夜明け色の「ありがとう」
「ーいってきまーす!」
・・・これから行くのは、彩光学園。
楽しみだなぁ・・・。
「気をつけて行くのよー!」
「はぁーい!」
久しぶりの学校、早く行きたい!
ー私、虹彩 桃。
桃色が好きで、地味な中学二年生。
私は、いつも学校に行くのが楽しい。
なんでかって?それは、彩光学園の制服が、少し桃色がかかって、可愛いの。
それを、学校のみんなに見てもらえるんだよ。(私は地味だけど)
すごく楽しみ!
スクールバスに乗って、学校に向かう。
あぁ、スクールバスに乗るだけでも、楽しい♪
・・・・・・あれ?
あそこに乗っている男の子・・・前まで、いたっけ。
すごくかっこいい子だけど・・・。
転校生かな?
話しかけたいな・・・。
「・・・あの・・・。」
私に話しかけられた男の子は、びっくりしたように私の方を見る。
「・・・な、何・・・?」
「・・・急にすみません。あの、あなた・・・転校生、ですか?」
緊張しながらも、私は聞く。
「・・・!・・・ちょっと待って・・・!もうすぐ学校に着くから、学校で話そう・・・!」
・・・あ、本当だ。もう、学校だ。
「・・・あ、の・・・私、虹彩 桃です。」
自己紹介しといたら・・・。
「自己紹介ありがとう。俺は、彩虹 藍。よろしくね。」
そう言ってにっこりと笑う、彩虹さん。
「・・・あ、呼び方は、なんでもいいよ。」
「じゃあ・・・あ、藍、くん・・・。」
「・・・っ!?!?!?・・・。」
?・・・藍くん、どうしたの・・・?
「・・・何も・・・。」
「藍くん・・・!か、顔が赤いよ・・・!」
「・・・っ!?!?・・・。」
藍くん・・・!?やっぱり、顔が赤い・・・!
熱があるのかな・・・?
・・・スッ。
私は、藍くんの額に手を当てる。
「・・・っ!?・・・。」
えっ・・・。嫌だった、かな・・・?
「・・・ごめん・・・。」
えっ・・・?
「なんで藍くんが謝るの?」
「・・・桃を・・・困らせたから・・・。」
「わ、私はべつに困ってないよ・・・!」
何も困ってないのに・・・。
「ー彩光学園に到着いたしました。」
彩光学園に着いたみたい。
「・・・クラス、一緒だといいね。」
「・・・う、うん。」
スクールバスから降りて、私と藍くんはクラス分けを見に行く。
この学校は規模が大きいから、同じクラスになることは難しい。
「・・・えっ・・・!」
「・・・え・・・?」
同じクラスだ・・・!!
「やったね!」
「・・・うん。」
同じクラスだから、仲良くできるといいな。
「・・・それで・・・俺は、転校生なんだ。」
転校のことか。
「う、うん。」
「バスで、学校でって言ったのは・・・俺はもともと、教室で紹介される予定だったんだ。」
「そうだったんだ・・・!」
それで、目立たないために、スクールバスで、一番後ろの席に座っていたんだ・・・!
「・・・あ、俺、職員室に行かなきゃ行けないから、また、教室でね。」
「うん!」
そう言って私は藍くんと別れた。
そして、私は教室へ向かった。
「ー今日のホームルームは、転校生の紹介だ。」
担任の先生が言った。
「・・・彩虹ー。」
先生が藍くんの名前を呼ぶと、藍くんが出てきた。
うわぁ・・・!さっきよりかっこよくなってる・・・!
「・・・彩虹 藍です。藍色が好きです。よろしくね。」
もう・・・。笑うとかっこいいんだから・・・!
・・・って、藍くん、藍色が好きなの・・・?
「彩虹の席は、虹彩の隣だ。」
「はい。」
藍くん、私の隣の席・・・!?
「・・・ありがとう。」
藍くんが、自分の席に座る前に、私にコソッと言った。
どういう意味かわからなかったけれど、そのことは一旦置いておくことにした。
「・・・彩虹くん、虹彩って子と苗字似てない!?」
「そうだよね、彩虹くん、イケメンだしズルいー」
「てか、なんで運よくあの地味な虹彩の隣なの?マジわかんないんだけど」
・・・うぅ・・・。
いろんなところから、私に向かって声が聞こえる。
「・・・桃、ちょっと。」
?・・・藍くん?
「う、うん。」
どうしたんだろう。
私は藍くんに手を引かれたまま、どこかに連れて行かれた。
「ー桃、着いたよ。」
そこは、学校の屋上だった。
「・・・お、屋上って、勝手に使っていいの・・・?」
「ダメだよ。」
・・・だ、ダメなら使わない方が・・・。
「桃、あそこ、知ってる?」
藍くんが指で指したのは・・・.。
「・・・人気観光地、好星輝と、夢向進神社・・・?」
好星輝というのは、世界自然遺産の、高ぁ〜い山。
夢向進神社というのは、世界文化遺産の、今から千年前くらいにできたと言われている神社。
どちらも難しい名前で、私も最初は覚えられなかった。
「そう。・・・桃は、好星輝と夢向進の名前の由来、知ってる?」
「え・・・?・・・うーん。わからないなぁ・・・。」
名前の由来なんて、考えたことなかったなぁ・・・。
好星輝は、好きな星が、輝く・・・?
夢向進は、夢へ向かって、進む・・・?
でも、これじゃそのまんまになっちゃう。
「・・・夢向進は、そのまんま。夢へ向かって進む、だよ。」
「そのまんまなんだ・・・!」
そのまんまの意味かぁ・・。
「じゃあ、好星輝は・・・?」
「・・・えっ・・・?」
私が好星輝の由来を聞くと、藍くんはドキッとしたように動揺する。
嫌だった、かな・・・?
「・・・もしかして、嫌だった・・・?」
「そ、そんなことないよ・・・!えーと、好星輝は・・・。」
ーキーンコーンカーンコーン・・・。
「・・・予鈴・・・!」
「戻らなきゃ・・・!」
藍くんが言おうとした時に、予鈴が鳴った。
「またねっ・・・!」
私はそう言って、ニッコリと笑う。
「・・・っ・・・!!」
・・・?なぜか、藍くんの顔が赤い。
さっきも顔が赤かったから、熱があるのかな・・・?
「藍くん、大丈夫・・・?」
「・・・う、うん。・・・それより、早く戻らないと・・・!」
そうだ。早く戻らないと・・・!
ー俺、藍。
今日から、彩光学園の中2だ。
「・・・桃、ちょっと。」
俺は屋上に行きたくて、桃を呼んだ。
「う、うん。」
そのまま、俺は桃と屋上に向かった。
「ー桃、着いたよ。」
屋上に着き、桃に言った。
「・・・お、屋上って、勝手に使っていいの・・・?」
「ダメだよ。」
困っている桃の顔・・・。
・・・やっぱり・・・か、かわいい。
そして俺は、桃に話したかったことを話した。
ーキーンコーンカーンコーン・・・。
このチャイムは、たしか・・・。
「・・・予鈴・・・!」
「戻らなきゃ・・・!」
予鈴がなって、話は中断となった。
「またねっ・・・!」
・・・!・・・ニッコリ笑う、桃の顔。
「・・・っ・・・!」
・・・やばい・・・か、かわいすぎ・・・。
「藍くん、大丈夫・・・?」
・・・桃が心配してくれるってことは・・・顔に出ているんだな。
桃は・・・こういう時、すぐに心配してくれる。
・・・俺は・・・桃のことが・・・・・・って、今はちゃんと桃に「大丈夫。」って言わなきゃ・・・!
「う、うん。・・・それより、早く戻らないと・・・!」
そう言って、俺と桃は別れた。
ー放課後。
もう夕方なので、私は帰りの支度をして、教室を後にした。
「・・・あっ、桃・・・!」
藍くんに呼ばれ、私は振り返る。
「・・・一緒に帰ろう?」
「うん・・・!」
藍くんと一緒に帰れるんだ・・・!
「・・・ありがと。」
いいよ・・・!
私は心の中で藍くんに返事をした。
「・・・藍くんの家、どこにあるの?」
「・・・桃の隣の家。」
「・・・!?えっ・・・?」
そういえば、新しい人が引っ越してくるって聞いたような・・・。
「ほんと。」
・・・ということは、本当なんだ。
その後からも私は、藍くんとおしゃべりをしながら、家に帰った。
ーうーん・・・。
目が覚めちゃった。
今は、午前五時四十分。
よし!散歩に行こうかな・・・。
私は置き手紙をして、家を出た。
「・・・あれっ・・・?」
家の外には、藍くんらしき人の姿が。
「・・・あれっ・・・桃・・・?」
やっぱり、藍くんだ・・・!
「・・・藍くん・・・!・・・夜明け色が、綺麗だねっ。」
私は思ったことを口にした。
「俺、この夜明け色、好きだな。」
「私、この夜明け色、好きだな。」
私と藍くんの声が、揃った。
「・・・そういえば、藍くんって、藍色が好きなんだよね?」
「うん。桃は、桃色が好きなんでしょ?」
・・・?なんで、知っているんだろう。
「う、うん。そうだよ。」
「・・・夜明け色って、桃と俺が合わさった色なんだな。」
たしかに・・・!
「そうだね・・・!」
・・・・・・そういえば。
「・・・藍くん、好星輝の由来、教えてくれる?」
「えっ・・・。」
嫌なのかな・・・?
「・・・わかった。」
うなずいて、私の方を見た、藍くん。
「・・・この際に伝えておくが・・・・・・。」
ドキッ。
なんだろう。
「・・・・・・藍・・・?」
そう言って、一人の女の子が近づいてきた。
「・・・萌花・・・?」
も、か・・・?
「藍・・・!・・・なんで、ここに・・・・・・え・・・?」
彼女がそう言った時、私の胸がギュッと苦しくなった。
・・・それは・・・・・・彼女が、藍くんの手を握っていたから。
・・・どういうこと・・・?
彼女は・・・藍くんと、どういう関係なの・・・?
・・・どうして、私の胸は苦しくなったの・・・?
この気持ち、なんていうのかな。
・・・私は、藍くんのこと、どう思っているの・・・?
藍くんは、好きだよ。
・・・あっ・・・と、友達として、ね?
・・・でも・・・これが恋愛感情なら・・・。
「・・・藍っ・・・!」
彼女が、藍くんの名前を呼んだ。
「・・・今から言うこと、聞いてね・・・!」
な、何を言うの・・・?
・・・ま、まさか・・・。
「・・・・・・藍。・・・私は、藍が・・・っ・・・藍のことが・・・・・・。」
彼女がそう言いかけた時、私は、藍くんがいるところの、反対方面へ駆け出した。
・・・あぁっ・・・やっぱり、そうだったんだ・・・。
・・・・・・そうだよね・・・こんなに地味な、私なんかが・・・。
「・・・・・・もっ・・・桃っ・・・・・・!!」
・・・!?だ、れ・・・?
もう・・・だれも私のところに来ないでっ・・・!
「・・・桃っ・・・!」
「・・・!!!」
藍、くん・・・。
「・・・・・・藍くん・・・あの・・・告白は・・・?」
あの・・・彼女の告白を・・・。
「・・・速攻、拒否したよ。」
「えっ・・・!?」
藍くん・・・!!
「好星輝・・・今からいうと、俺の星は、桃だよ。」
藍くんの・・・星・・・?
「・・・つまり・・・俺は、桃のことが・・・。」
・・・私のことが・・・?
「・・・・・・好き。」
えっ・・・。
「・・・この気持ちは、恋愛感情。」
・・・・・・っ!!!
「・・・藍くん・・・・・・。・・・ありがとう・・・!!」
「・・・・・・いいよ。」
・・・やったぁっ!!
「「ありがとう・・・!!」」