表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廻生のアリア  作者: jurabisu
第三章
95/107

第95話 8歳、フランデモラの大地にて 4

「...」


秋も過ぎ、冬の始まり。

凍える零下の森の中、少年は"ソレ"と相対していた。


ガルル...


破壊された馬車の残骸を挟んだ向こう側。

鋭く研がれた双刃を携え、不気味な様相をした猛獣が睨む。


「...っ」


...空気が重い。

身体が呼吸できないと錯覚し、自然な呼吸ができない。


メリアの時の明確な殺意とは違う、獲物を狩る捕食者の気配。


睨まれているだけで、身体が痺れたように言うことを聞かない。

まさに、蛇に睨まれた蛙...


(どう動けば...?)


グルルル...



...フッ───



(!!)


消えた?

...いや、違う。


「...背後!?」


瞬きするくらいの一瞬。

正面に居たはずの"獣"はリーゼルの視線を振り切り、その鋭い刃を振りかざす。


それが振り下ろされる寸前、リーゼルは気配を感じ、携帯していた短剣を即座に抜いた。


キシャッッ...!!


「くっ...」


なんて重さだ...

去なしたはずのに、腕全体に痺れるような衝撃が伝わってくる。


グワッ!


「なっ...!?」



バアァァン!!!


ドゴォォォ...



「ヴッ、ゴホッ...」


山勘で防殼を集中させといてよかった...

あと少しでも発動が遅かったら、肋骨が数本逝ってたな。


でも、まさか尻尾で攻撃してくるとは...

(しかも、めちゃくちゃ強い)

流石に獣型なだけある。



...しかし、コイツが最低ラインなのか?

にしては強すぎる。


神々とは何だ?

俺が抗おうとしているモノとは一体...



...いや、今はコイツに集中するべきだな。


さっきの強襲や今の背後からの攻撃で何となくコイツの特性は掴めた。

...が、同時に、厄介な純粋パワータイプだということも分かった。


魔力攻撃なら幾分か感知しやすかったのだが、物理だとそうはいかない。

魔力は予備動作で反応できるが、経験や勘がものを言う。


俺は、そういうのを未来視に頼ってきたせいで、お世辞にも勘が鋭いとは言えない。

剣術も人並みだから、防御面での不安が残る。


加えて、俺の得物は短剣。

そこそこ良い値だったが、コイツの皮膚を貫ける程の長さも耐久もあるとは思えない。

さっき去なした時、刃が少し欠けたのを感じたからな。


そんなことから、コイツの攻撃を真っ向から受けるのはあまり現実的じゃない。

去なさず、極力回避に専念した方が良さそうだ。


「ふぅ...」


ちょっと目眩がするが、まだ十分に動き回れる。

もし攻撃を受けても、数回なら耐えられるはずだ。


グォッ...


(...来る!)


...バァァン!...ダアァァン!!


スパァッッ...!!


大地を揺らす尾撃と、風を切るような翼撃。

その双方を交えた怒涛の連撃には、獲物に反撃の余地を与えないという、猟獣(ハンター)としての誇りが垣間見える。


実際、リーゼルは回避に精一杯で、攻撃をする余裕なんて殆どなかった。


ここまで、リーゼルは隙を見て何度か攻撃しようと試みたが、人には到底出来ないような動きで尽く防がれてしまう。

そしていざ攻撃を当てても、鱗が硬すぎて逆に刃が負けてしまうのだ。


「はぁ、はぁ...」


...やっぱりダメか。

剣での攻撃は、リスクの割にリターンが無さすぎる。


ここまでは、防殼に俺の操作できる殆どの魔力を割いていたが...

無理やりでも、攻撃を差し込まなければ殺される。


幸い、周囲は木々に囲まれている。


"魔法は周囲の環境をも掌握する"


これはアルテさんから教わった事だ。

曰く、"極限まで無駄を減らせ"と。


俺の得意とする"植物系統(ラグド)"の魔法は、0から構築するより、環境を利用した方が断然能率がいい。


加えてこの場所では...



ズズゥゥ...



(圧倒的な手数を得られる...!)


リーゼルが左手を横に伸ばし、意識を集中させる。(集中させるとは言っても、獣に攻撃する隙を与えない程の一瞬であった)

すると、地面から数十本の太い"根"が生え、リーゼルを守るように周囲で揺らめき始めた。


グルル...


(流石に警戒されるか...)


なら、こっちから仕掛けるまで!


サッ...


サァァァ...!!


リーゼルが腕を振り切ると、揺らめいていた"根"が一斉に伸び始め、一直線に獣へ向かう。


獣は、襲い来る"根"を次々と断ち切る。

だが、絶え間なく浴びせられる猛攻に、次第に押されつつあった。


幾つかの"根"が獣の四肢に巻き付き、少しずつ行動を制限していく。

それらが切られても、また次の"根"が獣を襲う。


「くっ...」


流石に押し切れないか...

足止めとしては十分だが、どうしても決め手に欠ける。


そこをどうにかしないと...


バチィィ!!


...フッ───


「あっ」


不意に獣が大きくもがき、絡みついた根を散らす。

獣はこの気を逃さんと背後へ退き、白い闇の中へと消えた。


この森は決して遮蔽物が多い訳では無い。

だが、獣の白銀のような鱗が雪の保護色となり、リーゼルが見失う程には景色と同化していた。


(見失った...)


...だが、次の行動は大体予測できる。


「"植物系統"...」


リーゼルがそう唱えた瞬間、周囲の"空気"が揺らめく。

地面は所々迫り上がり、リーゼルは、僅かな気配も逃すまいと深く集中する。



...ザザッ!



獣が姿を暗ませてから約5秒。

リーゼルの背後にてその姿を現した。


獣は、研ぎ澄まされた"刃"を真っ直ぐ振りかざす。

その"刃"がリーゼルの首に届くまで僅か0.02秒。


...だが、既にリーゼルは"終えて"いた。



「..."穿根(レーメレス)"!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ