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魔力無しですが溺愛されて聖女の力に目覚めました  作者: しろまり


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98.茶会の誘い…ではなく、ただのお茶

あれから数日。いくつもの建物を見回って、ようやく王城内の見学は終わった。庭園は何個もあるし、広すぎるので全部は網羅できていないけれど。


王城内って本当に広いのね。迷子になるのでは?と僅かに不安を感じたのだけど、部屋の外に出る時は必ずマリーかフェリシアが一緒で、案内するように歩いてくれるから今のところ問題ないわ。


ところで、元々シリウス様についていたフェリシアは別としても、いつマリーは王城内部を覚えたのかしら?


コツがあるのなら聞きたいのだけど。

まだ私は主だった場所しか覚えていないのよ。


先程まで一緒に、シアリーに餌をあげていたシリウス様は王太子の仕事があるからと執務室へ向かった。


ということは、私にも王太子妃の仕事があるのでは?と思って尋ねたら、今はまだないとのこと。


それでは、私は聖女について勉強することにしましょう!


シリウス様に聖女としてする事はないと言われたから、聖女の力を使う予定はないけれど、知識は蓄えておかなくてはいけないわ。


だって、何が出来るのか知っておかないと、いざという時に使えないでしょう?


シリウス様の言う『緊急事態の時』に役に立たなかったら、目も当てられないわ。備えあれば憂いなし! 早速、図書館に行きましょう。


そう、王城内には大きな図書館があるの。

そこには聖女に(まつ)わる書物もあるというから、そこで勉強するつもりよ。


膝の上で気持ち良さそうにしているシアリーと離れがたいけれど、私も出来ることをすると決めたのだから精一杯やらなくてはね。


マリーにシアリーを預けて、図書室へ行こうとしたらフェリシアが1通の手紙を持って来た。


また手紙?

今度は誰からかしら?


差出人を見ると、そこにはレイチェル様の名前があった。


「レイチェル様からだわ」


どんな内容かとドキドキしながら、封を開ける。


「これは……お茶会の誘いだわ!」


その手紙には『話がしたいから、お茶をしないか』という事が書かれていた。

ずっと茶会に参加できなかった私に届いた、お茶会の誘い。


今なら、参加することも許されるわよね。


私は期待に胸が膨らんだ。


「これは、レイチェル様の屋敷を訪ねれば良いのかしら?」

「いいえ。アリシア様は王太子妃であられますので、こちらにレイチェル様が訪問されます」

「あ、そうなのね」


疑問に答えてくれたフェリシアの回答に、私は少しだけガッカリして肩を落とした。


どんなお茶会が開かれるのか楽しみだったのだけど。

でも、仕方ないわね。ん、待って?


「ということは、私が茶会を開く側? 主催者になるの?」

「レイチェル様と一対一のお茶ですので、そこまでの事ではないですよ」


次に答えてくれたのはマリーだった。


あ、そうよね。

私としたことが、“お茶の誘い”に浮かれてしまったわ。


よくよく手紙を見てみれば、どこにも『お茶会』とは書かれていない。


私の早とちりだわ。


少し恥ずかしくなったので、誤魔化すように咳払いした。そして、マリーがメイドにシアリーを預けに行くのを横目で見ながら、再度コホンと一つ咳をする。


「それで、いつが良いのかしらね?」

「レイチェル様からは『いつでも』と。今すぐにでも構わないと言付かっております」

「えっ?」


フェリシアの言葉に私は一瞬、止まった。

今すぐでも構わないということは、もしかして


「それは、つまり……レイチェル様は今、ここにいらしているの?!」

「はい」

「なんてこと! お待たせしてしまっているのね。早く行きましょう!」

「アリシア様、落ち着かれてください。今すぐではなく、数日後でも問題ありません」

「でも」

「そうですよ。突然、訪問されたのはレイチェル様の方なのですから。先触れも出さず会おうとするなんて、非常識ですよ」

「そうなの?」


慌てて立ち上がった私に、フェリシアとマリーは諭すように着席を促す。


確かに。


普通、貴族の訪問というのは数日ほど間を空けて設定されるもの。

それに、先触れを出すのが通例なのだけど。


シリウス様との婚姻を正式に発表していないということは、世間的に私は伯爵令嬢。かたや、相手は公爵令嬢よ。先触れを出さなくても良いと判断したのかもしれないわ。


「それでも、今いらしているのなら、お会いするべきだと思うわ」


それが尋ねてくれた方への礼儀だと思うから。

そう思って、会うと言えばフェリシアは頷いた。


「かしこまりました。そのように、お伝えいたします」

「あ、どこでお茶をするのが良いのかしら?」


そう、場所も大事よね。まさか、この部屋でシリウス様の時のようにするわけにはいかないでしょう。さすがにリラックスしすぎだと思うのよ。


「庭園の東屋がよろしいかと」

「あぁ、良いわね。花が綺麗で落ち着けるもの。あ、直ぐに用意するのは大変かしら? 難しいのなら、やはり後日でも」

「問題ありません。わたくしにお任せください」


ここでやっと“準備するのが大変では”と気づいてハッとした私に、フェリシアの頼もしい返事が返ってくる。


さすがフェリシア、頼りになるわ。


「それでは、わたくしは準備してまいります」

「お願いね」

「では、お嬢様はこちらへ。目一杯、お洒落しましょうね」

「えっ、マリー?」


フェリシアは部屋の外へと、マリーは私をフィッティングルームへと連れて行く。


「え、着替えるの?」

「そうですよ。お茶をされるのですから、おめかしするのは礼儀です」

「そうなの?」

「そうです」


強く頷いたマリーは、小声で何か呟いている。


「まったく。あの無礼な令嬢に、お嬢様が如何に素晴らしく愛らしく美しいのか見せつけなくては。先日の、お嬢様を品定めするような、あの不躾な視線。許しがたいわ。シリウス様も何故、あの令嬢の入城を許可されているのか。公爵家の人間だからって、調子に乗らないで欲しいわ」

「マリー?」


小さすぎる声は聞き取れなくて、聞き返したらニッコリと笑顔が返ってくる。


その背後に黒いものが見えて、いくつかのドレスを手にするマリーに私は「何でもないわ」と気づかない振りをした。

あれ、書きましたっけ? 王城でレイチェルと対面した時、後方にマリー達が控えていたって。

いや、当然アリシア達と同行しているわけで…そこでレイチェルの品定めを見ていたマリーは”見返してやる”と闘志を燃やしていたりします(^^)

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