第23話 4歳、惨劇 4
...ドオォォォン
キュオォォォン!!
『!?』
どこかで大きな音と、不快な鳴き声が聞こえる。
その大きさからするに、ここからあまり遠くない。
「マズイねぇ...まだ居るみたいだよ」
「...どうするんですか?」
「そりゃあ、逃げるに決まってるだろう?」
「どこに?」
「さあ?私に聞くんじゃないよ」
困ったな...
この様子だと、マンダは避難所の場所を知らないorこの街には避難所がないらしい。
逃げるにしても、今よりも安全を確保できる場所じゃなきゃ意味が無い。
どうしたものか...
それに、リーニャの事も心配だ。
こんな事態だし、さすがに逃げているとは思うけど、絶対に安全って訳では無いはず...
...とりあえず、俺やマンダ達の安全確保が最優先。
それと並行してリーニャの生存と安全を確認だな。
「マンダさん」
「ん?なんだい?」
「こんな時、一番人が集まりそうな場所ってどこですか?」
「そうだねぇ...。あ!城とかはどうだい?」
「あ、たしかに。アリです!」
「よし...シャフィ!イリーナ!移動するよ!」
俺は瓦礫の山を降り、イリーナと合流する。
「リーゼルくん、大丈夫...?」
「はい、なんとか無事です...」
「...良かった」
俺のことを心配してくれた!?
なんて優しい子なんだ...
「ほら!行くよ!」
「...うん」「はい!」
俺達は王城・フォーブル城へと歩みを進める。
俺は空を見上げる。
そこには雪の降らない灰色の雲が大きく渦を巻いていた。
...40分前、レドラム・門前通り。
「...嘘...なんで...」
リーニャは空を見上げ、そう言葉を漏らす。
周囲の人々もリーニャと同様、空を見上げている。
だが、その反応は個々に違っていた。
ある人は口をあんぐりと開け。
ある人は天に指を差し。
ある人はただひたすらに空を見上げる。
だが、リーニャの反応はそのどれでもない。
「...」
リーニャはただ一人、その状況を理解し恐怖する。
「ハァ、ハァ...ふぅ...」
リーニャは荒い呼吸を整え、静かに目を閉じる。
ツー...
すると、リーニャの脳裏に一つの映像が流れる。
その目線はリーニャより低く、見た事のある部屋での出来事だった。
ザザッ...ザッ
「!?」
しかし、少しするとノイズが起き映像が途切れる。
「まさか...あの子...」
リーニャは俯き、少し考える。
(...大丈夫よね?)
...タッ
「子供の心配してる場合?」
「ッ!...誰!?」
突然の声にリーニャは驚き、その声の主の首に真っ直ぐと指先を差す。
「...危ない」
「えっ、お師匠様!?」
「そうだよ?元気?」
リーニャが師匠と呼んだ人は、リーニャよりも若い18歳くらいの少女だった。
長い髪をリボンで纏め、服装も年相応のものだが、腰には大小二本の剣を提げている。
「は、はい...でも、なんでここに...?」
「私が観光してたらダメなの?」
「いえ...でも、お師匠様がそんな事するとは...」
「まぁ私が観光するために人前に出る訳ないけど」
「...やっぱり、アレを?」
「うん。野放しにするのは危険だから」
「私も行った方がいいですか...?」
「ううん、大丈夫。弱いやつだから私一人でいい」
「?じゃあ、お師匠様はなぜ私の所に...?」
「...そこに居たから」
「...」
「じゃ、私行くね。バイバーイ」
リーニャが瞬きすると、目の前に"お師匠"の姿はなくなっていた。
リーニャは静かに空を見上げる。
そこには今まさに渦を巻かんとする、灰色の雲があった。




