第83話 8歳、後始末 3
「クソッ!...こんなんじゃ、いつまで経っても収束しねぇ...一体どうすりゃ...」
...タッ
「...お困りのようですね」
「!...この声...リーゼルか!?」
「おはようございます。フィド」
「無事なのか?」
「ええ、まぁ」
「...よかった。俺たちだけじゃ分かることが少なくてよ...お前の助言が欲しかったところなんだ」
フィドが、俺の肩に手を置く。
そんなフィドの顔を見てみると、気が休まらない、という感じがよく伝わってきた。
「フィド」
「ん?なんだ?」
「少し、お茶でも飲みながら話しませんか?僕も今の状況を知りたいので」
「...分かった。こっちだ」
フィドが仕切りで囲われた部屋に入り、俺を招く。
そこは机や椅子などが置かれた簡素な部屋であり、中ではリリがお茶(ここでは紅茶の一種)を淹れていた。
「はぁ...。ん、お前も座れよ」
フィドは椅子に深く座り大きく一息つき、俺にも座るよう促した。
部屋にはエルゼも居たが、座るところが無かったからか、机に置かれた資料などを見始めた。
リリがお茶の入ったカップを机に置くと、フィドはそれを手に取り、一口で飲み干した。
「...それで、俺はどこから話せばいいんだ?」
「そうですね...。とりあえず、2日前、僕と一緒に倒れていた女性のことを知りたいですね」
「一緒に...?あぁ、そういえば居たな」
「その方は今はどこに?」
「いや、俺が駆けつけた時近くに男がいてよ。魔力に侵されながら女を運ぼうとしてたから、お前やエルゼを運ぶついでに病院に送ってやったんだ。それから見てねぇから、今の居場所は分かんねぇ」
「そうですか...」
少なくとも、この場所には居なさそうだな。
別に、あの魔女により事態の終息に繋がるわけではないが、俺を敵視する理由は是非知っておきたい。
あの"夢"のこととか、"教会"との関係性も聞いておきたいしな。
「...その女がどうかしたのか?」
「いえ、個人的な用事があったもので」
「そっか...なら、俺からも一ついいか?」
「ん、構いませんよ」
「これからの対策について...と、思ったんだが...」
フィドが話を中断し切り替えようとする。
多分、話の内容は...
「...なぁ、リーゼル」
フィドが真っ直ぐと俺の方...俺の後ろを指差す。
「そいつ、誰だ?」
そう言われチラっと後ろを見ると、背後に女性が立っていた。
その女性はムスッとした顔で、俺をジッと見つめる。
「2日ぶり、ですね。...メリアさん」
「...!?」
おっと、当たりか。
まさかとは思ったが...
この女性が、あの"夢"で出会った少女本人だったとはな...
益々あの"夢"のことが気になってきた。
"能力共鳴現象"と似た現象か?
「なぜ私の名を知っているの...?」
「成り行き、ですかね。...そんなことより貴女、こんな所になんの用ですか?」
メリアは一瞬怪訝な顔をしたが、すぐにリーゼルたちから目を逸らし、申し訳なさそうな顔をする。
「...従者に聞いたわ。この事態は私が引き起こしてしまったのでしょう?だから...」
「..."罪滅ぼし"ですか...」
メリアが小さく頷く。
「まさか、テメェがっ...!?」
「フィド!今は僕が話してます。静かにしててください」
「...っ」
フィドが自身の唇を噛む。
まぁ、そりゃそうか。
フィドはこんなんだが、理不尽や不条理を人一倍嫌っている。
今回は規模が規模だからな...
その元凶が目の前に居たら、気が立ってしまうのは当然だろう。
「...それで?貴女に何ができるんですか?」
「...分からない」
「分からない?よくそれでここに来ましたね...」
メリアが俯き、ばつが悪そうな顔をする。
「...まぁいいです。今はこっちも人手が足りませんから」
「おい!お前何勝手に...」
「人手が足りてないのは事実でしょう!?使えるものは使わないと、いつまで経っても状況は変わりませんよ!」
「っ...」
フィドが黙る。
「...と、まぁ貴女にもこれから手伝ってもらうわけですが...。その前に一つ、貴女に聞きたいことがあります」
「...なに?」
「...なぜ、僕を敵視したんですか?」
「っ...それは...」
「貴女ですよね?"あの路地裏"で僕を襲ってきたのは」
俺が聞くと、メリアは片手でもう片方の腕を触る。
「...貴方が"教会"の関係者だと勘違いしていて...ごめんなさい」
「勘違いって...僕が"地下"に入る所でも見たんですか?」
「そうよ」
「それで、僕の疑いは晴れましたか?」
「...ええ」
やっぱり、この人も"教会"関係か...
...じゃあ、俺がメリアさんと戦ってた時に投げ込まれたあのペンダントって、まさか...ラーミス教の関係者が?
まるで、あれが発端で魔女が暴走するのを知っているようだったが...
...もしかして、"魔法使い"がいるのか?
まぁなんにせよ、追ってみる必要がありそうだな...
「...分かりました。本当なら、もっと貴女のことを聞き出したいところですが...一旦後回しにします」
...パン!
俺は1回手を叩き、皆に切り替えるよう促す。
「...さて、今後の対策について話し合いましょうか?」
...それから2時間近くの協議の末、これからの対策が決定した。




