第37話 6歳、魔女との邂逅 4
「...だって君、魔女だもん」
「...え?」
???
俺が...魔女?
「正確には、"魔女とほぼ同じ"だけど...ほら、仲間なら教えてもおかしくないでしょ?」
「...僕、女じゃないですよ?」
「知ってる。だから、"魔女とほぼ同じ"って付け加えた」
「"ほぼ"同じ...?」
「ん...説明する」
サッ
ダン!
...それから、アルテは本を見せながら俺に分かりやすく話してくれた。
その話をまとめると、こうなる。
まず、前提として"魔女"とは魔力総量が常人の数十倍~数百倍ある女性のことを指す。
この"魔力総量が常人の数十倍~数百倍"という部分なのだが、そもそも、魔力総量は生物における"雌"の方が多くなる傾向があるらしい。
じゃあこの"魔力"とは何か?という点なのだが、まぁ簡単に言ってしまえば"生命力"だ。
自然界における"雌"の役割は子孫を作り、残すこと。
そのため、"雄"よりも子孫を作るための生命力が必要となり、相対的に魔力総量が多くなる。
それで、魔力総量には個人差があるから、平均よりも魔力総量が多い女性が生まれることがある。
これだけ聞けば、魔力が多い方が子孫を沢山残せていいんじゃないか?と思うだろう。
しかし、そう簡単な話では無い。
魔力総量は生物によって平均がある。
つまり、それが身体の許容量なのだ。
許容量を大きく超過してしまった身体は負荷に耐えられず、崩れてしまう。
まぁ生まれてすぐに崩れるわけではないらしいが。
じゃあ、そんな生きるのに絶望的なハンデを貰ってしまった"魔女"は生きることが出来ないのか?
否、生きる方法は存在する。
それは魔力を消費すること。
実はこの"魔力"という存在...この世界の物質全てを形作っているそうだ。
まぁ、原子の原子みたいなものかな。
そんで、魔女達は自身に存在する膨大な魔力を自然界に存在する物質や現象に変換する術を見つけた。
それが"魔法"。
無から有を生み出すことと同様のことができる魔女達は、大昔には"神"として崇められたそうな。
まぁ色々あって今は恐れられているらしいが...それは置いといて...
魔女達は魔法を使い続け、生き長らえることに成功した。
しかし、魔法を使うにはイメージと集中力が必要だった。
つまり、魔法を使うと他のことが出来なくなる。
食事や睡眠、排泄といった生物が生きる上で必要な行為が出来ない。
だが、使い続けなければ生きていけない。
そこで、様々な魔女が集中せずとも魔力を消費し続けられる方法を探した。
そして、ついに見つけ出した。
...それが"魔術"。
魔術は魔力の性質を文章として書き起こしたもの。
この文章に使われている文字を仮に"魔力文字"とするが、この文字は一文字では効果を成さないが、文章とすることで魔法のように魔力を物質や現象に変換できる。
つまり、この文章に魔力を流すだけで勝手に魔力が消費されるのだ。
しかし、魔術は文字に魔力が流せる範囲に居ないと効果がなかった。
そのため、あまり自由な移動が出来なかった。
だが、ほとんどの魔女はそんな状況にあまり不満がなかった。
しかし、"自由"に憧れたとある魔女が長い年月を費やし無意識で魔力を消費できる方法を見つけた。
...それが"魔眼"。
目(身体)に魔力文字を書くことで自動的に魔力が消費され続けることを発見したその魔女は、自身の左目に文字を施した。
それを真似して他の魔女も自身の目に文字を施した。
それから長い年月が過ぎ、魔眼を持った魔女の遺伝子は後世に継がれた。
その結果、新しく生まれた魔女は生まれながらにして魔眼を持つようになった。
「...でも、魔眼ってそんなに便利でもない」
「そうなんですか?」
「ん...私や君がいるこの"禁書庫"。これが私の魔眼...ありとあらゆる情報を保管する能力」
「この空間全てですか?」
俺が聞くとアルテは小さく頷く。
(すごいな...)
俺が感心した表情をすると、アルテは誇らしげになった。
「...でも、魔力を消費し続けるにはこの空間に居ないといけない」
「なるほど...。あれ?でも、今までの話が僕にどう関係が...?」
「...本題はここから」
(...ゴクリ)
「結論から言う。君の身体は...」
「...」
「性別が違うだけで魔女と状況が変わらない」
「...え、それって...」
「ん...魔力の扱い方を知らないと、じきに身体が崩れる」
「...」
マジで?
超危険じゃん。
もしかして、この場所に来なかったら理由も分からず死んでたかもしれないってこと?
「...僕は...どうすれば?」
「...安心して」
「安心できませんよ!!」
「私はなんのために君に魔女の話をしたと思う?」
「...あ」
「...リーゼル。君は生きたい?」




