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三話  確かめて

コイツの存在を改めて確認した。

俺はコイツをトキワアサミと認めた。

しかし、未だに謎な部分が多い。

コイツの平行世界が壊れたまでは良しとしよう。

だからと言って一体なぜ俺の前にコイツが姿を現した。

どうやってここに来た。

そして俺は自殺をしたにも関わらず死んでもいなければ、時間が戻っている訳でもなく翌日を迎えている。

考えても俺にはわからない。

改めて、事の事情を整理するためにコイツと向き合った。


「お腹空いた」

「・・・・・・」


一気にやる気がなくなった。



俺は今コンビニにいる。

とりあえず買い物をすることにした。

家には基本、食べ物がない。

では食生活はどうしているのかと聞かれれば簡単である。

―――外食だ。

だからと言って自炊が出来ないわけではない。

一人暮らしを始めた頃は毎日自炊をしていた。

しかし日が過ぎてくるとそれが嫌になった。

自分が作った飯を一人で食うのは料理の出来が良いにしろ悪いにしろ不味い。

それからの俺は自然と朝は抜き、昼は学園の購買、夜は外食と言うローテーションで腹を満たすようになった。


『何でも良いから食べさせてー』


脳裏にアイツの一言が過ぎった。

アイツ―――アサミは一向に動こうとせず、ただ「お腹空いた」と言うだけだった。

そのまま黙って家を出たが問題はないだろう。

この大雪の中、俺を買出しに行かせるだけの度胸が憎たらしい。

会計を済ませ、暖かい店内から外に出ると不意に違和感を感じた。

コートのポケットから振動が伝わってくる。

携帯電話が通話着信によってバイブしていた。


「なんだ」

『アーサー? 良い知らせと悪い知らせがあるけど聞きたい?』


アーサーとは俺の事。

そして電話を掛けてきたのは学園のクラスメイトだ。

名前は・・・・・・思い出したくないので伏せておく。


「良い知らせを五文字で述べろ」

『学園が休み』


―――ッ。

電話を切った。

大体予想は付いていたからだ。

またバイブが始まった。


『なにそれ!? コントでもしてるつもりか!?』

「まだ何か用か」

『おう。すげー情報だぞ』

「俺は忙しい」

『まだ詳細がアレなんだけど、昨日飛び降り自殺があったらしいぜ』


自殺。

昨日、日付的には俺が自殺をした日だ。


『しかも、うちの学園の制服着てたってんだから驚きだ!! しかも二人同時!! すごくね?』


二人。

おかしい。

だとするのであれば俺ではない同じ学園の誰かが二人一緒に自殺をした事になる。


『しかしな、もっとすごいのはこれからよ? その二人がな、落ちてきてない。行方不明なんだってよ』

「行方不明」

『あぁ、目撃者が少ないし地上から20階建てビルの屋上を見上げるんだ。だから見間違いなんじゃないかって。実際に落ちてきたなら話は別だけど落ちてきてないから。あ、そのビルって朝山ビルな』


朝山ビル。

大手IT関連会社、朝山グループの本社ビルである。

俺は昨日、確かにそこの屋上にいた。

なぜそこにいたかはともかくとして、行けた理由は死んだ親父が勤めていた会社だからだ。

俺はよく親父の仕事についていき、手伝いなどをしていた経歴がある。

社長や社員などに顔を覚えられていたため親父が死んだ後も金の事情を機会に出入りを頻繁としていた。

親父の仕事を引き継いだ、とまでは行かなくても心優しい社長は親父の席を俺に譲ってくれたのだ。

そしてその朝山社長は俺の親代わりである。

学園に行けるのも、今の家で暮らして入れるのも全部社長のおかげである。


『なぁ、どう思う? 今日の学園、建前上は大雪による積雪で休みなんだけど、これも関係してると思わね?』

「どうなんだろうな。警察がそのうち真実を暴くだろ」


思い通り喋った会話主はその後『寝るわ』と言って電話を切った。

今の会話からして一つの疑問が正解に近づいた気がした。

少なくとも俺は昨日、自殺をしていた。

しかし二人。

これについてはわからない。

急いで家に戻ることにした。

空腹の(アイツ)がいる場所へ。

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