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廻生のアリア  作者: jurabisu
第三章
100/107

第100話 8歳、魔女たちの集会 2

ペタッ、ペタッ...

タッタッタッ...


ハーウィアル領主邸の廊下。

多少装飾されているが、外観と大した違いがない石の通路を、リーゼルとリビア、そしてトレスが歩く。


「...トレスさん」

「ん?」

「あの左腕...」

「あぁ、これ?」


トレスが袖を捲り左腕を差し出し、その指をクネクネと動かす。

実に滑らかな動きだ。


よく見れば、木偶人形にあるような剥き出しの関節はそれに見られず、一つの材木から削り出されたようになっていた。


「それ、魔法ですか?」

「その通り。...昔、戦時中に斬り飛ばされてね。でも、かえって便利だよ」


...シュルッ!!


突如トレスの左手が無数に解け、その繊維の1本1本が鞭のようにしなる。

それらは壁のある一点に向かって矢のように伸び、壁にへばりつくように広がった。


「き、急に何を...?」


シュルル...


トレスの"手"が縮み、元の形に戻る。

元に戻ったその手を見ると、そこには何かが指先で掴まれていた。


「※シェンプナー...」

「それ、蜘蛛か?アタシが知らねぇ種類だな」

「なかなか珍しいヤツだよ。まぁ、噛まれたら死ねるけどね」


ブチッ


トレスがそれを容易く潰す。

その蜘蛛の大きさも相まって、潰れて絶命する瞬間が鮮明に見えた。


「...っと、こんな風に使える。便利でしょう?」


確かにこれは便利そうだ。

だが、脳への負荷も相当なハズ...。


日常的に扱うには数十年単位での訓練が必要だろう。

到底、並の人間が習得できるようなモノじゃない。


「...リーゼル」

「はい?」

「君、"植物系統術師(ラグド・メイン)"だよね?」

「...!」

「ふふっ、そりゃ分かるよ。知りたがりは術師の本能だからね」


...なんだろう。

最近、考えを見透かされ過ぎて心が落ち着かない。


魔女って、そんな技能を会得してるのがスタンダードなのか?


「あっ、そうだ。こうして出逢ったのも何かの縁。君、私の弟子にならないか?」

「...え?それってどういう...」


スゥ...


「消えた!?」


というより、すり抜けた?


特殊な壁?

...いや、普通の石壁だ。

向こう側に空洞があるみたいだが、隠し扉の類いがある訳ではない。


「トレス姉!アタシら、この道使えねぇよ?」


ヌゥ...


「うわっ!?顔が...」


突如、トレスが消えた壁から彼女の顔が浮かび上がる。

それは作り物ではなく、確かにトレスだった。


「すまない、失念していた。この屋敷、普通に暮らしていると不便でね」

「それが貴女の能力ですか?」

「そうだよ。通称は"透過"。見ての通り、物質を透過する...ような能力」

「ような?」

「色々細かい制約があるんだ。君も魔女の類いなら、いつか分かるよ。魔眼は、ずっと複雑に構成されていると」


そういえば、リーニャの眷属でなくなった俺は、一体何の能力を持っているのだろうか?


セレネが言うには、アルテさん由来の魔眼と、不明な魔眼があるらしいが...

ここまで、それらしい能力は発現していない。


アルテさん由来の魔眼なら、絶対腐ることは無いと思うのだが...


「なぁトレス姉...いつまでそうしてるんだ?」

「あぁ、そうだった。まだ案内の途中だったね」


スッ...


「あっ!?ちょっ...」


俺は咄嗟に目を逸らす。

こんな状況...誰だって目を逸らさずにはいられない。


「ト、トレスさん!なんで裸なんですか!?」

「ん、何か問題が?」

「問題しかないですよ!...服は?ローブはどうしたんですか!?」

「服は元々着ない主義でね」

「え...じゃあローブは?さっき着てたじゃないですか」

「あれは魔法製。能力の制約上、毎回解除しなければならないんだよ」

「なら、また纏ってください。今のままじゃマトモに見てられません...」

「ふむ...歳の割に大人びていると思っていたが、そういう所はウブなのだな。...わかった。少し時間をくれ」


(...今のは気のせいか?)


一瞬視界に入ったトレスの身体...

左腕が無いのは知っていたが、全身に夥しい傷跡があるように見えた。


刺傷、切傷、火傷...

ざっと思い返しても、これだけの傷があった。


この人は、俺が想像もつかない程の死線をくぐり抜けて来たのだろう。

それだけ多くの傷跡が消えない程に...。


スゥゥ...


トレスの周囲で魔力が練られ、形を成していく。


...背を向けていてもわかる。

実に繊細な魔力操作だ。


これと比べると、俺の魔法がどれだけ荒いか、その未熟さを実感できる。

もし、さっきのトレスの言葉が本気なら彼女に教えを乞うのも...


...いや、考えものか。


「...よし、これならマトモに見ていられるかな?」

「ふう...助かります」


トレスの着衣が終わり、案内が再開される。

今度の道はちゃんと廊下であった。


「まったく、気にし過ぎだぜ?新入り。アタシらなら、トレス姉が裸でも誰も気にしねぇよ」

「僕に女性の裸を見る趣味は無いですから。それに、そんな事をしてしまったら紳士の名折れですから」

「紳士ねぇ...ガキの癖に一丁前なこと言うじゃねえか」

「こう見えても、貴族の主人に仕える身ですので」

「へぇ、その歳でね...で、その主人の傍に居なくていいのか?」

「今は...無理を言って休職させていただいてます。お嬢様は、あまり納得していませんでしたけど...」

「ふぅん...なら、無事に帰らないとだな」

「...そうですね」



...タッ


「...あぁ、着いたよ」


話が終わる丁度いいタイミングで、トレスが足を止める。


「ここ...ですか?」


領主の部屋にしては...ボロいような?


...あぁ。

今思い返すと、領主の補佐って自己紹介してた気がするな...


いや、それにしてもボロいだろ。

全体的に傷が目立つし、扉の金具とか装飾も錆びててちょっと心もとない。


「古いって思ったかな?」

「い、いえ。そんな事は...」

「ふふっ、誤魔化さなくてもいいよ。私にも色々事情があってね。仕方なくココを使っているだけだから」

「はぁ...」

「なに扉の前で話してんだ?早く入ろうぜ」

「あぁ、そうだね」


ギギギ...


トレスが扉に手を掛け、扉を開く。

扉は軋む音を立て、ゆっくりと隙間を広げた。


(この先に他のメンバーが...)


そう思うと、自然と胸が高鳴るのを感じた。


他の"叛逆者"たち...

一体、どんな強者たちなのだろうか?

※体長10cmほどのクモの一種。数ミリグラムで大型の獣を昏倒させる毒と、強酸性の溶解液を持つ。フォルスティア北方の厳しい冬を越す為に長い冬越しを行うが、大半は越せずに死んでしまうためとても珍しい。

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