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廻生のアリア  作者: jurabisu
第二章
85/107

第85話 8歳、後始末 5

「くしゅん!...」

「お嬢様、風邪ですか?」

「んん...そうかも...」

「急に寒くなりましたからね...。今日はもう早退して、体調を整えては?」

「ううん、大丈夫。それよりも、ここ分かる?」

「ん、どこですか?」


夏が過ぎ、だんだんと秋の空気を感じるようになった今日この頃。

俺は、エルゼと一緒に図書館で勉強していた。


対策を講じたあの日よりはや2ヶ月。

俺とメリアの勝負から始まった魔力災害は無事収束し、今は俺たちを含む住民のほとんどが元の生活を送れている。


ただ、前と違うとすれば...


試験的だが、被災した住民を対象にした魔力講座が始まったことだろうか。




...1ヶ月半前───


対策を実行に移してから約半月。

対策が功を奏し、多少の余裕ができてきた頃...


仮設テント群から外れた森の中で、俺とフィドは休憩していた。


「なぁ、リーゼル」

「ん?なんですか」

「お前は、このままで本当に全部収束すると思うか?」

「...フィドもそう思いますか?」

「お前もそう思うか?」

「ええ」

「...だよな。少し前から誰かに見られてる」

「...え?」

「え」


視線?

なにそれ怖い。


でも、もしそれが事実だとすれば、それはそれで何かありそうだな...


でもまぁ、とりあえず、俺の意見も言うべきか。


「...僕はてっきり、今後の被災者の扱いとかアフターケアに関することかと...」

「おう...まぁ、それも問題だな」


...と言うのも、これには今回の対策の内容が関係している。


その対策の内容は、「症状から復帰した(させた)医療関係者を中心に、魔力の概念及びその扱い方を教える」というものだ。


これ自体は今のところ順調なのだが...

先程述べた通り、これは"その後"に問題が生じる可能性を秘めている。


一例を挙げるとするならば、"魔女狩り"。

つまり、迫害がある。


人類は、未知や異物に対する強い好奇心もさることながら、それに対する強い恐怖心も持っている。


それが原因で、それらに対する攻撃が起きてしまうのは歴史を振り返るとよく分かる。


そうした問題を未然に防ぐために、民衆の常識に自然と溶け込むような魔力に対する価値観を植え付けなければならないのだ。


...また、復帰者のアフターケアの問題も見過ごせない。


これは、魔力の適応時に"魔女の覚醒"や魔力症の悪化といった不確定要素が存在するために起きる問題だ。


現状、"魔女の覚醒"についてはアルテさんから少し聞いた話と、リリが覚醒した時の経験くらいしかない。

しかも、アルテさんの話に至っては日常会話みたいなもんだった。


加えて、魔力症については経験もノウハウも無いに等しい。


もしそんな事が起きてしまったら、間違いなく現場は混乱する。

それだけはどうにかして避けたいところだ。


「リーゼル、少し思ったんだがよ...」

「何をですか?」

「いっそのこと、大々的に公表しちまってもいいんじゃねぇか?」

「何を言うかと思えば...そんなことしたら...」

「...考えすぎだ」

「...え?」

「お前、考えすぎだよ」

「あっいや、そんなことは...」

「そんなことある」


急に何を言い出すんだ。

俺が"考えすぎ"?

そんな、先のことまで考えるのはごく当然の事のはずだ...


「な、なんで決めつけるんですか?僕は、考えすぎなんかじゃ...」

「いや、考えすぎだ」

「ですから、なんでフィドがっ...」

「俺たちが、まだ子供だからだよ」

「!?」


...そうだった。

こっちに来てから、周囲から何も言われなかったから忘れていたが...


俺は、まだ子供だ。


俺の行動は、まだ年齢に見合っていなかったのか...?


勘づかれた、のか?



ジワッ...


リーゼルが冷や汗を流す。

その表情からは緊張が伝わる。


「...俺は貴族の息子だからよ、政治の話とかよく聞いてたんだ。でも、大人はみんな自分の事ばっかしでさ。先の事とか、まるで考えてない」

「えっと...」

「でも、お前は違う。お前はいつも先の事も考えてる。だからこそ俺は、その...心配してんだ」

「フィド...」

「だから、たまにはいいんじゃねぇか?目の前のことだけ考えても。お前には、その権利があるはずだ」


...バレて、ない?

ひとまずは安心してもいいのか?


でも、これからはもう少し気を付けた方が良さそうだ...


「そ、そうですね...もう少し、物事を前向きに考えられるようにします」

「...おぅ、それがいい。...あ、手合わせしねぇか?最近してなかっただろ?」

「...ん?あぁ、いいですよ」

「よっしゃ!先に言っとくが、前の俺と同じだと思って侮るなよ?」

「フィドこそ、僕が久しぶりだからって侮らないでくださいね」

「侮るわけねぇよ。ほら、行こうぜ」


フィドは立ち上がると、どこからともなく木刀を取り出し、俺に手を差し伸べた。


(考えすぎ、か...)


たまには、運命に身を任せるのもいいかもしれないな。


サッ...


そんなことを考えながら、俺はフィドの手をとる。


拭いきれない、一抹の不安を抱えながら...

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