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廻生のアリア  作者: jurabisu
第一章
19/107

第19話 4歳、王都レドラム 9

「...さて」


戻るか...


サッ


俺は腰掛けていた石段から立ち上がり、来た道を引き返す。



ガヤガヤ...


相変わらず、どこも騒がしい。

宿場通りに戻ってきたが、人通りは減るどころか増えている。

気を抜くと、流されて揉みくちゃにされてしまいそうだ。


タッタッ...


俺は流されないように、人ごみを掻き分けて進む。



タッタッタッ...

ドスッ!


「うわっ!...」「きゃっ!...」


俺が歩いていると、正面から誰かがぶつかる。

その衝撃で、俺もその人も尻もちをつく。


「イテテ...」

「いったぁ〜...」


頭が痛い...

ぶつかった時に、頭が当たってしまったようだ。

まったく...急にぶつかってくるなんて...

まぁ、この人混みじゃしょうがないかもしれないが...


「もう!なにするのよ!!」


俺はその声を聞き、ぶつかってきた相手を確認する。


(女の子?)


目を開けると、俺の目の前には少女が座り込んでいた。

その少女は、肩より少し長い髪で整った顔立ちをしている。

服は長袖のブラウスにケープを羽織っているようだ。


身長からして歳はあまり変わらないだろう。


「貴女こそ、ぶつかってきて謝罪もないんですか?」

「なんでアンタなんかに謝る必要があるの?だいたい、ぶつかってきたのはそっちでしょ?謝って!」


とりあえず謝罪を求めてみたが、謝る気は無さそうだな...

まぁ、見た目がお金持ちのお嬢様って感じだし、平民に謝るのは癪なのだろう。


「...お嬢様!どこですか?」

「っ...もう来たの!?」


少女は突然慌て出す。


「ちょっとあんた、どきなさい!!」


ドスッ!


「うわっ」


少女は俺を押しのけ、人混みの中を走り去る。



まったく...なんだったんだ?


一瞬の出来事すぎて、本当にあったのかを疑ってしまう。


「よいしょっ...ん?」


俺は立ち上がろうと、膝に手を着く。

その時、俺の視界の端で何かが光る。


(これは...)


俺は"それ"を拾い上げる。


「...宝石...?」


落ちていたのは指先サイズの赤い宝石だった。


よく見てみると、宝石には紋章のようなものが彫られている。

多分、これだけでも相当高価なもののはずだ。


さっきの子とぶつかった時に、あの子の服から取れてしまったのだろう。


(さすがにいないか...)


俺は少女が走り去った方向を眺める。


何故だろう...

あの子には、また会える気がする。

この"落とし物"はその時が来るまで俺が預かっておこう。



スンスン...


(この匂い...)


どこかから食欲をそそるような良い匂いが漂う。

俺はその匂いに引き寄せられるように、匂いのする方向へ歩みを進める。


タッタッ...タッ


(ここか...)


俺は通りに並ぶ屋台の一つにたどり着く。


「...マムラー?」


看板には日本語訳でそう書かれている。


机が高いせいで"それ"をよく見ることが出来ないが、匂いはカレーに近い。


(とりあえず買ってみるか...)


俺はポケットから数枚の硬貨を取り出す。(マーヴルから貰ったお金)


いまいちこの世界のお金の感覚が分からないが、とりあえず全部出せばいいだろう。



...カサッ


俺は店員から紙に包まれた"マムラー"を受け取る。


なるほど...

どうやら"マムラー"とは揚げたパンのようだ。

匂いも相まって、カレーパンのように見える。


見た感じは美味しそうだ。

しかし、食べ物は見た目や匂いだけではない。

肝心なのはその味だ。


(さて...味はどうかな...?)


...サクッ


(...!)


美味い...


油で揚げられたサクサクとした生地に甘さと辛さが絶妙なカレーのような餡がマッチしている。

餡には、数種類の種類の野菜と、口に入れるとホロホロと崩れるような食感の肉が入っている。

それに加え、口の中に充満するスパイスの良い香りが俺の食欲を刺激する。


サクッ...


1度食べ始めると、俺の手が止まることはなかった。



「ふぅ...」


つい夢中になって食べてしまった。


まさか、こんなに美味いもの食べられるなんて、思ってもみなかったな。


ありがとう、マーヴルさん...


俺は空を見上げる。


「...」


(帰るか...)



...こうして俺の星夜祭1日目は終わりを迎えたのだった。

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