第72話 8歳、棘の刃 4
『...』
(なかなか来ないな...)
まさか、"樹鎧"のせいか?
だとしたら、魔法は知らないと見て良さそうだ。
相手は俺の魔法を知らない以上、下手に動くのはリスクがある。
それは俺にとっても同じだが...
俺の場合、コイツの能力さえ解明出来れば、対策しながら手数で押せる。
手段が多いのが魔法の利点だからな。
でも、このままじゃ埒が明かない...
(俺から動くか...)
ピクッ...
俺は意味ありげに右手をビクつかせる。
すると魔女は警戒し、俺の手元に視線を向ける。
シュルッ...
「っ!?」
魔女の足に根が絡みつく。
魔女は驚き、リーゼルから視線を外し自身の足を見る。
それは一瞬の出来事だったが、俺は見逃さない。
(引っかかった!)
タッ!
俺は一気に距離を詰め、魔女の目の前で防御を捨てた強撃の構えをとる。
魔女はそれに気付き引こうとするが、足に根が絡まって引けない。
焦った魔女は守りの構えをとり、全身に力を入れた。
(残念!俺の狙いは...)
ダン!
俺の拳は魔女に当たることなく、地面を叩く。
だが、これも作戦のうちだ。
「後方注意...」
「っ...!?」
魔女の注意が背後に向く。
「おっと、失礼...」
シュルッ!!
「"拘束"注意、でした」
その瞬間、魔女の足元から無数の根や蔓が伸び、魔女の手足を縛り拘束する。
「くっ...」
バタッ...
拘束されてバランスを崩した魔女が、地面に倒れたる。
その時、最後の抵抗と言わんばかりに顔を隠そうとした。
「ふぅ...」
俺は立ち上がり、魔女を見下ろす。
「...さて、何から聞きましょうか?」
「...」
とりあえず、顔を拝見しておくか...
サッ...
俺は魔女のフードをとる。
「ん?」
仮面?
こんなものも着けてたのか...
俺はそれも外し、その襲撃者の顔を拝見する。
やっぱり女だったか...
髪はセミロングくらい。
顔立ちは整っていて、目つきが鋭い。
歳は...16、7くらいだろうか?
目には紋様が...魔眼が浮き出ていた。
「...それで?貴女の名前は...?」
「...」
「僕を狙った理由は?」
「...」
「貴女の目的は?」
「...喋るわけ、ないでしょ...!」
ブォッ...!
「っ!?」
(拘束が解けた...!?)
サッ...
シュッ!!
女が起き上がり、俺に向かって剣を振る。
俺は身を反り、飛んできた刃を躱した。
(危っ...)
...タッ
「撤退っ...」
「逃がしませんよ?」
「!?」
俺は逃げようとした女の腕を掴む。
「執拗い!」
シュッ!シュッ!
...シャッ!!
女は俺の手を振り払おうと、空いた方の手に握っていた剣を振る。
俺は手を離さずに"それ"を避けると、女の腕を思い切り捻った。
「痛っ!?」
カラン...!
女が剣を落とす。
それを見た俺は女の腕を離し、蔓でその剣を手元に寄せる。
「くっ...」
サッ...!
女はその剣を惜しそうに見るが、すぐにその場を去った。
(あれ?逃げた...)
まだ戦うつもりでいたんだけどな...
まぁ、逃げたんなら仕方ない。
「...あ」
"コレ"、どうしよう...?
俺は女から奪った剣を見る。
...コレ、相当な上物みたいだな。
装飾も細かいし、だいぶ高価なものだろう。
それと、よく手入れされている。
...
俺の剣は塵になったし、しばらく俺が預かっておくか...
ザザザ...
俺はその剣の刃に蔓を巻き付け、腰のベルトに挿す。
「...はぁ...」
なんか凄い疲れたな...
今日の所は、帰ってウェインさんに報告しよう...
タッタッタッ...
カァカァ...
ハウル(烏)の鳴き声が街に響く。
(あの女...)
また近いうちに会える気がする。
まぁ、気がするだけだけど。
...そういえば、俺の周りには魔女が多い。
魔女同士は互いに引かれ合うものなのだろうか?
(魔女、か...)
アルテさん...
今、どうしてるんだろ...?
...いつの間にか日は沈みかけ、夕焼けが俺を照らしていた。




