第89話 8歳、リーゼルのとある一日 4
※後書きの「音声書き起こしログ」は不定期です。
「...っ!」
バサッ...!
(ここは...?)
リーゼルが目を覚ます。
そして、周囲を見回した。
白いシーツのベッド。
アンティーク調の大きなクローゼット。
窓際の机と、そこに置かれた一冊の本。
(本のタイトルは多分..."魔道基礎")
目を覚ましてから僅か数秒であったが、リーゼルは瞬時に、そこが自室の...特にそのベッドの上であることを知った。
「うっ...」
頭痛...?
まぁ、流石に本調子じゃないか。
...っと、気絶してからどれぐらい経ったんだ?
「...朝か」
リーゼルが窓の外を見る。
気絶する前は夕暮れ時だったが、今は朝日が登っていた。
(少なくとも一日は経ってるな...)
それを確認すると、リーゼルは次に身体を動かし始めた。
ベッド上で出来る範囲で、各部位を曲げたり捻ったりする。
...身体は動く。
意識も...まぁ、大丈夫だろう。
「さてと...」
サッ...
リーゼルはベッドを降り、脱がされて近くに置かれていた服を取る。
慣れた手つきでそれらを着こなすと、リーゼルはふっと息をついた。
...ガチャッ
そんな時、ノックも無しにリーゼルの部屋の扉が開かれ、誰かが顔を覗かせた。
「あっ...リーゼル」
「ん?あぁ、お嬢様でしたか。部屋に入る際はノックをしてください」
「ごめん。それで、えっと...もう起きて大丈夫なの?」
「はい♪全然平気ですよ」
俺はエルゼに微笑みかけ、自分が平気なことをアピールしてみる。
上手くできたかは...分からない。
「良かった...。あっ!でも、まだ休んでた方がいいんじゃない?」
「いえ、僕には大事な用があるので、そうもいきません。...あっ、それと、お嬢様には要らぬご心配をお掛けしたようですね。お嬢様に仕える者として不甲斐ない限りです」
「いや、要らぬ心配だなんて...。私だっていつも迷惑かけてるし、お互い様よ」
「...!」
「なによ..."意外"みたいな顔して...」
「ハハッ、すみません。...あっ、では、もうそろそろ失礼しますね」
ガシッ
俺は、さりげなく部屋を出ようとするが、去り際でエルゼに腕を掴まれる。
「どこ行くの?」
「言えません」
「なんで?」
「言えません」
「主人命令でも?」
「旦那様より許可をいただいてます」
「...やっぱり、リーニャさんの...」
「...っ」
俺はエルゼの手を振り払い、エルゼに背を向けて歩き出した。
(...なんだ)
エルゼも聞いたのか。
でも、これはウェインさんやエルゼには関係ない。
だから関わらせる訳にはいかない。
...絶対に。
サッ
俺は袖を直し、前を向く。
向かう先は...
アルテさんの元...!
※音声書き起こしログ〈ロブノ〉
『英雄失格』
────
モンテイア王国、《解放の日》前夜。
ガチャッ
「...ただいま」
「おかえりなさい」
「ん、アルーダは?」
「もう寝たわ。...ねぇ、あなた。本当に決行するつもりなの?」
「あぁ。私はもう、目を背けることが出来ない。...君とアルーダの未来のためにも」
「そう、なのね...」
「本当にすまないと思っている。明日の為、今まで私がどれだけ君に迷惑を掛けたことか」
「なに?急に...」
「最期に、メル。君への感謝と謝罪だよ。言えなくなる前に言っておこうと思ってね」
スッ...
「ムっ...!?」
「そんなの、必要ないわ」
「ぷはっ...分かった」
「...おやすみなさい。あなた」
「...おやすみ。メル」
────
《解放の日》直後。
...ドサッ
「メル!!!」
「...父上?」
「あぁ...嗚呼ァ...」
「父上...母上は?」
「あぁぁぁぁ!!!何故だ!何故、何故ぇ...私じゃ、ないんだ...」




