第50話 7歳、新生活 5
タッタッタッ...
「はぁ...」
朝っぱらから、あんな事になるなんて...
なんとなく外に出たのはいいが...
何をしようかな...
「...ん」
そんな時、リーゼルの視界にあるものが写った。
「図書館...」
(暇潰しにはちょうどいいか...)
俺でも入れんのかな...?
...タッ
そして俺は、図書館へと足を向けた。
サァァ...
タッ、タッ、タッ...
「ん〜...」
タッ、タッ...タ
サッ...
...ぺラッ
「...んー」
(どの本もダメだな...)
ストッ...
リーゼルは手に取った本を棚に戻す。
...ここは、タブラの大図書館の中。
その一般公開エリアの中でも古い本のレプリカが納められている場所だ。
今俺は、魔法や魔術などの魔導学について書かれている本を探しているのだが...
どの本も、確証の無い話ばかり。
というのも、魔法等について書かれた本はほとんどおとぎ話なので、本当のことが書かれていないのだ。
"禁書庫"の本が懐かしい...
...スッ...
「ん?」
今、本棚の向こう側に誰か居たような...
でも、この棚は壁に面しているはず...
今の人影は一体...
タッタッタッ...
リーゼルは図書館中を歩き回る。
(さっきの人影は見覚えがあった...)
多分、あの人影は...
スゥゥゥ...
タッタッ...タ
「...お久しぶりです。アルテさん」
「...」
いつの間にか周囲の景色が変わり、リーゼルの目の前にはアルテが佇んでいた。
アルテは一瞬リーゼルを見るが、すぐ本に視線を落とす。
「...お元気ですか?」
「...」
「...」
「...ねぇ」
「はい?」
「魔法、使ったでしょ...?」
「はい」
「ダメって、言ったよね?」
「...はい。...でも、あの時は...!」
スッ...
「!?」
「シー...」
突然、アルテがリーゼルと距離を詰め、リーゼルの唇に人差し指を添える。
「...言い訳は要らないよ?」
「んぐっ...」
息がしづらい...
でも、動けない...
これも、魔法なのか?
「...あの時、少しでも座標を間違えてたら君は...死んでた」
「...」
「君、私との約束...覚えてる?」
約束...?
「"君のことを教えてほしい"って...」
...そういえば、そんな事もあったような...?
「忘れてたでしょ?」
「ん...」
リーゼルは目をそらす。
「私は、君に死なれたら困るの。だから君は、リスクを少しでも排除するべきだった」
「...」
スッ...
アルテがリーゼルの唇から人差し指を離す。
「ねぇ、なんで戦ったの?」
なんで?か...
なんでだろうな...
爺さんを助けたかったのか。
自分の実力を試したかったのか。
はたまた、特に理由は無かったのか。
あの時、俺は何を考えていたのか...
必死だったせいで覚えていない。
...まぁ、何を考えていたにせよ爺さんか俺、もしくは両方死んでいた。
もしかしたら、あの時俺は、自分が強いと勘違いしていたのかもしれない。
だとしたら、俺って相当な馬鹿野郎だな...
「...慢心からきた自信から...ですかね...」
「そっか...じゃあ、許してあげる」
「えっ、許してくれるんですか?」
アルテは小さく頷く。
「...あの出来事が、君に成長を与えたみたいだから...」
「はぁ...」
なんか、許されたらしい。
「...まぁ、この話はここまで」
「ん?まだ別の話題が?」
「ん。君の新しい生活についてなんだけど...」
サッ...
ダン!
アルテはいつものように杖を取り出し、床を叩く。
すると、無数の本が棚から飛んできてアルテの周囲で開く。
「?」
「...ん、ごめん。少し問題が生じた」
「問題、ですか?」
「ん。少し前からマークしている娘が危ないみたい」
「へぇ...大変そうですね...」
「何言ってるの?これは君にも関係してるんだよ?」
「...え?」
...どうやら俺は、また面倒事に巻き込まれたようだった。




