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プロローグ
「ひまわりは太陽を向いて咲くってよく言うけど、たいていの植物は太陽に向かって伸びるよね」
彼女は一面に広がるひまわり畑の中で、そんなことを呟いた。
目がくらむような日差し、冴えわたる青い空に大きな入道雲が浮かぶ。遠く霞がかって見える山の輪郭と、近くに咲くひまわりのくっきりとした黄色のコントラストが目にまぶしい。
真夏の風景、その中心に彼女がいた。
白くシンプルなデザインのワンピースにつばの広い麦わら帽子、そして足元には簡素なサンダルをひっかけて。
「日陰を好む花もあるけどね。私、植物って好きだな。いろんな生き方とか姿があって」
強い風が吹くと、波のようにひまわりたちが揺れる。帽子が飛ばされそうになるのを彼女は手で押さえた。それから、こちらへ笑いかけてくる。
「ねぇ、私が死んだらそこにひまわりを植えてくれない?」
彼女は二週間後に死ぬことが決まっている。
病気でも事故でもなく。
「駄目かな。これが私の――――最後のお願い」
彼女自身の行動の報いとして、呪い殺される。