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廻生のアリア  作者: jurabisu
第三章
102/107

第102話 8歳、魔女たちの集会 4

「...早速だけど、まずは現状をみんなに共有しておく」


そう言うと、セレネは淡々と現状を語り始めた。


「約1ヶ月前、アルテがリーニャの繭化を確認した。場所はランズガル。予測される"魔女の死(カタラストス)"は..."神化(ルッシェル)"。最後の観測結果から逆算して、猶予は8日」

「繭化して1ヶ月以上か...。死に際の必死の抵抗って感じだね」

「うん。どうやら、街全体が未知の領域で包まれてるみたい。...多分、"神臨(シェイヴ)"してる。」


"神臨"。

その言葉が意味するのは「上位者の顕現、又はそれに伴う災害」。


元はどっかの宗教の言葉だったらしいが、今では「抗いようのない絶対的な力」の例えとしての意味で使われることが多いと聞いた。


ここでは多分、前者の意味で使われている。

つまり、そこには上位者...いわゆる"神"とされる存在が関わっていると言うことだ。


「...最近、ランズガルからの物流の一切が途絶えたと聞いたけど...なるほど、そういうだったか」

「アタシが偵察に向かわせた奴らも帰ってきてねぇからなぁ...。住民は、まず生きてねぇだろう」

「住民の安全確保しなくていいのは気楽でいいね。...でも、情報が足りない」

「そうだ、セレネ。アルテは居ないのかな?こういうのは彼女に聞いた方が手っ取り早いと思うのだが...」

「それは───」


それの返答にセレネは言い淀む。

心做しか、その顔が曇って見えた。


「...いや、言わなくていい。...そうか、逝ってしまったのか」


セレネが小さく頷く。

その姿を見ていると、肩身が狭く感じる。


「...でも、最期に"種"を撒いてくれた」

「"種"?...あぁ、なるほど」


トレスの視線がリーゼルに向く。

それにつられ、皆の視線がリーゼルに集まった。


「道理で君からアルテの気配を感じるわけだ。...そうだ、リーゼル。君、禁書庫の権限はあるのかな?」

「権限?...無いと思います」

「ふむ。やはり、これ以上の情報は得られそうにないね」

「それじゃあ、作戦もクソもねぇじゃねぇか」

「あぁ。ほぼ確実に場当たり的な戦いになるね。...そこで、君はどう考えているのかな?アルテ」


トレスの視線がセレネに戻る。

皆もまた、セレネに視線を戻した。


「...私もほぼ同意見。でも、多少なら対策のしようがある」

「ほう、気になるね」

「状況から見て、今回の繭化は外部からの要因が大きい。それに明確な意思があるなら、幾らか推測のしようがある」

「なるほど。それで、その推測とやらは?」

「ちょっと長くなる」


そう言ってセレネは"推測"を話し始めた。


「近年の天使の増加。それに対処する為の魔女たちの世界各地への分散...。今回のがそれに連なるものだと仮定すると、敵はある程度孤立した魔女か処女、もしくは魔力量の多い人間を探していたと思われる。そこから考えられる目的は3つ。文明の後退、神臨の触媒、宣戦布告。いずれにせよ、私たちの勝利条件はリーニャに干渉することになる」

「この面子もそのため?」

「そ。私が経験豊富かつ突破力があると思った人を集めた。ホントはあと数人呼びたかったけど...各地で天使が増えてる以上、無理強いはできない」

「で?先生、作戦は?」

「...正面突破。敵は極力無視して、私の領域でリーニャを強制鎮静化させる。みんなには私が辿り着くまでの援護と、敵の陽動を頼みたい」

「...ヴィーシャ、旅支度は?」

「はい、既に完了しております」

「セレネ、いつ出向く」

「...今すぐ」


ガタッ


皆が一斉に席を立つ。

急なことだったので俺はすぐに立てず、ちょっと浮いてしまった。


「それぞれの役割は移動中に説明する。それじゃ、行動開始...!」


それの声を皮切りに、皆が各々の準備を始める。

だが、またも俺は動けなかった。


なぜ、皆はすぐに各自の行動を始められたのだろうか?


経験の差というのは細かい所にこそ現れると聞いた事がある。

もしそうなら、現時点で遅れている俺と皆には、どれだけの差があるのだろう。


このまま戦地に赴いて、足手纏いにならないという確証が得られれない。


"行動が遅れた"


そのただ一瞬。

それだけで、俺の心は焦燥に浸った。


「...おい」

「...」

「おい!新入り!!」

「あっ、はい!」

「なにボーッと突っ立ってんだ?」

「すいません。こういう集まりは初めてで...」

「じゃあ早く慣れな。ほら、行くぞ」

「はい...!」




───それから僅か三十分後。


俺たちはリーニャのいるランズガルに向けて、ハーウィアルを出立した。

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