表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

選ばれた理由

寒くなってきました。季節の変わり目、体調にお気を付けて。

「なぜあの者なのですか」


 リアーチェ・デイネルス侯爵令嬢に食って掛かるのは、伯爵家出身の学生たち。


「王族方の側近の地位が、高位貴族のものなのは当然でしょう。我らとて分不相応な高望みは致しません。しかし、第三王子殿下は例外だと、デイネルス侯爵家へ婿入りされる方だと(おっしゃ)るなら、我々にお話あってしかるべきでは」

「そうです。ランドール家は子爵、下位貴族ではありませんか。それも嫡男ではない。将来は家を出て準貴族になる男でしかない。何故彼が選ばれるのです」


 十人近くの男子学生に囲まれても、リアーチェに焦りは見えなかった。

 ここは校舎と学生寮の間にある公共の広場。中位貴族が高位貴族である侯爵令嬢にあからさまに逆らうには、人目が有り過ぎる。

 身分にこだわる彼らなら、なおさら無体な手出しはできないだろう。


「あら、皆様、レイモンド様のノート係に立候補していただけますの。でも、宜しいのかしら。レイモンド様のお取りになられた授業全てに出席されていては、ご自身の学業に影響が出てしまわれますわよ。特に上級生の方は、今から一学年の授業を受け直しても重複するだけで無意味では」


 ぐっと言葉に詰まったのは、二年生と三年生。

 学園には、退学はあっても留年はない。将来の進路に合わせて好きな授業を選択できるが、上級生向けの科目を一つも取らなければ、卒業に必要な単位が不足してしまう。

 学園を卒業不可となれば、貴族としての将来は閉ざされる。第三王子殿下の側近になる以前の問題だ。


「それに、皆様のうち、どなたかが選ばれたとしたら。残りの方は納得して引き下がれるのかしら」


 ザワリと、動揺が走った。


「伯爵家の者がレイモンド様の側近候補に成ったら、周囲から頭一つ抜け出せますわ。正式に側近となれば、将来、我が侯爵家で大きな影響力を振るうことになるでしょう。皆様の中のただ一人だけが、ですわ。それを指を咥えて見ていられますの」


 デイネルス侯爵家の寄り子、そして従属爵位。ほとんど横並びと言って良い伯爵家に、明らかな序列ができる。


 今までの同輩の風下に立つことを、許容できるのか。

 リアーチェが提示した問いは、彼らの連携に深刻な亀裂を入れた。


「侯爵家としては、家門に波風を立てたくありませんのよ。その点、下位貴族の子爵家の者なら、そう大きな影響力には成りませんわ」


 自分たちの誰かが抜け駆けするよりはマシかもしれない。しかし、自分たちが選ばれないのは、やはり……。


「ランドール子爵家は、我が侯爵家の寄り子ではありませんわ。完全な外様。それに、あくまでも側近候補でしてよ。学園内のノート係ですわ」


 そうか。側近にするつもりは無いのか。


「なぜ彼を選んだか、でしたわね。エザール卿はAクラス、レイモンド様のクラスメイトで、同じカリキュラムを無理なく組んでいただけましたの。それに、彼は優秀でしてよ。学年トップクラスの学力はノート係として魅力的ですわ」


 しょせん下級貴族、学園内で使い潰しても惜しくはないか。


 彼らは気付かなかった。

 自分たちが思考誘導されていることに。リアーチェが、エザール卿の将来について一言も断言しなかったことに。





「よろしく頼むよ。期待している」

 第三王子殿下に直接お言葉を頂いたら、断ることなどできるはずがない。


「畏まりました」

 エザール・ランドール子爵家令息は、内心を顔に出すことなく、深く頭を下げた。







 リアーチェ嬢、女傑の片鱗を見せています。侯爵家の跡継ぎですからね、これくらいはできないと(笑)


 ちなみにエザール君にお言葉を掛けたのは、テイラム君です。

 明日はマーク君のお話を更新したいです。


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 「以前に貴卿が言っていた○○の件、検討すると約束しようじゃないか」 後日 「貴卿からの件だがね、検討してみたがどうも無理があるようだ。残念だろうが今回は諦めて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ