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廻生のアリア  作者: jurabisu
第三章
91/107

第91話 砂漠の鮫

「はぁぁぁぁ!!」


ガッッ!!



...ドオォォォン!!!




...ダームアレン大陸、ヘローム砂海───


暮れの砂地。

空気を震わすような轟音と、地面を揺らすような落下の衝撃が広がる。


微細な砂粒は流砂となり、大地に落ちた天使を飲み込んでゆく。


「ハァ...ハァ...」

「お疲れ様。今回は流石に疲れたね」

「あぁ。もう1歩も動けねぇ」


巨大な亡骸の上。

女が2人、会話する。


一人は亡骸に剣を突き立て、一人は翼をはためかせる。


大地を照らす夕日は地平線に差し掛かり、空を赤く染めあげ始めた。


「...なぁ」

「ん?」

「異常...だよな?」

「うん」

「コイツも、前のアイツも...明らかに、今までのよりオオモノだ。一体、何が起きてるんだろうな?」

「私に聞かないでよ」

「しょうがねぇだろ?先生はアル姉に係っきりだし。お前も、たまにはアタシの話し相手になりな」

「え〜...」


いかにも面倒臭いという反応を見せながらも、翼の女は剣の女の横に腰掛ける。


「...たしか、終戦から600年経つよな?お前の歳もそんぐらいだと記憶してる。違うか?」

「ううん。合ってる」

「なら、お前は知ってるんだよな?歴史から失われた600年前の大戦...人と神々の戦争の事」

「うん」

「だったら教えてくれ。...その時代、世界に何が起きたんだ...?」


「..."天は滅浄の光に覆われ、地は劫火に焼かれる。楽園の使徒等は智恵を忌み、数多の魂が輪廻に回帰する"」


「なんだそれ」

「戦後すぐ、情報統制される前の詩人の歌。当時の状況をよく表してると思う」

「随分スケールが大きいな」

「そうだね。でも、あながち間違ってもない」

「...だけど、そんな事があったのによく人類は生き残ったな」

「"奴ら"の目的はあくまで文明の後退。人類の殲滅じゃない」

「..."神々の遊戯"って感じだな」

「うん、私もそういう認識。でも、戦後から少し状況が変わってる」

「どういうことだ?」

「戦時中、ある魔女が神々の脅威になったの。だから、戦後の情報統制のときに"魔女狩り"が起きた」

「なるほど」

「神々は"叛逆者"を恐れてる。それに、近年は文明の発展が著しい。だから...」

「...近いうちに"聖戦"が起きると?」

「そ。先生も私も、そう睨んでる」

「そうか...そうなったら、※ヴィスコッタもお預けだな」


二人は地平線を見つめる。

太陽は砂の海に沈みかけ、空を夜が覆いかける。

地を揺らめかせる熱は散り、涼しい風がふわりと吹いた。


「...2人とも、緊急事態」

「うおっ!?...って、先生か」

「先生。緊急事態ってアルテお姉ちゃんのこと?」

「アルテは大丈夫。緊急事態は別の事案」

「で、緊急事態ってなんだ?」


「...リーニャが"繭"になった」


「アイツが!?」「リーニャ...!?」

「...で、でもアイツ、まだ"寿命"を迎えるって歳じゃないだろ?」

「多分、襲われたんだと思う」

「でも、リーニャはお姉ちゃんが見てるはず...」


『...あっ』


「まさか...陽動?」

「だから、こんなオオモノが...?」

「分からない。けど、多分そう」

「ど、どうすんだ!?だってリーニャはッ...」

「分かってる!!...だから、2人に話してる」


残り日が地の果てで揺れる。

その広大な砂漠に異様な静けさが訪れた。



ピュ───...



静寂を壊したのは指笛の音だった。

高く広いその音は、遠くからでも良く聞こえる。


「...出発しよう。今すぐ」




...リーゼルが危篤を知る3日前。

"砂漠の鮫"はフォルスティアの大地を踏んだ。

※お酒の名前。ソマイラという糖度が高い薬草の一種が原料。独特の香りと喉に刺さるような辛味が特徴。

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