第67話 7歳、魔導学の始まり 2
「そ、それで、私は何をすれば...」
「そうですね...とりあえず、初めは魔力を感じてもらいます」
「感じる...?」
「はい!では早速...」
サッ...
「ひゃっ...」
俺はリリの両手を握る。
「まず目を閉じて、大きく深く呼吸しながら意識を体の内側に向けてください」
「す、すぅ...ふぅ...」
「いい感じですよ、続けてください。...では、今から魔力を流します。もし途中で苦しくなったりしたら、僕の手を振り切ってください」
「は、はい...」
フゥゥ...
リリと一体化したイメージで、微弱な循環を...
...サァァ
「っ!?」
リリが一瞬ビクつく。
この感じだと、上手くいってるみたいだな...
このまま少しずつ流れを強くして、魔力の流れをハッキリ感じるようにしていく...
...サァァァ
「んっ...///」
リリの呼吸が少し乱れる。
それと同時に、握る手の力が少し強くなった気がした。
「お、おいリーゼル...大丈夫なのか?」
「少し、静かにしててください」
「おう...」
...あと、もう一段階か?
ザァァ...!
「ひゃあ!?なんかぁ、入ってぇ...んっ///」
「っ!?...」
サッ
ドサッ...
俺はリリの手を離す。
リリが地面に倒れ、息を荒らげる。
「リリ!?...おい!大丈夫か!?」
フィドがリリに駆け寄り、手を伸ばす。
「フィド!まだ、触れないでください!!」
「なんでだよ!?」
「今、リリさんの中で魔力が渦巻いてます。もし触れれば、魔力がフィドに流れて体が破裂しますよ?」
「くっ...お前は何とかできないのかよ?」
「...外部から、魔力の安定をはかってみます。フィドは離れてください!」
「お、おう」
俺は、横たわるリリに触れる。
(っ!?...思ったより凄いな...)
身体が熱いし震えてる...
しかも、この魔力量...
異常だ。
(...ん?)
まさか...
コォォォォ...!
(チッ...抑えきれねぇか...)
「お、おいリーゼル!本当に大丈夫なのか!?」
「くっ...大丈夫に見えますか!?」
「ん...えっ!?おい、マジかよ!」
フィドが慌てふためく。
「ハァ、ハァ...ん...///はぅぅッ!?」
リリの息が更に荒くなる。
その呼吸が荒くなる度に、放出される魔力は濃く、多くなってゆく。
ッー...
「!?」
...マズイ、来るっ!...
ヒュッ...!
ダン!!
「うぐっ!?」
「リーゼル!!」
その時、突然俺の身体は飛ばされ、運動場の壁に叩きつけられる。
...と同時に、謎の力によって壁に固定されてしまった。
(動けない...)
やっぱ、魔女だったか...
おそらく、"これ"はリリの能力...
効果は...多分"固定"とか"束縛"かな?
シンプルかつ面倒な能力だ。
「お、おい、突然何が起きたんだよ...?リリは苦しそうだし、お前は飛んでいくし...」
「リリさんはイレギュラーだったみたいです...僕の見立てが甘かった...」
「そ、それは分かったけどよ...どうすんだよ?」
どうする?だって?
分からねぇよ。
こんなことになるなんて想定してなかった。
...どうやって抑える?
どうやって...
...
抑える?...
...そうか!出力量を制限できればいいのか!
それならいいものがあった。
「...フィド!」
「なんだ?」
「僕に触れてください!」
「触れる?なんで...」
「早く!」
「おう...」
フィドが俺の胸の中心に触る。
(これなら...)
「...よし」
「もういいのか?」
「はい。ではフィド...」
「なんだ?」
「リリにキスしてください」
「おう...って、え?」
「え?じゃないです。早くキスしてください」
「な、何言ってんだよ!?」
「恥ずかしがってる場合ですか?早くしないと、間に合わなくなりますよ?」
「うぐっ...わかったよ...」
フィドがリリに近づく。
だが、フィドは一向にキスをしない。
よく見ると、フィドは喉を鳴らし緊張しているようだった。
(...早くしてくれ...)
少しずつ喉を絞められている感覚。
俺の意識は飛ぶ寸前だった。
ゴクッ...
「...ふぅ...」
(やるしかねぇのか...)
「...すまん、リリ!」
「っ!?」
フィドがリリの唇にキスする。
一瞬リリの身体が跳ねるが、すぐ力が抜け、気を失った。
サッ...
「はっ...」
(拘束が解けた...?)
それに、魔力が薄くなってる...
フィドがやってくれたのか。
「フィド、助かりました...」
「...」
「...フィド?」
「...」
まだキスしてる...?
サッ
「ぶっ!?」
肩を触ってみると、フィドが吹き出しながら驚く。
「ゴホッ、ゴホッ...な、なにすんだよ...!?」
「ふふっ...唇に、したんですね...」
「悪いかよ...」
「いえ...ただ、どこでもよかったんだけどな、と思っただけです」
「...///」
フィドが頬を赤らめる。
「まぁなんにせよ、助かりました」
俺はフィドに手を差し出す。
「...おう!」
フィドが俺の手を握る。
タッタッ...
「...あれっ?リーゼル...何かあったの?」
「あ、お嬢様。起きたんですか?」
「起きたっていうか、トイ...お花を摘みに...」
「そうですか。まぁ、なんでもないですよ」
「ふ〜ん...あっ!リリ!?」
タッタッ...
エルゼがリリに駆け寄る。
(...あれ?そういえば...)
さっきフィドと握手したとき、魔力の流れを感じたような...
サァァ...
(...!?)
「お嬢様!お待ちください!!」
「...えっ?」
...サッ
「!?」
ドクッ...!!
「...あ」
...この日、午後の授業は休むことにした。




