表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廻生のアリア  作者: jurabisu
第一章
17/107

第17話 4歳、王都レドラム 7

〈私には見えます!貴女の、その姿が...〉


(これは...一体?)


その時、俺の脳裏に一つの情景が浮かんでいた。


左を見れば石造りの家々が斜面に並び、右を見れば空と繋がるように海が広がっている。

太陽は地平線に沈み始め、空は赤く染まっていた。


そんな街で二人の女性が佇む。

一人は小柄でフリルブラウスに軽くローブを羽織った少女。

もう一人は、全身を黒を基調としたローブで包み、魔女っぽい帽子を被った長髪の大人の女性。

二人とも大きな杖を持っている。


少女が女性に話しかけているようだが、最初の声以外聞き取ることが出来ない。

女性は一度も少女を見ずに会話をしているようだった。


(これも...未来、なのか?)


だとしたら、俺は誰の未来を見ているんだ?


そう考えている間にも、その"未来"は続く。




ザアァァァ...


〈貴方は、変わりませんね...〉


(...ん?)


俺が考えていると、いつの間にか景色が変わる。


石造りの大聖堂...

その最奥に佇む神を模した像を、優しい光が照らす。


その広い聖堂の中で、二人の男女だけが息をする。

女性はパイプオルガンを弾き、男性はパイプオルガンに1番近い最前列の席に座り込む。

男性の手には剣が握られ、その刀身には赤い液体が滴っていた。


よく見ると聖堂は所々崩れ、入口付近は崩落している。

その瓦礫に混ざって、"何か"の死体が転がっていた。


この"未来"もさっきと同様、始め以外に音は聞こえない。




ザアァァァ...


〈お前は今まで、いくつの罪を犯した!?〉


(また、変わった...?)


またもや景色は変わり、周囲が闇に包まれる。


天に二つの満月が昇る。

白い月と紅い月...


月の下の岬に、一人の男が佇む。

その男を囲むように厚い鎧を着た騎士達が並ぶ。

始めの声は、その騎士の中の一人の声のようだ。

その騎士は他よりも装飾が施されている。


その場面はどこか物々しい雰囲気が漂っている。


岬に佇む男の周囲には、赤い液体がまわっていた。


...音は聞こえない。




ザアァァァ...


〈私は...ただ、先生に抱きしめてほしかっただけなのに...〉


またまた景色は変わり、天に無数の光が浮く。


そこは、朝のように明るい夜。

小さな丘の頂上で、少女が座り込む。

その少女は最初の"未来"で見た少女のような服装で、身長に合わない大きな魔女の帽子を被っている。

少女は微動だにしない女性を腕に抱え、その頬に涙を流す。


少女の周囲には、機能を停止させた無数の"何か"が宙に浮いて止まっている。


...少女以外の全ては、動かない。




ザアァァァ...


〈僕は、君の笑うとこが見てみたい...〉


また、景色が切り替わる。


夜の雪山。

天には星々が煌めき、シルクのようなオーロラが伸びる。

山の麓には、いくつもの街灯りが淡く光る。

その景色はどこか神秘的だ。


そんな山の頂上に、二つの人影が見える。

片方は、軽装ながら装飾を施された鎧を着た青年。

もう片方は、冬服を着込んだ小柄で可愛らしい少女。


青年は山頂から街を見下ろし、その数歩後ろで少女が星空を見上げる。


どこかロマンチックな場面...


だが、俺には何も聞こえない。




ザアァァァ...


〈私は...人間になれますか...?〉


景色が変わる。


今度は先程とは一変し、明け方の平野。

地面には雪の代わりに死体が積もる。

その死体達はひとつとして同じものはなく、身体の破損の仕方が少ない違っている。


四肢をもがれたもの。

首の無いもの。

腹が裂け、内臓が飛び出したもの。

三枚におろされたもの。

風穴が空いたもの。


死に方は違えど、どれもあまり原型を留めていない。


その死体の山の頂上に一人、少女が佇む。

少女は服を着ていないが身体の所々が毛に覆われている。

また、尾骨のあたりから尻尾が生え、頭部から獣の耳が生えている。


周囲には誰も見えない。

だが、少女は誰かに話をしているようだった。




ザアァァァ...


〈さぁ、始めましょう...〉


更に景色は変わる。


部屋の中央に置かれた大きな円卓。

その円卓を囲むように座る九人の女性。

それぞれの席の前には、菓子とティーカップが置かれている。


おそらく、会議かなんかの様子だろう。


席に座る女性は、九人とも服装や体格が違う。


杖を持っていたり、剣を携えていたり。

長身だったり、小柄だったり。

耳が生えていたり、翼が生えていたり。


誰一人、似たような人間はいない。


これもまた、始め以外音は聞こえない。




ザアァァァ...ザザッ、ザッ


(ん?)


突然、あのノイズの音が不規則になる。

それと同時に俺の視界が乱れる。


(音が...聞こえる...)


ガヤガヤ...


だんだんと、騒がしい音が聞こえてくる。


さっきまでほぼ無音だったから、音を聞くだけで少し安心する。


...だが、さっきの映像?は一体...?


全部で七つ。

まだ意識があったときの"あれ"も含めると、八つ。

ここ数十日の経験から、俺は"未来"を見たと思われる。


でも、なんで急に...?


まだ朦朧とする意識の中、俺は考えるが結論は出なかった。


(まぁ、後で考えればいいか...)




「ん...」

「あっ、リーゼル!」

「んん...お母さま...?」


バサッ


俺が目を覚ますと、リーニャが俺に覆い被さる。


「...体調は大丈夫?気分は悪くない?」

「はい、大丈夫だと思います」

「良かったぁ〜...」


リーニャは胸を撫で下ろす。


「でも、急に倒れるなんて...なにか心当たりある?」


そう聞かれ、俺は首を横に振る。


まぁ心当たりがない訳でもない。

というか、絶対"あれ"だろう。


...じゃあ、なんで言わないのかって?


俺も別にそこまで隠したい訳ではない。

...ただ、嫌な予感がするのだ。


"まだそのときでは無い"


そう、俺の本能が言っているような...

そして、俺はそれに従うべきだと感じた。


ただ、それだけだ。



(...!)


ふと、脳裏に一つの情景が浮かぶ。


「...うっ」


胃がひっくり返るような気分...

"吐き気"が俺を襲う。


オエェェ...


地面に吐瀉物が広がる。


「キャッ!...リーゼル、大丈夫!?」


喉にピリピリと痺れるような感覚がする。

口の中が酸っぱい...


(クソッ...変なの思い出しちまった...)


山積みの死体...

"あれ"が頭から離れない。


どうやら、死体に耐性は無かったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ