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魔力無しですが溺愛されて聖女の力に目覚めました  作者: しろまり


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66.旅立ち

翌日まだ薄暗い中、早朝に立つということで私の部屋は荷物を運び出すため騒がしくなっている。


急遽決めたことだから、私だけでなく皆も荷造りが大変では! と思ったのだけど、私が卒業パーティーに行っている間に事情を聞いたマリー達は、こうなるだろうと予想して既に荷造りを終えていたとかで、準備が出来ていないのは私だけだったらしい。皆、本当に察しがいいわね。


そして今、マリー達が荷物について指示を出している中、私はソファに腰かけている。その横にはクラディア家から持ってきたトランクケースが2つ。昨晩の内に自分で詰めた荷物だ。


「マリー、少しいいかしら?」

「何でしょうか、お嬢様」


忙しいとは思いつつ、マリーを呼び止めた。

ごめんね、大事な確認があるの。


「クラディア家でマリーが何度も手直ししてくれていた……たった一着しか持っていなかった、あのドレス。手放してもいいかしら」


過去と決別するために処分しようと思った。

けれど、ある意味では思い出深いものだから、マリーの気持ちも捨てるようで躊躇いを感じる。


マリーは私の言葉を聞いて少し目を見開いた後、緩やかに笑みを浮かべた。


「もちろんです」

「いいの? マリーが手を掛けてくれていた物なのに」

「でもお嬢様には、もう不要な物です」


私の決意をマリーは察してくれたみたい。

マリーは私のジッと見つめ、背中を押すように力強く頷いてくれた。


「ありがとう、マリー。では、このトランクケースは処分してちょうだい」

「かしこまりました」


トランクケースを2つ、手にしたマリーは部屋を出て行った。


あの中にはクラディア家からクロフォード家に持って来たものを、そのまま詰め込んである。もちろん、あのドレスも。それに制服と教科書も。


マリーの言う通り、もう不要よね。

クラディア家のことも、学園でのことも、今の私には要らない。

それに、これからの私にも必要ない。


シリウス様が居て、マリーやフェリシア、ジョン達が居て、大切な人達が居る。

それだけで十分。


そう思いながら、首元のネックレスに手を当てた。

スターサファイアの六条がキラリと光る。


(十分と言っておきながら、私は欲深くなったわ)


ぬいぐるみのシリーとアリーは厳重に箱に収められている。もちろん、プロポーズの時のチューリップの花束も、枯れないよう水に差して箱詰めされた。


(あのまま綺麗に保管したいのだけど、どうにかドライフラワーに出来ないかしら?)


他にもシリウス様から頂いた物は全て丁寧に梱包され、今頃は荷馬車に積まれていることだろう。


(ここの来た時はトランクケースが2つだけだったのに、今は大事な物が増えたわね)


「お嬢様、そろそろ出発のお時間です」


戻って来たマリーに促されて、私はソファから立ち上がる。

そして室内を一周ぐるりと見回すと、名残惜しく感じつつも部屋を後にした。


玄関を出ると、そこには―――


「あ!」


ここに残る使用人達がズラリと並んでいて、思わず声を上げてしまう。

どうやら見送りに来てくれたようで、皆「お嬢様」と声を掛けてくれた。


「皆、ありがとう。あ、ベル、結婚おめでとう!」

「ありがとうございます、お嬢様」

「マルク、お子さんが出来たのね、おめでとう!」

「お嬢様、ありがとうございます」


私は精一杯の気持ちを込めながら一人一人、手を握って声を掛けていく。

嬉しそうだったり、悲しそうだったり、皆それぞれの思いを顔に宿して握り返してくれた。


「お嬢様を頼んだよ」

「もちろんです」


私の後ろでは、私と共に行く使用人達が、ここに残る使用人達に声を掛けられている。その筆頭は、もちろんマリーだ。やっぱりマリーは特別。


私はマリーに向き直って、胸の中にある今の気持ちを伝えた。


「あのね、マリー。私の傍にいてくれて、ありがとう。ずっと一緒にいてくれて、ありがとう」

「お嬢様……」


マリーのおかげで、今の私がいる。

ちゃんとシリウス様の気持ちを受け取ることが出来たのも、マリーのおかでだと思う。


マリーだけじゃない。

ジョンやゴードン、ジョナサンや他の使用人達もいてくれたおかげ。


皆がいなかったら、きっと……キャロラインの言う通り、私は“愛されない人間”だと思い込んでいたと思う。だって誰も私に好意を示してくれないのだから。


もしマリー達がいなかったら、きっと私は今とは全然違っていて、もっと人を拒絶する人間になっていたかもしれない。もっと暗く、希望も持たず、前を向くこともなかったかもしれない。何もかも諦めていたのかも……学園に通いたいとすら思わなかったかも。そうしたらシリウス様と出会うこともなかった。シリウス様に好かれることもなかった。


だから今の私があるのは皆のおかげ!

ありがとう。皆が幸せになれるように、今度は私の番。いつか恩返しをしたいわ!!


「皆も、ありがとう。皆に優しくしてもらって嬉しかったわ。今まで私を支えてくれて本当にありがとう!」

「こちらこそ、お嬢様にお仕え出来て光栄でした」


誰かが言った一言に「私も」「俺も」と声が上がる。

その中でジョナサンがニッカリと笑みを浮かべ、バスケットを差し出してきた。


「お嬢様のお好きな物をいっぱい詰めておきました!」

「ありがとう!」


この会話をするのは二度目だわ。

ジョナサンの気持ちが、あの時も今も嬉しくて視界が潤む。


「デニーに全てのレシピを伝授してありますから、あちらでもお嬢様のお好きな料理を作れるはずです」

「ありがとう、ジョナサン」


受け取ったバスケットは、あの時より重く感じた。

もしかしたら、あの時より沢山入っているのかもしれない。きっとジョナサンの気持ちも。


そのバスケットを、いつの間にか傍にいたシリウス様がスッと手にする。


「重そうだから、僕が持とう」

「ありがとうございます」


その様子を見ていた皆が一斉に綺麗なお辞儀をする。


「シリウス様。どうか、お嬢様のことをお願い致します」

「あぁ、もちろんだ。アリシアのことは任せてくれ。絶対に幸せにするから」


皆の気持ちに感極まっていたところに、シリウス様の言葉が響いて……もう何だか照れくさいとか、嬉しいとか色々な気持ちが混ぜこぜになって……胸が震えて、涙腺が崩壊してしまった。


「ありがとう、皆。ありがとう! 皆の幸福を心から祈っているわ」


言った瞬間、朝日がサァーッと差し込んで皆を照らしていく。

私は頬を濡らしながら、馬車に乗り込むと窓を開けた。


「お嬢様、どうかお元気で」

「皆も元気でね!」


皆に見送られる中、騎士を先頭に、お義父様達が乗った馬車、次に私達の馬車と順にゆっくりと走り出す。


私は皆が見えなくなるまで、窓から顔を出して手を振り続けた。



*******



「寂しい?」

「いいえ」


窓から乗り出していた身体を戻したところで、シリウス様に話し掛けられた。

私はハンカチで目元を拭いながら「大丈夫」と言いかけて、言葉を飲み込む。

シリウス様には、ちゃんと私の感じていることを伝えた方がいいと思ったから。


「少し、寂しいです。でもシリウス様がいてくださるから。マリー達もいるので大丈夫です!」


私が微笑むと、シリウス様も優しく微笑んでくれた。


シリウス様と私を乗せた馬車は、どんどん屋敷から遠ざかっていく。

あのお出掛けした街の横を通り過ぎ、王都の壁を抜ける。

もう、この門をくぐることもないだろう。


クロフォード家に来てから3ヶ月。

クラディア家と学園以外、外に出られなかった私が街に出掛けられただけでも驚きなのに、隣国に行くなんて思ってもみなかった。


(そう思うと、とても感慨深い気持ちになるわね)


周りから徐々に建物が減っていき、草花や緑が多く目に付くようになる。


ついにはポツリポツリと家屋があるだけになり、目の前には田園風景が広がった。

その辺りで急にスピードが上がり、窓の外の景色は物凄い速さで変わっていく。


(え、いや……これは流石に速すぎない? 馬の出せるスピードではないと思うのだけど?)


不思議に思ってシリウス様に尋ねると、予想外の答えが返ってきた。


「あの、やけにスピードがある気がするのですが……」

「あぁ、言ってなかったね。この馬車は高速馬車なんだ」

「高速馬車?」


初めて聞く単語に尚のこと私は首を傾げた。


「ダノン国にはない技術だよね。この馬車は魔法で強化しているんだ。馬の負担にならないように重さを軽減させたり、まぁ簡単に言うと軽く浮いて走っているんだよ」

「浮いて?! それで全然揺れないのですね!」

「うん。それから魔法で馬も強化しているから、通常の2倍以上の速度で走れるんだ」

「2倍以上?! それで、このスピードなのですね! あ、でもそんなに速いと危なくはないのですか?」

「その安全確認のためもあって、騎士達が先行しているんだよ」

「なるほど」


騎士達が先頭を走っているのは、そういう安全確認のためでもあるのね。


「それに障害物とかあると危険だから、走れる道は限られてしまうけどね。それでも普通の半分の時間で移動出来るんだ」

「そうなのですね」


私は感心しながら、窓の外を見つめた。目で追うのが、やっとの速さ。

これならきっと、あっという間にイングリルド国に着くことだろう。


新しい旅立ちに期待と不安が入り混じりながらも、私は何だか晴れ晴れとした気持ちになっていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます(* .ˬ.))


今ならハッキリ言えます。クライマックスはプロポーズの回です!!

(精神的クライマックスは65話です!!)

(書いている時は、どこがクライマックスか、よく分からなかったんですよ~)


さて、ここで一区切りかなぁと思います。

(いや、あと2話後かも…いや…もう、一区切りってどこですか?!)


いやー、よもや66話になるとは…書き出した時は思ってもみませんでした。

40話ぐらい書けたらいいなって思ってました(笑


最初はね……虐げられたアリシア、「僕の奥さん!」という台詞、結婚ではなく養子手続き、魔獣退治で覚醒する聖女の力、この4点しか考えていませんでしたからね(^^*)


この後は、卒業式翌日のクラディア家(ほらアリシア父はざまぁされてないしw)、初めての山・森・川ではしゃぐアリシア(笑)、事故のおかげで聖女の力を自覚するアリシア、イングリルド国でちょっと(どころじゃないけど詳しく言うとネタバレですよね?でもまぁ少し言うなら、イングリルド国にシリウスのことを好きな令嬢がいないわけなくない?)事件が!てな感じを予定しています。


あ、最後の最後になりますが、何故アリシアが家族から忌み嫌われていたのかも、もちろん判明します!


最後はどうしようかなぁ。やっぱり結婚式のシーンがラストがいいですかね?

(実は最終話はすでに、ある程度書いてあるんですけどね。まぁ続きを書いている内に気が変わるかもしれないですけど←)


時に、ここまでお読みいただいた方にお尋ねしたい!

話しの内容とタイトルは合ってますか?

というわけで、ツイッター…じゃなくてXになったんでしたね。

そちらで投票行っていますので、ポチッとしていただけますと幸いです↓

https://twitter.com/shiromari74/status/1737931918694617186



この続きも頑張って書いていきますので、応援いただけると嬉しいです(_ _)

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