第78話 8歳、マ女とヒトガタ 2
「ん...んぁ?」
ここは...何処だ?
「う”っ...」
俺...何してたんだっけ?
...
そうだ。
俺はあの女と戦って、それから...
どうなったんだ?
〈ぐすっ、ぐすっ...〉
(...泣き声?)
誰か...居るのか?
タッタッ...タ
「ぐすっ、ぐすっ...」
少し離れた場所に、一人少女が座り込む。
歳は8つぐらいだろうか?
「あの...大丈夫ですか?」
「ん...?おじさん、誰?」
「お、おじ?」
俺、まだ8歳なんだけど...
(ん?)
そういえば、いつもより視線が高い気が...
サッ
俺は自分の顔を触る。
(あ、腕にホクロ...)
"リーゼル"の身体にはこんなホクロは無かったはず...
...まさか、前世の身体?
「お母さんが、"話しかけてくる知らない男の人は皆おじさんなんだ"って言ってたから...」
「ん、ん〜...ま、まぁいいです。僕はリー...■■■。...失礼ですが、名前をお聞きしても?」
「...メリア」
「ではメリアさん。貴女は、どこから来たんですか?」
俺がそう質問すると、メリアは首を横に振り、続けてこう話した。
「い、妹を捜してて...。あ、あの!私の妹を見かけませんでしたか?」
「妹?ん〜、見てませんね...」
「そう、ですか...」
メリアが残念そうな顔をする。
だが、困ったな...
俺もこの子も、どこから来たのか分からないとなると、"ここ"から出る手掛かりが得られない。
そもそも思い返してみれば、俺はいつの間にか"ここ"に居た。
多分、メリアもそうなのだろう。
だとすれば、"ここ"は魔女の魔眼によるものと考えるのが妥当だろうか?
じゃあ誰の?
あの女?いや、別の魔女か?
ん〜...
...いや待てよ?
この子が魔女って線もあるよな?
少し、素性を探ってみるか...
「...あの、メリアさん。妹さんのこと、お聞きしてもいいですか?」
「は、はい...私の妹、ティナって名前で、今2歳で...」
ティナ?
今、たしかにそう言ったよな?
「メリアさん」
「はい?」
「...まさか、貴女の姓は"カーマイヤー"では?」
「え?あ、はい...なんで、分かったんですか...?」
やっぱりか。
...ん?
いや、待てよ?
メリアはさっき、ティナは妹で今は2歳だと言ったよな?
だが、俺が知っているティナは、まだ生きていれば10歳。
あの"地下"で見つけた時でも9歳だ。
なぜ年齢が合わないんだ?
同姓同名の別人?
...でも、そんな偶然有り得るのか?
「知り合いから"ティナ"という人の話を聞いたことがあったので、もしやと思ったのですが...。まさか、貴女の妹さんだったとは...」
「あのっ!妹は、妹は無事なんですか!?」
「...はい。元気だ、と聞いています」
「良かったぁ...」
まぁ、嘘だけど...
俺が見つけた時には死にかけ?だった。
なんなら、トドメ刺したの俺だし...
さすがに子供相手に「死んだ」とか「殺した」とは言えないよなぁ...
(...でも)
安堵の表情を浮かべるメリアを見た時、どこか心苦しくなった。
...体感20分後―――
...
暇だな。
何もせずに時間を過ごすのも、なかなか苦痛だ。
「...メリアさん」
「はい...?」
「少し話をしませんか?」
「話?」
「ここで出会ったのも、きっと何かの縁です。せっかくなのでお互いに身の上話でもしたらどうかと思ったのですが...どうです?」
俺が問いかけるとメリアは少し考えた後、首を縦に振る。
「では、僕から...」
俺は自分のことを、脚色しながらメリアに話す。
主に、出身地や年齢。
とある貴族の令嬢に仕えていることと仕えるようになった経緯を簡単に話した。
貴族の令嬢に仕えていると話した時、
主人はどんな人か?
どんな暮らしをしているのか?
などを聞かれたが、仕えるようになった経緯については特に何も聞かれなかった。
「...と、まぁこんな感じです。ほら、次は貴女の番ですよ」
「は、はい...えっと...」
こうして、メリアは話し始めた。
「...私、本名はメリエナシアって言います。それでっ、もうすぐ10歳で、お父さんがお店してて...。...今は、妹を捜してます」
メリアの表情が暗くなる。
「...理由を聞いても?」
「...誘拐されたんです。お母さんと妹...。ちょうど私の誕生日で、私がお父さんと※ラプアを狩りに行った間に...」
※フォルスティア大陸の北方に生息する体長40cmほどの鳥類。
フォーノード王国の隣国、フランデモラ王国領内の一部地域では9、12、15歳の誕生日に対応した動物を狩って食べる習慣があり、ラプアはそれの9歳時の獲物である。
「半年くらい前にお母さんは見つかったんですけど...妹は、まだ行方不明で...」
「それで捜している、と?」
「...はい」
「手掛りは?」
「...妹と一緒に無くなったペンダント」
「だけ、ですか?」
「...あと、お母さんの背中にあった"模様"もだと思います」
「模様...?」
「あ、えっと...こんなのです」
メリアはポケットから折り畳まれた1枚の紙切れを取り出す。
彼女はそれを広げ、俺に見せる。
それは、円と目が合わさったようなデザインだった。
「...これ、どこかで...」
「知ってるんですか!?」
「ま、まぁ...少し心当たりがあるだけですが...」
「あのっ!それ、教え...んぐっ!?」
...バタッ
突然、メリアが倒れ込む。
「っ!?メリアさ――――」
ツーーーーーッ......!




