第82話 8歳、後始末 2
...タブラ郊外、臨時仮設病院・仮設病床テント郡───
タッタッタッ...
ガラガラ...
テントが所狭しと設営された広場で、医師や看護師が忙しく働く。
テントの隙間から見える患者達には目立った外傷はなく、うなされたり、昏睡状態に陥っている人がほとんどであった。
「これは酷いな...」
俺は屋敷に来た遣いの人に案内され、そこで働く人々に道を譲りながら、奥へ奥へと進む。
道中いくつかのテントにお邪魔したが、どこも魔力濃度が高く、長く居れたもんじゃなかった。
医者じゃまともな処置も取れないし、現状維持もままならない。
患者減らず増える一方で医療現場も崩壊...
...地獄だな。
タッタッ...タ
「...着きましたよ。ここが現場です」
俺が辿り着いたのは、一際大きな白色のテント。
そのテントの入り口の脇には看板が立て掛けてあり、"臨時仮設病院"と書かれていた。
「私は別の用事があるのでこれで失礼しますね。何か用がおありでしたら、対策本部か職員の休憩室をお尋ねください」
遣いの人はリーゼルに軽く会釈すると、そそくさと自分の持ち場に戻っていった。
「...さて」
俺は軽くテント内を見渡し、少し歩き回る。
タッタッタッ...
(...なるほど)
俺が思っていたより、事態は深刻みたいだな。
...タッ
...にしても、高濃度の魔力に晒され続けると肉体はこれ程変形するのか...
リーゼルがベッドに寝かされている人々を眺める。
そのベッドに寝かされていたのは、身体の一部が欠損したり膨張したりしている人々であった。
「ん〜」
(...これ、治せるのか?)
俺の魔力操作なら魔力を安定させることはできるけど、欠損部位の再生まではできない。
それに、魔力の安定にはその過程で自身が魔力に※侵食される可能性があるから、「全員助けてやる!」というのは非現実的だ。(命懸けですればワンチャンいける)
加えて時間も労力もかかるから、俺(術者)への負担がデカ過ぎる。
どうしたもんかなぁ...
「んー...」
「...あ!リーゼルじゃない♪」
俺が悩んでいると、どこからか聞き慣れた声が聞こえてきた。
その声のする方を見れば、よく見知った少女が俺に手を振っていた。
「お嬢様?なぜここに...?」
「お手伝いしてるのよ。ほら、みんな魔力の使い方知らないでしょ?」
「だからといってお嬢様が出なくても...」
「ダメよ!領主の娘として、街の人たちの事を第一考えて行動しないといけないんだから」
「...!」
「なによ..."意外"みたいな顔して...」
「いえ、まさかお嬢様からそんな言葉が出るとは思わなかったので...」
「私をなんだと思ってるの?」
「ま、まぁ...今はそんなことより、情報の共有が先です」
「...分かった。でも私、あまり詳しいことは分からないよ?」
そうしてエルゼは、ここ二日間のことを話し始めた。
...数分後───
「...っていう感じなんだけど...どう?役に立ちそう?」
(...なるほど)
つまり、エルゼの話をまとめると...
エルゼも"あれ"の影響で気絶していて目覚めたのは昨日。
目覚めた時には既に救護活動が行われていた。
この救護活動の指揮はフィドやリリが中心になって執っていて、被災者の扱い方は以下の通り。
1,直接的な接触は避ける。
2,重症患者の周囲2mには極力近づかない。
現在はフィドやリリ、そしてエルゼの"魔法使い"(仮称)が軽症患者を中心に魔力の安定を図っている。
...と、こんな感じだ。
まぁ、事前情報としては十分だな。
それを踏まえて、これからどうするか、だが...
「...お嬢様、フィドが今どこに居るか分かりますか?」
「え?...多分、対策本部だと思うけど...」
「分かりました」
...タッタッ
「えっ、ちょっ...私も行くわ!」
リーゼルが足早に歩き出す。
...事態はリーゼルが思っていた以上に、急を要していた。




