第52話 7歳、異変
タッタッ...タッ、タ...
「はぁ...はぁ...」
町外れの路地裏...
都市の"闇"の部分であり、少なからず貧困に苦しむその場所に、場違いな服装をした少女が一人立っていた。
少女は両膝に手をつき、息を大きく乱す。
「...ティナ...どこ...?」
少女はしゃがみ、手に持っていた木製の飾りを握る。
...2年前、同所ー--
「グスッ...グスッ...」
「...ねぇ...なんで泣いてるの?」
「...だ、れ...?」
「私は、ティナ!あなたは?」
「...エルゼ...」
「...じゃあ、エルちゃんだね!...ね、エルちゃん♪一緒に遊ぼ?」
「...えっ...でも...」
「ほら♪行こ?」
「...うん」
ティナと名乗った少女が、エルゼの手を引く。
...これが、エルゼの過去。
エルゼが町外れの貧困区に入り浸るようになったきっかけだ。
当時、ウェインさんと口論になり家を飛び出したエルゼは逃げるように貧困区へ迷い込んだ。
そこで出会ったのが、ティナと名乗る少女。
エルゼや俺の2個上で、戦争孤児。
ラーミス教が管理する孤児院に住んでいて、ラーミス教信者。
将来の夢は、"お嫁さん"。
...これは、禁書庫で事件関連の本を調べていたときに見つけた情報だ。
そして、その少女に関する情報の最後にこう書かれていた。
...享年9歳。
前後の文を見た感じ、どうやら彼女は"実験"に使われたようだった。
そこにその時の状況等が詳細に書かれていたが、あまりの酷さに俺は読むことを断念した。
だが、ラーミス教の奴らがクソ野郎共だということはよく分かった。
...そういえば、"会話"の部分に気になる言葉があったな...
たしか...
"君のお陰で、我々は神を拝めた"
だったか?
事後の文章に書かれた一節...
あれは一体、どういう意味なんだ...?
「...お嬢さん」
男が、少女の肩を叩く。
「...ティナ?」
「ん?...誰か、お探しですか?」
「えっ、はい...あのっ、ティナって子を探してて...」
「君、ティナさんのお友達ですか?」
「ティナを知ってるんですか?」
「はい。知っていますよ」
「あのっ、ティナは今どこに...」
「彼女も貴女を探していましたよ。彼女に会いたいですか?」
「はい!」
「...分かりました。着いてきなさい」
少女は男に導かれるまま、近くの建物へと入る。
タッタッ...タ
「...君はここで待ってください。私はティナさんを呼んできます」
「あ、はい」
少女が通されたのは、机と椅子が置かれた質素な個室。
机には花が挿さった花瓶と、液体の入ったコップが置かれている。
窓はあるが日当たりが悪く、燭台の火が部屋を照らしていた。
「はぁ...」
ゴクッ...
少女は椅子に座り、コップの液体を一口。
「...変な味...」
少女はコップを置く。
「...んん...眠、い...」
ドタッ!...
少女が倒れるように机に伏せる。
「zzZ...」
ガチャッ...
「...フフッ」
扉が開き、不気味な笑みを浮かべた男が顔を覗かせる。
「...久しぶりの健康な体...いい実験体になりそうですねぇ...ウヒッ」
「...ヌヴル様...」
「あぁ、すみません。貴方達はこのお嬢さんを地下に"ご案内"してください。私は別の実験体の経過を観察してきます」
「はっ!...」
男の後ろに居た白衣の男が、眠った少女を担いで部屋を後にする。
「...さて」
...貧困区・地下ーーー
タッタッタッ...
スゥゥ...
「...ふむ...これもダメそうですね...」
ヌヴルと呼ばれた男が、指先で壁をなぞりながら薄暗い地下を歩く。
だが、なぞっていたのはただの壁ではない。
磔にされた大量の"死体"...
ヌヴルはT字に磔にされた死体を、指先で左腕から胸部、右腕へとなぞる。
「これも、これも、これも...」
「...やはり、粗悪品だと持たないんでしょうか...?」
タッタッ...タ
その地下の最奥...
ヌヴルの足がそこで止まる。
そこには明かりに照らされた"実験体"があった。
スゥゥ...
ヌヴルが"それ"を上から下へなぞる。
「...ん〜素晴らしいですねぇ...」
スッ...
シャッ!
ヌヴルが"それ"にナイフを突き立てる。
「これが...不死の肉体、永遠の生命...」
スッ...
シャッ!
スッ...
シャッ!
ヌヴルは何度も抜いて刺してを繰り返す。
...シャッ!!
「...次は、首を刎ねてみましょうか...?」
...ヌヴルの目の前には...
四肢をもがれ大量の刃物が刺さり、磔にされた少女が"あった"。




