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廻生のアリア  作者: jurabisu
第二章
51/107

第51話 7歳、新生活 6

「...えっと...とりあえず、その問題をお聞きしても?」

「ん...」


スッ...


俺が聞くと、アルテさんは浮いている本の一つを俺に見せてくれた。


「っ!?これ...」

「その娘が、私がマークしてた子...」


その本には、おびただしい数の文字と共に幾つもの"写真"が載っていた。


ある人の姿が写された写真...


俺はその人に見覚えがあった。


「エルゼさん...?」

「そ。エルスノーゼ・フラフェイア...君の新しい家の同居人」

「はい。...それで、彼女に何かあったんですか...?」


ダン!


パラパラパラ...


アルテが杖で床を叩くと、宙に浮いた幾つもの本のページが捲れ始める。


パラッ...


「...それ、覚えてる?」

「はい...今朝の出来事なので...」


開かれたそのページにはアングルは違うが、見覚えのある光景の写真が数枚載っていた。


「...でも、これがどう関係して...」

「...君の同居人、食堂から出ていって何処に行ったと思う?」

「...?」


ぺラッ...


本のページが捲られる。


「...これは...?」

「この街の地図」

「...この線は...?」

「君の同居人が歩いた道」

「...じゃあ、線が途切れている"ここ"にエルゼさんが?」

「ん」


たしかに、女の子一人は危ないけど...

問題ってほど危険になるとは思えない。


(まぁ、この街の治安にもよるが...)


でも、アルテさんが"問題"って言うくらいだから、何かあるはずだ。


線が途切れるこの場所...


街の城壁付近か...


城壁で隔てた向こう側には、貧困層が住む、いわゆるスラムがある。


そんな所に近いのだから、治安が良いとは考えにくい。

しかも、線が途切れるこの場所は路地裏だ。


変な奴に絡まれていてもおかしくない。


「...なるほど。たしかに危険ですね...」

「だいたい分かったみたいだね」

「はい」

「...でも、君が考えているより状況は悪いよ?」

「え?」


ダン!


スゥゥ...


別の本が俺の元に飛んでくる。


(...ん?これは...)


とある宗教団体についての本か...



ー"ラーミス教"ーーー

生命を司る神・ラーミスを信仰する宗教団体。


宗教の中では比較的歴史が深く、始まりは3000年ほど前に遡る。

フーザレン・ハムハーバーを教祖とし、多くの人々が信仰したが、300年ほど前に非人道的な実験をしていたことが露見され当時の軍隊によって検挙された。


その実験内容は...


"生命の更なる可能性とその拡張"


...簡単に言えば、信仰する神ラーミスのように生命の形を自在に操り、永遠の生命を手に入れる為の実験である。


露見されたのは300年ほど前だが、実験自体は発足以前からされており、今までの実験過程での死亡者数は12,827人である。


"現在も実験が行われている"。



(へぇ...)


危ない宗教もあったものだな...


でも、なんで今そんなことを...?


...


...あっ、そういうことか!


「アルテさん!」

「ん?」

「タブラにある宗教関係施設の所在地が描かれた地図ってありますか?」

「あるよ」


ダン!


スーッ...


パラパラパラ...



じぃー...


(...やっぱり...)


この路地裏...

ラーミス教の関連施設が集まってる。


アルテさんが言ってた通り、たしかに、俺が思っていたより状況は悪いみたいだな...


(...ん、あれ?今...)


「...アルテさん...」

「...」

「今、線が動きました...」

「...事が動いた...君の同居人が危ない...」


エルゼが負傷もしくは死亡した時、俺たちの生活にどのような支障がでるかは未知数だ。


最悪、ウェインさんが俺たちのせいだと言って追い出す可能性も捨てきれない。


「...僕、行きます」

「待って...」

「でも、早く行かないと...」

「どうやって"ここ"から出るつもり?」

「あっ...」

「だから、待って...」

「...はい」


そうだ...少し落ち着かなきゃな...


スッ...



...チュッ


「!?」

「ふふっ...」


今...アルテさんが頬にキスを...!?


(ちょっと照れ...る!!??)


「んぐっ...!?」


なんだ...?

急に身体から力が抜けて...


「はぁぁ...はぁぁ...」


自然と呼吸が深くなる。


「アルテさん...何を、したんですか...?」

「ん?キス」

「...僕が聞いてるのは...アルテさんが、僕にかけた魔法のことです...」


「...気づいた?」

「貴女が教えてくれたんじゃないですか...。"魔法は身体的、直接的な接触によって他人の体内に術式を書き込める"って...」

「ちゃんと覚えてたんだ...聞いてないかと思ってた...」


「...それでこれ、なんの魔法ですか?」


「...魔法じゃない。出力できる魔力量を制限する呪い」


「なんで、僕に...?」

「もし、あの時みたいな魔法を使われたら困る。また、"魔女狩り"が始まったら嫌だし...」


「信用...出来ませんか...?」

「ん。それと、修行も兼ねて」

「修行...?」

「君はもっと魔力を制御したほうがいいから...。...大切な人、失いたくないでしょ?」


「...わかりました」

「...わかったならいいよ。...行ってらっしゃい」


ダン!!




(...戻ったか...)


...いつの間にか、俺はもとの図書館内に居た。


「...行ってきます」





...俺はまだ知らなかった。


この出来事が、序章にすぎないということを...

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