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廻生のアリア  作者: jurabisu
第一章
21/107

第21話 4歳、惨劇 2

「痛っ...リーゼルくん、どうしたの?」

「伏せて下さい」

「えっ?」

「いいから早く!」

「う、うん...」


俺とイリーナは床に伏せる。

そして次の瞬間、"未来"が訪れた。


...ドオォォォォン!!


『!?』


...一瞬だった。

一瞬の出来事すぎて、何が起きたのか分からなかった。


「なに、これ...」


俺とイリーナは絶句する。


「宿が...壊れ...」


カンカンカン...


どこかで、鐘を叩くような音がする。


一体、何が起きた?

この光景は、俺が見たものと同じだ。

だが、過程は見ていない。

まさか、ほんの一瞬で建物が壊れるなんて...


グラッ...


「うおっ...」「キャッ...」


突然、床が揺れる。


(地震...?)


いや、違う。

これは...


(建物が倒壊する前触れ...)


マズいな...

今俺がいるのは、この宿の4階...

落ちたら最悪、死んでしまう。

俺は、地面とキスして死にたくない。


どうする...どうすれば...

どうにかして怪我を最小限に抑えなければ...


「何今の...?」


イリーナはまだ状況を完全に理解できていない。

今何が起きているのか分からない恐怖からか、イリーナは今にも泣き出しそうだ。


(...)


時間は...ない。


が、少し状況を整理しよう。

まず、この建物だが...

倒壊しない事はまず無いだろう。

あと数秒後には俺達は落下する。

だから、落下から逃れることは考えなくてもいい。


俺が今考えるべきは、怪我を最低限にする...つまり、落下の衝撃を軽減する方法だ。


俺は使えるものが無いか、周囲を見回す。


(...これなら、もしかして...)


クソッ...考えている暇は無いか...


...タッ!


俺は駆け寄る。

そして、手を伸ばす。

俺が手に取ったのは...


"毛布"だ。


「イリーナさん!これを!」


バサッ...


俺は近寄ったベッドから、大きな毛布をイリーナへ投げる。


「えっ、何?どういうこと?」

「それに包まってください!」

「え、あっ、うん!...」


イリーナは返事をすると頭まで毛布に包まる。


それを見て俺も毛布を手に取り、毛布に包まったイリーナを覆うように被さる。


ガラッ...

ドドオォォォ!!


床が傾く。

その角度が大きくなる度に、俺達の体が下へと滑っていく。

部屋に残っていた家具も同様だ。


ガタン!


大きな音と共に、床が大きく傾く。


(...落ちる!)


俺は毛布を離さないように力一杯掴む。


サッ...


「えっ...キャアァァァ!」


...そして、俺達は落下した。


ヒュー...

ドスッ!


「うぐっ...あガッ」


落下は一瞬だった。


どうやら、俺は着地したようだ。

運良く背中から着地できたのはいいのだが、着地の衝撃で息がしづらい。


(苦し...)


ガラガラ...

ドゴォォォン!...


俺達が着地した少し後に宿が完全に倒壊する音が聞こえ、瓦礫が俺達の上に落ちる。

元々イリーナの下敷きになっていた俺はもう動けない。


体は痛いし、息はしづらいし、身動きも取れないなんて...

まぁ、死ななかっただけ良しとしよう。


(さて...これからどうする...?)


とりあえず、息を整えないとな...


「はァ..くっガ...」


俺は必死に呼吸をするが、まだまだ息苦しい。


「ふうぅ...はぁ...」


時間をかけ、ゆっくりと息を整えていく。


(...よし、大丈夫だ)


「...ねぇ...もう大丈夫、なの?」


イリーナの声が聞こえる。

その声色からは不安が見て取れる。


「はい...イリーナさんは動けますか?」

「...うん」

「じゃあ、少しどいてください」

「うん、分かった...」


イリーナは瓦礫をどけながら立ち上がる。




「...よいしょっ、と」


俺は瓦礫をどけながら、外に出る。

全身が痛いせいで、外に出るのに少々時間がかかってしまった。


「私達の宿が...」


イリーナの悲しそうな声が聞こえる。


俺は瓦礫の山のてっぺんに立ち、周囲を見回す。


「...嘘だろ...これ」


俺はあまりの光景に言葉を失う。



鳴り止まない鐘の音。

燃え上がる瓦礫の山々。

逃げ惑う人々の波。

天は厚い雲に覆われ、青く広い空は見えない。


瓦礫からは血が流れ、人の体の一部が見える。

それを見ていると、気分が悪くなりそうだ。


(...しかし、なんでこんな事に?)


もうどこからも、楽しげな笑い声は聞こえない。

聞こえてくるのは、恐怖と絶望に満ちた叫び声だけだ。


先に出ていたイリーナはマンダやシャフィを探しているようだ。


「...イリーナ、リーゼル!大丈夫かい?」

「お母さん!」

「マンダさん!」


瓦礫の山の下からマンダの声が聞こえる。

どうやら二人は生きているようだ。


イリーナはマンダを見るなり走り出し、マンダに抱きつく。


(ここはマンダ達と集まった方がいいな...)


俺はそう判断し、瓦礫の山をゆっくりと降りる。


「あんた、気をつけな!」

「はい!」


足を踏み外さないよう、一歩ずつ踏み出す。

というより、そうしないと痛くて動けない。


タッ...タッ...


シュッ...

ドオォォォン!


突然、背後から轟音が聞こえる。

それと同時に発生した風により体勢を崩しかけたが、なんとか立て直す。


「大丈夫かい!?」

「はい、なんとか...」

「そりゃあ、良かっ...」


マンダの声が途切れる。

その表情からは"恐怖"が見て取れる。

それは、マンダの後ろにいるイリーナとシャフィも同様だ。


「?...どうかしましたか?」

「あ、あんた...う、うし、後ろ...」

「後ろ?」


俺は後ろを振り向く。


「...えっ」


俺は見た。

見てしまった。


瓦礫の山のてっぺん。

そこに佇む、巨大な...



"ヒトガタ"



を...

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