表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/26

二話  常盤朝美とトキワアサミ

常盤朝美(ときわあさみ)だと」

「そう常盤朝美。君と同じ名前だけど性別は違う。もう一つの世界での君」

「突っ込むべき所が多いが、もう一つの世界って何だ」


そうだね。と呟き俺の正面立った。

身長は俺より頭一個分低く、見た目は幼く見えるがどこか威風堂々とした感じを受ける。

髪型は黒のロングヘアー。

リボンやヘアゴムなどで束ねている事もない。


「君は平行世界って言葉を知ってるかな」

「言葉だけならな。深い意味は知らない」

「すごい簡単に言うと〝もしも〟の世界かな。君はオトコノコだけど私はオンナノコ」


アサミは自分の両手で小さい胸を揉み、ね? と言った。


「小さいとか言ったら、怖いよ?」

「それで」

「だからマークを付けようよ? マークを。まぁいいや、続きだけどこの世界には様々な可能性があるの。例えば君に命が与えられた時、男か女かで分かれる訳だけど君は男だった訳だ。それと同時に女であった可能性がある。それが今の私ね」


他にも例を挙げていくアサミ。

その姿を見ていた俺は未だにコイツの言っている事が理解できていなかった。


「じゃあ、なんでお前が・・・・・・トキワアサミが俺の前に姿を現した」

「君が自殺をしたからだよ」

「自殺をしたらなんでお前が出てくる」

「本来、君は死ぬはずだった。絶対に死ぬレベルの事をした。〝もしも〟が通用しないレベルの事をね。仮に生きていたとしても奇跡なんて言葉は無視して現実は植物人間だよ。なのに完全無傷の体。それによって平行世界が壊れたの」


余計に訳がわからなくなってきた。

それと同様にアサミも軽く眉間にしわを寄せた。


「可能性は可能性でしかないけど今回に関しては絶対だった。死ななかった可能性はゼロに等しい。それが何らかの作用で平行世界が君を生かした。だけどそれによって私の平行世界が壊れ、それにより可能性、もしも、と言う言葉が否定され私が君の前に現れた。何もかも違う(きみ)がね」

「生活の仕方も違うか」


そうだけど次々と問いだすとキリがないよねと言い、笑顔を俺に見せた。

細かいことはいい、そう言いたげだった。

それでも俺は次々と質問をするがアサミの答えは適当な返事に変わっていった。

ここで気づいたことがある。

仮にコイツが俺なら・・・・・・トキワアサミは俺と正反対なんだ。性別は置いておくとして、俺の性格は細かいことを逐一知ろうとするがこいつは大雑把。そしてよく笑顔を作る。俺はまったく笑わないし疑問系等の表現が無に等しいがコイツは表現が豊かだ。


「これが、〝もしも〟の俺か」

「ふぇ?」

「いや、気にしないでくれ」

「それよりお腹空いたんだけど食べ物ある?」

「無い」

「だよね、朝ごはんから晩ごはんまで作ってくれる人いないもんね」


やはり知っていたか。

ここまで正反対だとは思わなかった俺はここで全てを理解した。

〝もしも〟と言う言葉を全て鵜呑みにするならば、俺の全てを逆にすれば良い。

俺の性格の反対がコイツであるように俺の今までを逆にするとコイツになる。


「俺には両親がいない。死んだ。だけどお前の世界には両親がいる。違うか」

「そうだよ。ごはん自体もお母さんが作ってくれるし生活費もお父さんが稼いで来てくれる。だけど君は全てを自分でやる。わかった?」


舌打ちをした。

仮にもコイツが俺なら、とても良い生活をしてるじゃないか。

それは置いておき、これ以上の質問は無用になった。

理解してしまった。

トキワアサミを・・・・・・。


「もう一度、問う。お前の名前は」

「常盤朝美。もう一つの世界の(わたし)だよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ