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十三話 ダ・カーポ

私の役目は終わった。

そして彼の役目が終わった。

彼は、世界を救い少女を救った。

私は初め正体を偽った。

それは、彼のせいで世界が壊れたと思い込んだから。

私の当初の目的は彼を現実にすること。


―――そう、現実に。


彼は〝もしも〟と統合され現実に逆らった。

故意ではない。

だが結果である。

その結果を現実にすることで壊れた世界は直ると思っていた。

しかし、結果を誤ったのは私だ。

救う世界、救う人物を間違えた。

初めから権利を失っていたのだ。

責任放棄とは違うが権利を持たない私に世界は直せない。

彼はとても物分りが良かった。

いや、実際にはどうなのだろうか。

私は彼ではない。

だが彼は私の役目を背負った。

私の役目を果たすことで自分の役目を果たすことが出来るから。


―――少女は幸福で不自由の無い世界で生きる事を恐れ、

―――彼は残酷な世界を知った事で生きる事に絶望した。


それを両者とも確認し合うことが無かった。

何故ならそれは〝自分〟だからである。

私は彼に〝逆〟と教え、彼は少女に〝逆〟と教えた。

まるで間違い探し。

簡単すぎる間違い探しだ。

だけど、私にはそれが出来なかった。

何故なら私はトキワアサミではなく、無だからだ。

無は何かを手に入れなくてはいけない。

そして彼に接触するために少女を偽った。

体、記憶、世界観、全てを真似た。

しかし彼には近づけなかった。

私は〝逆〟ではないから。


―――もしも、私が少女だったら彼に近づく事が出来たかな?


なら私の役目は何だったのか。

それは元に戻すことである。

何もかもを始まりに戻すのだ。


―――ダ・カーポ。


始まりに戻れを意味する。

元々は音楽において使われる単語だったと思う。

始まりに戻ればやり直しが効く。

実際、少女は始まりに戻った。

いや、戻したと言って良いだろう。

それが私の役目だ。

彼も始まりに戻る。

役目を背負って。

私も元に戻る。

無になるのだ。


―――ありがとう。

―――常盤朝美クン。

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