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廻生のアリア  作者: jurabisu
第三章
92/107

第92話 8歳、フランデモラの大地にて

「う゛っ...」


頭がズキズキする。

目が痒い。


何が起きた?

アルテさんは?

ここは、どこだ?


まだ朧気な意識の中、俺は周囲を見渡す。


針葉樹林。

凍った湖。

毛深い鹿...


ふむ。

少なくとも俺の知る場所ではないな。


ただ、植生は似てるからタブラからそれほど遠いところでも無さそうだ。


(にしても、本当に何が...)



ッ────



「う゛ッ!?頭が...割れる...?」


突如、身悶えるような激痛がリーゼルを襲う。

リーゼルは膝をつき頭を抑えるが、痛みは一向に引く気配を見せない。


...それから十数分。

やっと痛みが消え、リーゼルは平静を取り戻した。


「...ここが、フランデモラ?」


...分かる。


知らないハズなのに。

何故か、ここがフランデモラだと確信できる。


変な感じだ。


《...れ》


(ん?...今、何か聞こえて...)


《...瞑れ》


(瞑れ?...こうか?)


俺は謎の声に従い目を瞑る。


当然、何も見えなくなる(瞼の裏以外)。

...そのはずだった。


オォォォ...!


「...う゛っ!?」


目を瞑った次の瞬間。

何かが脳に流れ込んでくるような感覚と、脳を揺らされるような不快感が襲う。


突然の不快感。

俺はそれに耐えられず吐き気を催した。


「ォエ゛ェ゛...」


歪む視界。

白輝の世界。


近くの木に寄り掛かるが、もはや寄り掛かり続ける気力もない。


(...)


...バタッ


間もなくしてリーゼルが気絶する。


冷たい空気と、そぼ降る雪。

だが、雪はリーゼルに積もらない。


艶やかな熱気がリーゼルを包み、落ちる雪を次第に溶かす。


まるで、暖かな母の抱擁のように...





───ガタン!...


「んぁ?」


揺れてる...

さっきの場所じゃない、のか?


「□□_□□□□□□□□?」

「□□□□」


(知らない言葉...)


会話が聞こえる。

声は2人分。

多分、どちらも女性。


「?...□□_□□□□!」


あっ、見られてる。

なんか聞かれてる?みたいだけど...肝心の内容が分からない。


とりあえず、適当に返しとくか。


「あの...貴女は?」

「□□□□!」

「...□□□」

「?」

「□□□□□□?」

「□□_□□□」


怒涛の異言語に圧倒されたが、どうやら、俺が異言語を理解してないことに気付いてくれたみたいだ。


「...えー、アタシはリビア。で、何故あんな場所に?」

「えっと、僕は...」

「リーゼル、だろ?先生から聞いてる」


(...俺の名前)

それに、先生?


俺はその女性...もとい、リビアの隣に座るもう一人の女性を見る。

その女性はフードを被っているが、誰かの面影を感じた。


(アルテさん?...いや、違う)


アルテさんは死んだから...

セレネか。


...ん?


アルテさんは死んだ?

何故分かる?

まだ死んだとは限らない、はず...


はず、なのに...

そう言い切れる自信がある。


まさか、この"知らないの記憶"のせいなのか?


この記憶にある「アルテさんが全てを俺に託して散った」というのは事実なのか?

それも、「生き長らえることが出来た上で」というのも?


「...おい!」

「あっ...はい」

「お前、なんで泣いてんだ?」

「えっ...」


そう言われ、俺は目元を拭う。

そうして拭った手には、確かに水滴が染みていた。


「す、すみません」

「...聞かせろ」

「えっ?」

「お前の話を聞かせろ。知ってるんだろ?アル姉に何があった?」


アルテさんを知っている...?

信用してもいいのか?


「...私からも頼む」


この声...やはりセレネか。

"記憶"が正しければ、アルテさんの姉ということになる。

それなら、信用しても良さそうだ。


「分かりました。僕も、あまり詳しい事は分からないんですが...」


俺は"記憶"を手繰り寄せ、2人にアルテさんの事を話す。

終始2人の表情は見えなかったが、その背中からは悲しみが伝わってきた。


「...すみません」

「ん、なに?」

「アルテさんが亡くなったのは、僕が弱いせいなんです。だから...」

「私はアルテの選択を疑わない。アルテが君に託すと決めたなら、私もその決定に従う」


「...僕を恨まないんですか?」


「んなもん労力の無駄だろ?まぁ、アル姉を失ったのはちと痛いがな」

「だから、恨みはないけど君にはアルテの後釜として働いてもらう。異論は認めない」

「...という訳で、よろしくな、新入り!」

「は、はい...」



...フランデモラのとある森林。

ガタガタと揺れる馬車の上、リーゼルは叛逆者の仲間入りを果たしたのであった。

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