第27話 4歳、惨劇 8
...タッタッ
オギャアァァ...オギャアァァ...
タッ...タ
少女は前に出しかけた右足を後ろに戻す。
"胎児"まで、あと約10m...
少女歩みを止めた。
「...危ない」
サッ
少女は大きく一歩後ろへ下がる。
「死んじゃうところだった」
少女は"胎児"の下に転がる死骸に目を向ける。
それは少女が追っていた"化け物"だった。
今はまだ、その姿を保っているが、死骸の所々が霧のようになって消えていっている。
「あ」
少女は死骸の近くに何かを見つける。
それは倒れて動けなくなったリーニャだった。
こちらは、まだ辛うじて生きているようだがかなりの重態であった。
「早く助けなきゃ...」
少女は両手の指を絡め、静かに目を閉じる。
「領域...」
ふぅ...
「鎮静」
次の瞬間、周囲は淡い光に包まれる。
その光は街全体まで広がり、人々に安らぎを与える。
"胎児"は次第に力を失い、翼が萎れ、溶けていく。
本体部分は"死骸"のように霧のように消え、残ったのは一人の少年だけだった。
「ふぅ...一件落着...」
...サアァァァ
「!」
シャッ...
少女は突然、鞘から長い方の剣を抜き頭上で両手で構える。
すると、天から流星のように一筋の光が落ちる。
ドオォォォン!!
「...軽い」
キーン...
少女は"それ"を軽く払う。
...タッ
ヌウゥゥ...
少女の目の前に化け物が着地する。
怪物は大きな白い翼を羽ばたかせ、手に持つ槍の先を鋭く少女へと向ける。
「...早く来なよ」
...バサッ!
シュッ!!
怪物は少女へ急速に距離を詰め、渾身の一突き。
だが、その槍先は空を斬る。
「...遅い」
少女は先程までいた場所から大きく飛び上がり、空中で二本の剣を構えていた。
「風系統...」
少女の周囲に突風が巻き起こる。
「風切」
シュッ!
少女は剣を振る。
空を斬った剣先から"風"が真っ直ぐと怪物へと飛んでいく。
"風"が怪物の左肩を撫でると、怪物の左腕は刃物で切り落とされたかのように地に落ちる。
...バサッ!
怪物はそんなことは気にせず、翼を羽ばたかせ空へ舞う。
そして一直線に少女へと飛び、槍で大きく払う。
...?
だが、またしても少女はいない。
「...こっちだよ」
怪物は払った槍の先を見る。
タッタッタッ!
少女が槍を伝い、こちらへ走ってくるのが見えた。
怪物は急いで少女を振り落とそうとするが...
バシュッ!...
怪物の首が宙を舞う。
白い液体を撒き散らしながら、ゆっくりと地へ落ちる。
怪物が最後に見たのは...
滅びゆく自身の身体だった。
「ふぅ...これで全部...?」
少女は周囲を見回す。
「...」
少女はリーニャやリーゼルを見たあと、静かに空を見上げた。
「...聖戦が始まる」




