第8話 3歳、異世界 6
「...ところでリーゼルよ」
「はい?なんですか?」
道を歩いていると、前を歩くロブノ爺さんに話しかけられる。
さっきまで酒を飲みながら歩いていたのに、一体何の用だろうか?
「お主、本当に三歳なのか?」
「...え?突然なんですか...?」
「いや、儂にもお主くらいの曾孫がおるんじゃが、お主ほど知性を感じんでのぉ...」
「はあ...それって僕が変だって言っているんですか?」
「うむ、そうなるな」
...そんな事、考えたこともなかった...
言われてみれば、俺は少々異質かもしれないな。
普通、三歳でこんなに喋る子供なんているわけない。
それがいくら異世界であっても、だ。
(やべぇ、ちょっと不審がられてる?)
「ハハッ...ま、まぁ、十人十色って言うじゃないですか...」
「ふむ、そうかもしれんのぉ...」
乗り切ったか?
こんなところで変な奴認定されたらたまったもんじゃないからな...
そんな事で人生詰んだら笑えない。
「...ほれリーゼルよ。ここが儂の家じゃ」
あれから数分歩き、俺はロブノ爺さんの家に到着した。
この村、やけに広いからお隣さんが数百メートル離れてるなんてざらにある。
移動手段が乏しいから徒歩を強要されるのは、ちょっとしんどいな...
(さて、そんなこんなで爺さんの家にきたわけだが...)
俺はロブノ爺さんの家を観察する。
(ふむ...)
見た感じ、造りや大きさは俺の家と変わらないな。
違いがあるとすれば、もう一軒建物が建っていることだろう。
そのもう一軒の建物には看板があり、でかでかと「ラムッサ(日本語で道場)」と書かれている。
(道場ってなんの道場だよ...)
書かれているのがそれだけだから、何を教えているのか分からない。
一番肝心なところだと思うのだが...
タッタッタッ
そんな事を考えながら、俺は道場の方に向かう。
ガシッ!
「お主はこっちじゃ」
(え?道場じゃないの?)
俺は爺さんに襟を掴まれ、引き摺られながら爺さんの家に連れてかれる。
「...ほい、これ」
「服?」
「うむ、道着じゃよ。何事も形からじゃからな」
爺さんの家の中で渡されたのは、一着の白い道着だった。
手に持ってみると、ずっしりと重たい。
サイズはパッと見、俺にピッタリのようだ。
(...ちょっと動きづらいな)
着てみると体が重い。
だが、サイズはやはりピッタリだ。
でも、なんでさっき来たばかりなのにピッタリのサイズが用意されてるんだろう...?
「あの、ロブノさん...道場じゃないんですか?」
「道場?お主には早いわ!...それと、儂のことは師匠と呼びなさい」
「はい...わかりました、ロブ...」
じぃー
「...師匠」
「うん、うん」
俺が"師匠"と呼ぶと爺さんの顔が明るくなる。
普段呼ばれてないのかな...
「それで、僕は何をすれば...」
「まずは15回」
「...え?何が...」
「む?分からぬか?体作りじゃよ。まずは腹筋と腕立てを15回ずつ。ランニングを500mからじゃな」
「えっ...」
こうして、俺の武術を会得するための体づくりの日々が始まったのだった。
「...あら、今日もやってるの?」
「くっ...はい!自主練はするだけ得ですから...」
俺は腕立てしながら応える。
...俺が爺さんと会ってから1年半年...
またまたまた冬が訪れた。(時が経つのは早いな...)
冬場は寒いから筋トレはちょうどいい。
暇つぶしもできるし一石二鳥だな...
一つ問題があるとしたら、外に出れないことかな?
「...ふうぅ」
俺は15回の腕立ての1セット目を終える。
初めの頃は2回やるだけでバテてたのに、最近では10回くらいはできるようになってきた。
こういうちょっとした事でも、成長を感じると楽しくなってくるな。
俺は水を飲みながら休憩する。
ふと目に入った俺の腕は前よりも筋肉がつき、少し太くなっていた。
でも、まだまだ足りない。
もっと鍛えて、爺さんの"あれ"を使えるようになりたい。
それが俺の今の目標だ。
「あっ、そうだリーゼル」
「ん?なんですか?」
「お祭り、行きたい?」




