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魔力無しですが溺愛されて聖女の力に目覚めました  作者: しろまり


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83.クローバー川(シリウス視点)

順調に馬車は進み、目的の場所に近づく。


そろそろ見えてくる頃だろう。


「わぁ!」


馬車の窓に大きな川が映ると、アリシアは歓喜の声を上げた。


そう、今日の目的はクローバー川だ。


窓に張り付くアリシアは、石橋を渡りながら見える景色に釘付けだ。


やはり少し遠回りをしても、ここを通って正解だったな。


ほどなくして石橋を渡り切ると、馬車は止まる。


「アリシア、少し休憩しようか」

「はい!」


川を間近で見られることに、アリシアの声は弾んでいる。


馬車を降りたところで、アリシアは石橋の方を見てモジモジし始めた。

何か言いたげだけど、言ってもいいのか迷っている様子だ。


「アリシア? どうしたの?」


僕が顔を覗き込みながら尋ねると、アリシアは「あ、あの……」と口籠る。

そして口をパクパクさせた後、意を決したように僕の方を見た。


「あ、あのシリウス様、お願いがあるのですが」

「うん?」

「あの橋を渡ってみたいのです」

「橋? 今、渡ってきたばかりだけど?」


えっ、引き返したいの?

まさか、ダノン国に戻りたいなんてことないよね?


「その、橋を歩いて渡ってみたくて。途中までで良いのですが、あっ、警備の関係がありますよね。すみません、我儘すぎました」


アリシアは言いながらハッとしたようで、シュンと眉尻を下げた。


先日、僕が『我儘を言って欲しい』と言ったから、勇気を出してくれたのだろうか。


「その程度のことを我儘とは言わないよ」


僕はフッと苦笑しながら、アリシアの髪を撫でる。

チラリとジュリアンに視線を送れば、コクリと頷いた。


「警備の面は問題ないから大丈夫。さぁ行こう、アリシア」


そう言ってアリシアの手を引くと、明るい顔が僕に向けられた。

それだけで僕の心はフワッと温かくなる。


もしかして、これがアリシアからの初めての願い事ではないかな?


いや、こんな些細なことを『願い事』というのは大袈裟だ。

もっと大きなことを願って欲しい。


アリシアが望むなら、どんな願いだって叶えるのに。


アリシアは“あれが欲しい”とか“これが欲しい”とか強請らないから、もどかしい気持ちになる。もっと我儘を言いやすい状況を作り出すべきか?


アリシアは歩きながらキョロキョロと頭を動かして、時折コツコツと石橋を叩くように靴を鳴らす。そして、橋の真ん中辺りまで来ると足を止めた。


「わぁ、大きい橋ですね!」


アリシアは歩いてきた半分と、その先の半分を交互に見て感心している。

なるほど、歩いてこそ分かるものもあるんだな。


「それに、とても綺麗な景色です」


橋から川へと視線を動かしたアリシアの瞳はキラキラと煌めく。


川なんて珍しくもないものなのに、見ている景色も川と木々だけなのに、アリシアは楽しそうにしている。


日々通り過ぎてしまうような、ありふれた何気ない風景もアリシアにとっては特別に見えるのかもしれない。


その瞳には、どんな光景に映っているのだろうか。


もっとアリシアに色々な景色を見せたい。綺麗なものでアリシアを満たしたい。

そんな気持ちが胸いっぱいに広がった。


「川も大きいですね」

「あぁ、この川は国一番の大河だからね」

「国で一番ということは、クローバー川ですか?」


僕が「そうだよ」と答えると、アリシアは「フェリシアから教えてもらいました」と微笑む。学んだことを実際、目に出来て嬉しいようだ。


そうして暫くの間、周りの景色を楽しんでいたのだが……川を眺めていたアリアシが突如、橋から身を乗り出したので、僕は慌てて細い腰を掴んだ。


「アリシア、そんなに身を乗り出したら危ないよ」

「あ、すみません」


アリシアは僅かに身を引いて、今度は橋の欄干に手をついて慎重に下を覗き込んでいる。


何か気になるものでもあるのだろうか。

橋の下には、ただ川が流れているだけなのだが。


「アリシア?」

「こうして見ると、川の上に立っているみたいですね」


顔を上げたアリシアの笑みが、新しい発見をした子どものように輝いていた。

言われて、僕も橋の下を覗いてみる。


「確かに、そう感じるね」


そんな風に考えたことがなかった。

そもそも橋の下を覗き込んだことすらない。


でも、覗き込んだとしても“川の上に立つ”なんて発想は、きっと僕には出来なかっただろう。


アリシアといると、新しい気付きがある。

本当に素敵な奥さんだ。


橋の下から足元へと視線を移したアリシアが、つま先でコツコツと靴を鳴らした。


「ねぇ、それは何をしているの?」

「あっ」


先程から気になっていたことを尋ねると、アリシアは恥ずかしそうに顔を赤くした。


「その、構造的には分かっているのですが、実際に積まれた石が崩れないのが不思議で」

「うん?」

「こう、縦に石を積むなら何も疑問に思わないのですが、横に並べても崩れないのが凄いなと。この仕組みを考えた人は偉大ですね」


またも、アリシアの発想に僕は目を瞬かせた。


そんなこと考えもしなかった。

今まで、当たり前すぎて疑問に思ったことすらない。


しかし言われてみると、確かに素晴らしい技術なのだと思う。

この技術があるからこそ、流通が発展できたのだから。


「そうだね」


僕とアリシアは互いを見つめた後、視線を落としてコツコツと靴を鳴らした。

多くの人が行き交う橋の上で、誰も僕らを気にすることなく通り過ぎていく。


この何気ない光景に気付く人はいるのだろうか。

本当、本当に石橋の構造は分かっているんです。いるんですけど、やっぱりブロックがアーチ状になっているのを見ると崩れないのが不思議だな~って思っちゃうんですよねぇ(´∀`*)

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