはできない――そんな絶妙な広さを設計してある。


「これか!」


 リサは黒いオオカミや黒いゼリーのような魔獣を光の槍で破壊しながら走る。その先にあるのは、地面に描かれた謎の紋様だ。


 その紋様からは空冥力を感じる。それに、魔獣たちはその紋様から出現している。おそらく、この騒動を起こした空冥術士が設置したものだろう。


 リサは出現途中の黒いオオカミの首を刎ね飛ばし、槍を回転させて地面の紋様を斬りつけた。光が噴出し、紋様から空冥力が消える。


 リサは一息つく。


「……これで一段落だね」


 紋様からの魔獣の出現は確かに止んだ。しかし、それと同時に入口の鉄格子が閉まり、代わりに奥の鉄格子が開く。


 そこから出現したのは、全高五メートルはあろうかという竜だった。


 ベルディグロウはリサの前に立ち、竜に向かって大剣を構える。


「……手の込んだ罠だ」


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