第6話 1歳、異世界 4
「ん〜、終わったぁ〜...」
リーニャが背伸びをする。
「ママ、お腹空いた...」
「ん?そうね...お昼にしましょうか?」
「うん」
俺はいつもの籠の中のからリーニャに話しかける。
最近は俺が成長したせいか籠が小さく感じる。
少し身を乗り出すと、棚から落っこちそうだ。
さて、昨年俺が生まれてから約1年半が経過したが...
俺は変わらず赤ちゃんしている。
最近は離乳食、もとい重湯を食べている。
ちなみに、言語のほうは結構喋れていると思う。
少なくとも、この世界の一般的な幼児よりは話せているはずだ。
前世の英語の成績は全然ダメだったのだが...
不思議とこの世界の言葉(この国はフォールネ語)は頭の中に入ってくる。
転生特典みたいなものなのだろうか?
「はい、あ〜ん」
ぱくっ
もぐもぐ...
ゴクッ
俺はリーニャから重湯を食べさせてもらう。
(味が薄い...)
というか味が無いな...これ
それと、米(と思われるもの)の芯が残っていて重湯になっていない。
余談だが、リーニャは絶望的に家事が出来ない。
どのくらい出来ないかは...
そのうち分かってもらえるだろう。
...って誰に話してんだろう、俺...
転生の反動で、頭がイカれちまったか?
「んん...」
「あら、眠いの?」
俺は小さく頷く。
幼児の身体だと事ある毎に眠気が襲ってくる。
ご飯食べた後とか、動いた後とか、外に居るだけでも眠くなる。
幼児の身体は活動に制限が多くて少々不便だ。
早く大人になりたいものだな...
...そんなことを考えているうちに、俺はベビーベッドに寝かされる。
チュッ
リーニャが俺の額にキスする。
少し恥ずかしいが、この世界の常識なのだろう。
俺はゆっくりと目を閉じる。
最近、幼児の身体になって、昼寝が気持ちいいことに気がついた。
前世ではゲームやら漫画やらで昼寝をすることはなかったから新しい発見だった。
昼寝の良さに気付けたのは、この世界での収穫だな...
俺は毛布を口元まで引っ張る。
冬場は寒い...
早く春が来ないか、な...
「zzZ...」
「すぅ...すぅ...」
ガタン!
「キャッ!...」
(...!)
俺は突然の落下音で目を覚ます。
ビックリした...
何の音だ?
「イテテ...」
リーニャの声...?
...あーなるほど、そういう事ね...
俺はベビーベッドの柵に掴まりながら立ち上がる。
すると、俺の目線がちょうど窓の位置にきて外が見えるようになる。
その窓の外...家の庭では...
リーニャが転んだのか、洗濯物をばらまいていた。
近くには、洗濯物がかかった物干し竿が落ちている。
「あーもう...なんでぇ...」
リーニャは起き上がると、地面に着いた洗濯物たちを籠に入れる。
地面は濡れて少々ぬかるんでいるようだ。
前日の吹雪で積もった雪が、今日の日差しで解けたのだろう。
転んだリーニャの服は洗濯物よりも泥にまみれている。
(今日も洗濯し直しかな...)
...俺には、もう見慣れた光景だった。
「はぁー...」
ジャブジャブ
ゴシゴシ...
リーニャが時折手に息を吐きながら、洗濯板に洗濯物を擦る。
太陽が昇っていても、真冬の洗濯はとても寒そうだ。
部屋の温度計は、マイナス5度を示している。
ぅぅぅ...
鳥肌が立ってきた
俺は柵から手を離し、毛布にくるまる。
やっぱり、寒さは幼児の体にはこたえる。
昨年の冬も寒かったけど、なかなか慣れないな...
そういえば、暇で1年間リーニャの占いを見ていて少しわかったことがある。
それは、リーニャのドジがあの占いの反動なんじゃないか?ということだ。
俺の調べによると、リーニャの占いの的中率は驚異の100パーセント。
1度たりとも外したことがない。
しかも、その内容は少々細かい事まで分かるようだ。
そんな凄い占いをしてノーリスクということは考えづらい。
そこで、その日の占いの回数とドジの回数や程度が変わるのかを観察してみた。
すると、占いが少なかった日の方が多かった日に比べてドジが少なかった。
また、店が休みの日のドジはほぼゼロだということがわかった。(ゼロだとは言ってない)
つまり、占いの回数とドジの回数がだいたい比例しているということだ。
そして、暇な俺はこの結果からある仮説を立てた。
それは、"占いの規模や詳細さによって、リーニャのドジの程度も変化するのではないか"というものだ。
回数どうしで比例するなら、大きさどうしでも比例するはず...
そうなると、ドジの域を超えるようなことも起こりうるということだ。
まぁ何が言いたいかというと...
リーニャが人類の存亡をかけるような占いをしたとき、リーニャにも同じような規模感の不幸が起きるのでは?ということだ。
...まぁそんな事は一生のうちで出会うことは無いと思うがな。
「ふぁ〜...」
考えてたら眠くなってきた...
...
寝るか...
俺は頭まで毛布を被り、眠りにつくのだった。




