第71話 8歳、棘の刃 3
タッタッタッ...
「ん?君、ここから先は現在立ち入り禁止だ。すまないが引き返してくれ」
「あっ、いえ、僕はウェイン様より命を受け派遣された者です。捜査のために立ち入りを許可していただきたいのですが...」
「領主様より命を...?」
「許可証もありますよ」
リーゼルは1枚の紙を取り出し、兵士に手渡す。
その紙にはリーゼルを捜査員として認める旨の文が書き連ねられ、何かしらの花を象った印鑑が押されていた。
「ふむ...確かに、これは領主様の印鑑だ。承知した。入っても構わない」
「ありがとうございます」
兵士が、現場に入っていく少年の背を見つめる。
「あんな子供がねぇ...。世間は広いなぁ」
タッタッ...タ
「...ん」
(なんだ、これ...)
魔力の残穢...か?
...しかも、この感じ..."ちゃんと扱えてる奴"の残穢だ。
まさか...怪物?
いや、ラーミス教の関係者か?
まぁ、なんにせよ...いち早く調べる必要がありそうだな...
(現場...殺人現場は...)
「ん...」
あれか...
俺の視線の先に"死体"が見える。
そこからは、周囲より遥かに濃い魔力が溢れていた。
...タッ
サッ
俺は"死体"に近づき、身をかがめる。
「ん〜...?これは...死体、なのか?」
俺は目の前にある物体を見つめ、考える。
"そこ"にあるのは、死体というにはあまりにも原型を留めていない...ただの粗挽きのミンチだった。
じぃー...
(...やっぱり、ここからだよなぁ...)
しばらく視てみたが、この辺りで一番魔力が濃いのは、間違いなくこのミンチだ。
...でも、やっぱり信じられない。
これが"人"だったなんて...
...
ウェインさんが俺を寄越した理由がなんとなく分かった気がする。
魔力が視えない一般人じゃ...
この事件は解決できない。
(...俺がやるしかなさそうだな...)
だけど、どうしたものか。
犯人に近づくには手掛かりが少なすぎる...
他の現場も見ておく必要があるな...
「さて...」
ツーッ...
「!?」
その時、突如として脳内にノイズがはしる。
そして、一つの"未来"の映像が流れた。
(来る!!)
シャッ...
キーン!!
「っ!?」
「!」
俺は咄嗟に短剣を抜き、背後から襲いかかってきた剣を弾く。
(重っ...)
肩外れるかと思った...
...まぁ、今はそんなことより...
"コイツ"だな。
俺は襲ってきた人物を見る。
武器は双剣...
顔は、フードで隠れててよく分からない。
パッと見はだいぶ小柄で、性別はおそらく女。
...というかコイツ、多分魔女だ。
さっきから魔力の威圧感が凄い。
それに、コイツが"魔眼持ち"なら、被害者の死体がミンチにされているのも納得がいく。
「貴女、誰ですか?」
「...」
「能力は?」
「...?」
だんまり...
流石に、自身の不利になるようなことはしないか...
だが、能力が分からないうちは下手に動けない。
断片的でもいいから何か情報は...
ピキッ...
「!?」
短剣の刃が...塵に...
これがコイツの能力...?
発生の条件は...
触れた時、か?
シャッ...
"魔女"が剣を構える。
(考えてる暇は無いか...)
...だが、どうする?
武器はもう無い。
戦うなら、魔法を使うしかないが...
俺は魔法だけの戦闘の経験は無い。
そんな状態で、まともな戦闘ができるとは思えない。
...逃げるか?
...
いや、無理だな。
構え方が本気だ。
コイツ、俺を"獲物"から"敵"と見ている。
(やるしかないか...)
サァァ...
俺は、全身に蔓を纏わせる。
名付けるなら"樹鎧"とかかな?
...って、今考えることじゃないか。
今は"コイツ"との戦いに集中しないと...
「スゥゥゥ...」
...ちなみに、"これ"はただの飾りじゃない。
もし、コイツの能力が"触れた対象だけに作用する"なら、少しでも身体を覆っておいたほうがいい。
それに、魔法は出しっぱなしのほうが使い勝手がいいからな。
(...さて...)
どう来る?




