第22話 4歳、惨劇 3
「ハァ、ハァ、ハァ...」
荒い吐息の音がする。
(なんだよ、コイツ...)
体が小刻みに震え、言うことを聞かない。
今、俺の目の前には"無生物"がいる。
"それ"は人の形をしているが体長4mを超え、肌は雪のように白く輝いている。
片方の手には刃渡り2m程の"片手剣"。
頭には歪んだ光輪。
背中側には光の"羽"がある。
顔には十字の亀裂がある仮面を被り、その隙間から一つの目が覗く。
...動け
動け動け動け動け動け動け...
動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け...
俺は必死に動こうと、脚に力を入れる。
だが、俺の体は、まるで大きな岩のように動く気配がない。
スッ...
目の前に立っている"ヒトガタ"は剣を大きく振り上げる。
その刀身は陽の光に照らされ、きらりと輝く。
その剣が振り下ろされた瞬間、俺は死ぬ。
しかし、あまりの恐怖から俺はその刀身を見つめ、震えることしかできない。
...シュッ!
"ヒトガタ"は振り上げた剣を無言で振り下ろす。
(あっ、終わった...)
俺は死を覚悟した。
これから死ぬなんて本当は考えたくもない。
だけど、この状況下で他に何が思いつくだろう?
あぁ...
死にたくない。
せっかく転生したのに、あまりにも早すぎる。
あぁ。
もしかしたら、これは夢なのかもしれない。
今ここで夢は途切れ、次に見るのは白い天井。
そして、視界の端から母さんが顔を覗かせる...
(...)
そんな事、ある訳ないか。
この世界は夢にしては長すぎた。
これがほんの数日なら、まだ希望はあったけどな。
俺は静かに目を閉じる。
無駄に足掻いて苦しむより...
スパッと潔く死んだ方がマシだろう。
(...?)
あれ?
俺死んだ...のか?
目を閉じてから数秒経った。
だが、身体のどこにも違和感はなく、死の恐怖で未だに震えているのが分かる。
サアァァァ...
生暖かい風が俺の顔を掠める。
血と肉が燃えるような、鼻が曲がる臭いがする。
俺は恐る恐る目を開ける。
「...ッ」
目を開けるとそこには...
"ヒトガタ"の刀身が俺の顔の寸前で止まっていた。
ゴフッ...
"ヒトガタ"の仮面から白い液体が噴き出す。
"ヒトガタ"は小刻みに震えている。
ッー...
(...!)
俺はその場から大きく一歩横にズレる。
スッ...
ガシャーン!
"ヒトガタ"の手から剣が滑り落ちる。
...ダッ
ドオォォォン!
それから程なくして、"ヒトガタ"が前方へと倒れる。
(一体、何が...?)
よく見ると、"ヒトガタ"の背中には大人一人が丸々入りそうなくらい大きな風穴が空いている。
最初見た時、こんな傷は無かった。
じゃあ一体誰が?どうやって?
考えても答えは出ない。
タッタッタッ...
「あんた!大丈夫かい!?」
背後から足音と共に声が聞こえる。
タッタッ...タッ
「...あ、マンダさん」
「ああ、良かった。無事みたいだね...」
「無事じゃ、ありませんよ...」
「命がありゃ無事なんだよ」
「ハハッ...まぁ、そうですね...」
俺は倒れた"ヒトガタ"を見る。
「...あんた、災難だったねぇ」
「...これは、何なんですか?」
「私にもサッパリさ」
「そうですか...」
「でもね、一つ言えることはある」
「...それは?」
「コイツらが、人智を超えた怪物だってことさ」
人智を超えた...怪物...。
前世で言う"神"みたいなものなのか?
そんなもの有り得ない。
...だが、それは"地球"での常識だ。
忘れてはいけない。
今、俺がいるこの世界は地球とは違う世界...
"異世界"
だということを...




