第55話 7歳、異変 4
「ッ!...」
サッ...
...キーン...
リーゼルは直前で後ろに跳び、振り下ろされたナタを躱す。
(刃物...)
やっぱり居たか...
だったら...
「...ふん!」
バン!
リーゼルは扉を思いっきり開き、扉裏にいた男にぶつける。
「はっ!」
そして、扉越しに蹴りをかました。
ドン!
ちーん...
「ぬ"ぅ"!!!?」
...ダッ
ドタッ...
リーゼルが扉から離れると、扉裏から男が膝を着いて倒れる。
倒れた男はピクピクと痙攣しながら、股間のあたりを手で守っているように見えた。
(...Oh...)
これは痛い...
悪人とはいえ、この人には悪いことをしてしまったな...
申し訳ない...
同じ男として、深くお詫びしよう。
(...さて)
本題は"こっち"だな...
「...エルゼさん...?」
「...」
返事がない。
今は話す気力も無いみたいだな...
「...ん?」
なんだこれ?
水溜まり...?
エルゼの足元に水?が溜まっている。
...でも、水にしては黄色みがかってるような...
(ま、いっか...)
今はいち早くエルゼを連れていかないと...
でも、手錠がな...
鍵ってどこにあるんだ?
「ん〜...。...あ」
さっきの男が持ってたりしないか?
サッ
リーゼルは男の方を振り向く。
「あれ?...居ない...」
だがそこには、男の姿はなかった。
(一体、何処に...)
...レロッ
「...ひっ!?」
突然、頬に舐められたような気持ち悪い感触が伝う。
「誰だ!!?」
リーゼルは振り返る。
だが、そこにはエルゼの姿しかなかった。
(...クソッ...)
なんで探知に引っ掛からないんだ?
...もしかして、さっきの奴も"魔力"を...?
なら、だいぶ面倒だ。
早く見つけないと俺が殺られる...
(何処だ?...何処にいる...?)
...ピトッ、ピトッ
(っ!?...この気配...)
「...探す手間が省けました...」
「...」
扉の前に、"それ"の姿はあった。
六本足でブリッジをしたような異形の怪物...
頭は垂れて首が裂け、そこから長い舌のようなものが飛び出している。
(...股間を潰された痛みで"変態"でもしちまったのか?)
まぁ、そんなことより...
今はコイツを殺すことに集中しないとな。
スッ...
シャン...
リーゼルは懐からナイフを取り出す。
そのナイフは少々刃こぼれして錆もあるが、刃に反射した光は鋭く光っていた。
「...さて」
どうしたものか...
コイツ...人じゃない、よな?
ん〜...
急所...ドコ?
首はイッちゃってるし...手足は変な方向に曲がってるし...
生物なのかも疑わしい。
なら、こいつも"棘の悪魔"のときみたいに"核"みたいなものがあるのか?
でも、魔力探知が無能だしなぁ...
探すのはだいぶ困難だ。
(ん〜...)
...まずは、拘束してからか...
スゥゥ...
「...ヌ"ゥゥ...」
「!?」
...シャッッ!!!
リーゼルは怪物の足元から茨を生やすが、そこに怪物の姿はなかった。
(消えた!?)
...いや、違う。
隠密だ。
俺に探知されないように魔力を抑えながら、魔法かなんかで姿をくらましてやがる。
でも、こんな閉鎖的な空間でどうやって...
スゥゥ...
「っ...」
(今、"揺れた"...?)
今、たしかに"魔力"が揺れた。
...来る...!
...シュッッ!!
「ッ!?...」
風を切るような音とともに、"何か"がリーゼルの頬を掠める。
(なんだ...?)
今、攻撃された...よな?
...見えなかったぞ?
「...ハハッ」
こりゃあ、マズイな...
このままじゃジリ貧になって殺される...
考えろ...考えろ、俺...
スゥゥ...
シュッッ!!!
...コイツを倒すカギは、攻撃の直前に発生する微細な魔力の揺れ...
その僅かな一瞬だけ、俺でもコイツの位置を探知できる。
...でも僅かすぎて、俺が攻撃できる程の隙にならない。
(どうしたものか...)
ピトッ...
「...ん?」
「ア"ァ"...」
リーゼルは何かに気づき、振り返る。
すると、倒れたエルゼに纏わりつくような怪物の姿があった。
レロレロレロ...
怪物がエルゼの頬を舐め回す。
「...キッショ...」
(おっと、思わず声に出ちゃった...)
にしても気持ち悪わる...
スゥゥ...
(...消えた...?)
しかも、エルゼと一緒に?
...
...人質って訳か...
「ハハッ...ハハハ...」
「...キッツ...」




