第57話 7歳、異変 6
「ん...んん...」
ガサッ
"それ"の下で、少女が動く。
「重い...ここ、何処なの...?」
少女はもがく。
だが"それ"は重く、少女の力では持ち上げることはできなかった。
ガサッ、ゴソッ...
「...ぷはぁ!」
少女は"それ"を掻き分け、顔を出す。
「ん...ここは...?」
少女は周囲を見回す。
そこは、薄暗くジメッとした部屋だった。
「うっ...何?この臭い...」
少女はあまりの臭いに口元を塞ぐ。
ガサッ、ガサッ...
ピチョン...
「?」
少女が"それ"の下から出ようと床に手を着いたとき、少女の手が"液体"に触れた。
「水?...いや、これ...」
手に付いた液体が、赤黒く光る。
「血じゃない...!?」
それに気づき、少女は今まで自分にのしかかっていた"それ"を見る。
「っ!?...いやぁぁぁぁ!!!」
少女は"それ"が何かの死骸だということに気づき、焦りながら部屋の隅に移動する。
そこで少女はしゃがみ込む。
「...パパ...」
少女は肩を震わせ、涙目になっていた。
「...zzZ」
「...?」
少女が起きてから少し経ち、少女はその部屋に自分以外に誰かが居ることに気づいた。
「誰か...居るの?」
少女は周囲を見回し、呼吸音の元を探す。
「...あっ」
「...zzZ」
呼吸音は死骸の上から聞こえていた。
「...あのっ...助けて、ください...」
「...zzZ」
「あのっ!助けて...」
「...zzZ」
「?」
少女は何度か話しかけるが、その人から返事はこない。
タッタッ...タ
「寝てる...?」
そう。
その人は眠っていた。
だが、少女からはまだ、その人の顔は見えない。
タッ、タッ...
「...ゴクッ」
スッ...
少女はさらに近づき、死骸の上を覗く。
「...ん?」
そこには、少年が眠っていた。
年齢は少女と同じくらい。
そして何より、少女はその少年に見覚えがあった。
「こいつ、たしか...リーゼルって...」
「...んん...」
「なんで、こいつが...あっ」
少女はその少年が手にナタを持っていることに気が付く。
「もしかして...私を...?」
「...」
サッ
ズズズ...
少女は少し考える素振りを見せた後、少年の腕を掴み、引っ張る。
ズズッ...
「あっ!」
ドスッ!!
「キャッ!...」
「んぐっ...」
少年は死骸からズレ落ち、少女の上にのしかかる。
「んん...もう!...」
少女は少年をどかす。
「...zzZ」
「?」
少女は少年の顔を覗き込む。
その少年は、まだぐっすりと眠っていた。
「...あんた!起きなさい!!」
「んん...」
「起きなさいってば!」
少女は大声で叫びながら、少年を激しく揺すった。
「...んん...」
「ふん!」
ドスッ!
「うぐっ...!?」
(...な、なんだ?)
なんか、急にお腹に痛みが...
「んん...ん?」
「目が覚めたかしら?」
目を覚ますと、誰かが俺を見下ろしていた。
(...エルゼか?)
「えっと...大丈夫、でしたか?」
「ふん... 」
「あの...」
「...大丈夫...」
「よかった...」
にしても、不機嫌だな...
朝のこと、まだ怒ってるのか?
『...』
会話は途切れ、しばしの沈黙が訪れる。
「...たい...」
「はい?」
「...帰りたい...」
エルゼが俺から目を逸らしながら、そう言った。
エルゼは、左手で右腕を掴みながら少し震えている。
「...分かりました。ですが、少し時間を頂いても?」
「ん...」
タッタッ...
俺はエルゼを残し、部屋を後にしようとする。
「あっ、ちょっと...」
「はい?」
すると、エルゼが俺の服の袖を引っ張った。
「あんた、私を一人にするつもり?」
「はい。何か問題でも...?」
「問題大アリよ!私を一人にするなんてどうかしてるわ!!」
「...もしかして、着いてくるつもりですか?」
「そうよ?」
(うーむ...困ったなぁ...)
たしかに、少女を一人にしてはおけないが...
行き先が地下二階なんだよなぁ...
...まぁ別にダメな訳ではないけど、明らかに異様な感じがしたから同行させたくはない...
最悪、敵がいる可能性があるしな。
どうしたものか...
「ん〜...」
「私を連れて行くって言うまで、行かせないわよ?」
「...分かりました」
「本当...?」
「はい...ですが、一つ約束してください」
「...何?」
「気分が悪くなったら、すぐ僕に言ってください」
「?」
俺がそう言うと、エルゼはキョトンとした表情をする。
「...それって、どういうこと?」
「まぁ、行ってみれば分かりますよ...多分...」
...タッ




