第26話 4歳、惨劇 7
ドッドッドッドッ...
心臓の鼓動が聞こえる。
まるで自分の胸に聴診器を当てて聞いているように。
鼓動は身体を伝い鼓膜を刺激する。
脳内を「死」と「絶望」が駆け巡る。
もはや、まともに考えることもままならない。
周囲の景色がホワイトアウトして見える。
「...ッ」
グラッ
意識が、遠のいていく...
(もう、終わりなのか?)
三度目の正直は...
...
無いか。
ザアァァァァ...
(ん?ここは、一体...)
俺、死んだのか?
だとしたら案外痛くなかったな。
あの化け物、相当腕が良かったのだろう。
...
まさか、こんなに早く死ぬなんて...
せっかく転生できたのに、なんか、もったいないな。
少し前、「異世界って殺伐としてない」と思ったこともあったが少し訂正した方がいいかもしれない。
正しくは、「異世界は魔境」だな。
まぁでも、言うほど悪い世界でも無かった気がする。
たった数年だったけど色んなことを知れたし、こんな俺でも愛してくれた人が居たからな。
だから、ここで死ぬのはなんか...名残惜しいな。
本当は、もっと生きたかった。
もっと知りたかった。
もっと感じたかった。
...
ハハッ...
...はぁ
さっきから何一人で喋ってんだろう。
誰かが聞いてくれてる訳でもないのに...
...
寂しいなぁ...
...タッタッタッ
「何処に逃げたの...?」
もう見る影もない街の中を、一人の少女が駆け抜ける。
少女は大小二本の剣を腰に提げ、全身を包むように"白い"ローブを身にまとっている。
タッタッ...タッ、タ
少女は急に速度を落とす。
「ん、コイツらの目的って...」
タッ、タ...タッ
「わざわざ国を陥落させるために"天国"から来たとは考えづらい...。じゃあなんで...?」
少女は考える。
ツー...
「...!?」
ふと、少女は何かを察したかのように周囲を見回す。
「ッ...まずい...」
タッタッタッ!
少女はまた、走り出す。
向かう先は...
リーゼル達の居る場所だった。
...タッタッタッ
タッタッ...タッ
「...やっぱり」
少女は立ち止まり、そう声を漏らす。
場所は宿場通りの跡地。
今はただ瓦礫が積もる広場となったその場所には、異様な気配が漂っていた。
オギャアァァァ!...
空に赤子の泣き声が響く。
「ん?...リーニャのじゃない...?」
少女は少し考えるが、結論は出ない。
「...とりあえず、止めないと...」
少女は真っ直ぐ、広場の中心を見る。
そこには...
2対4枚の翼をはためかせ、悠々と浮かぶ"胎児"の姿があった。




