53.いざ、卒業パーティー!
支度は全て整った。
卒業パーティーの会場がある学園に向かうため、私は馬車の元へ。
そこには、すでに準備を整えたシリウス様がいた。
(はわわぁぁ、カッコイイ)
今日のシリウス様は一段と格好良かった。
思わず息を飲んでしまう程だわ。
このパーティーのために作られた衣装は、群青色の生地に銀糸の刺繍が施されている。ドレスと揃いだから当然同じようなデザインなのだけど、シリウス様が着ると一段と際立って見えた。
(これはオールバックというのだったかしら?)
いつものサラサラと揺れる髪型と違って、スッと纏められていた。
煌めく銀髪はいつもより見える面積が少ないのに、衣装も寒色の青がメインなのに、そこに明かりが灯ったようにシリウス様は眩しく輝いている。
その凛とした佇まいに見惚れていると、私を見たシリウス様は一瞬動きを止めた。
互いが互いを見つめ合う……は、恥ずかしいわ!
私が思わず手で顔を覆おうとするより先に、ハッと我に返ったような顔をしたシリウス様がこちらへ歩いてきた。
「綺麗だよ、アリシア」
「シ、シリウス様も素敵です」
「ありがとう。では、行こうか」
微笑みながら差し出された手を取って、私達は馬車に乗り込む。
本当に素敵。
シリウス様の服装は瞳の色と同じ深みのある青で、よく似合っている。
ん、待って。
その青はシリウス様の瞳と同じ色。このドレスはシリウス様と揃い。
そして、このアクセサリーはドレスの色に合わせている。
ということは……
あぁぁ、私はドレスもアクセサリーもシリウス様の色を纏っていることになるのでは?!
(だ、大丈夫よ、これはただの揃いなのだから。別に、シリウス様の色を纏うという意図があるわけではないわ)
暫くの間、ドキドキして頭がいっぱいだったけれど、深呼吸をして何とか落ち着かせた。
そうだわ、お礼を! こういうことは、ちゃんと言わなくてはね。
「シリウス様、素敵なドレスとアクセサリーをありがとうございます!」
「どういたしまして。でも気にしないでね、僕が贈りたかっただけだから」
『贈りたかった』って、まさか。
さっきのフェリシアの言葉……『シリウス様の独占欲』って、まさか!
シリウス様の色を纏うという意図があるの? ないの? どっちなの?!
うぅ、どう判断したらいいのか分からないし、何と言ったらいいのかも分からない。
頭の中は混乱しているし、今日のシリウス様は眩しすぎて顔が見られないから、誤魔化すように胸元に目線を置いた。
そこには私が刺繍を施したタイが。
クロフォード家の家紋は少し複雑で手子摺ってしまったけど、妥協せず練習を繰り返したおかげで完璧なものが出来上がり、我ながら満足している。
それにしてもシリウス様はカッコイイ。
あぁ、このドレスとアクセサリーお高そうだわ。
ぼんやりとしながら思考をあちこちに飛ばしていると、シリウス様は私の顔を覗き込むように声を掛けてきた。
「アリシア、緊張している?」
「あっ、はい! この綺麗なドレスを汚したり、高価なアクセサリーを傷付けたり落としたりしないか心配で……」
「あ、そっち? ふふふっ、心配しなくても大丈夫だよ」
シリウス様はクスクス笑っているけど、私は大いに心配です!
そうして談笑している内に、気づけば学園に到着していた。
手を引かれて馬車を降りると、シリウス様は私の名前を呼んで小脇を開ける。
(パートナーとは腕を組んでいくのよね)
その僅かな隙間に私は手を差し入れ、シリウス様にエスコートされながら会場へと向かった。
卒業パーティーは学園の大ホールで行われる。
いつも式典など特別な行事で使用される其処は、大きなシャンデリアに真っ赤な絨毯が敷かれ、装飾も凝った豪華な作り。
「シリウス・クロフォードとアリシア・クロフォードだ」
シリウス様が名を告げて、扉の横に立つ警備兵が名簿を確認していく。
卒業パーティーには卒業生とその親族だけが参加できる。使用人を連れていくことは出来ないけど、代わりに給仕係や警備兵が配置されていた。
そういえば数日前に小耳に挟んだのだけど、今日はライオネル殿下もいらっしゃるのだとか。卒業生に縁があるのかしら?
もしかしたら、いつもより警備が厳重かもしれないわね。
ちなみに王族は必要最低限ではあるけど、使用人や騎士の同行を許されている。
確認した警備兵によって重厚な扉が開かれた。
私達が足を踏み入れると「おい、あれ」と誰かの声が聞こえ、ざわっと辺りが騒がしくなった……気がする。
え、もうこんなに人が集まっているの? もしかして到着が遅かった?
ハッ、まさか私の支度に時間が掛かった所為? ど、どうしましょう?
思わずシリウス様を見たら、私の視線に気づいたのか「そんなに緊張してなくても大丈夫だよ」と微笑んだ。どうやら私が緊張していると思ったみたいだけど……心が読まれない時もあるのね。
「いえ、あの、私の用意に時間が掛かった所為で来るのが遅くなって申し訳ありません」
「え? あぁ、違うよ。わざとギリギリに着くようにしたんだ」
え、そうなのですか? 何故?
問うような目線を送りつつ、首を傾げたら
「綺麗なアリシアを他の人達に出来るだけ見せたくなくてね。会場に入った時から皆、君に注目しているけど」
シリウス様は困ったように笑っていた。
え、えっ? ざわついたのは私に注目が? いや、まさか!
何故私を見せたくないのか、よく分からず疑問はより深くなるばかりだけど、とりあえず私の所為で遅れたわけではなかったみたいで良かったわ……いえ、私を見せたくないということは、やっぱり私の所為?!
“う~ん”と考えながら会場の中へ進むと
「今日のシリウス様もカッコイイですわ」
「えぇ、本当に素敵ですこと」
令嬢達の視線が一気に集中して、通り過ぎ際に感嘆の溜息を洩らしている。
分かるわ!
今日のシリウス様はいつにも増して凛々しく格好いいですものね!
“うん、うん”と心の中で賛同していたら、令息達の声も聞こえてきた。
「なぁ、あの綺麗な令嬢は誰だ?」
「さぁ、分からないが……本当に綺麗だ」
誰だろう、そんなに賛辞を浴びているのは。
私の後ろに誰かいるのかしら? と振り返ったら、綺麗な縦ロールを見事に決めたエリザベス様がいた。あぁ、なるほど!
「おい、あの綺麗な令嬢はアリシア嬢じゃないか?」
「えぇっ、まさか!」
「シリウスのパートナーだから、アリシア嬢で間違いだろう」
「確かに、よく見るとアリシア嬢だ……あんなに美人だったのか」
え、えぇっ?!
私のことだったの?!
驚いていると、シリウス様は得意そうにも不快そうにも見える複雑な顔をしながら言う。
「皆、アリシアのことを見ているね」
「えっ、そんなことは」
「今日のアリシアは一段と綺麗だから無理もないけど。ほら、皆が君の美しさに驚いているよ」
シリウス様が微笑みながら軽く周りを見回すので、私も同じように視線を這わせた。
皆の反応とシリウス様の言葉の所為で、戸惑いの上に戸惑いが覆い被さってくる。
(う~ん、令嬢達はシリウス様を見ていると思うけど)
でも自分で言うのもなんだけど、今日の私は綺麗だと思う。
鏡の前で、お姫様みたいだわ! と思ったぐらいだもの。
それもこれもシリウス様が綺麗なドレスとアクセサリーを用意してくれたおかげ。それにマリー達が全力で、おめかししてくれたおかげ。そして、そのマリー達をシリウス様が雇ってくれている。だから今の私があるのは
「シリウス様のおかげです!」
私が微笑みながら「ありがとうございます」と再びお礼の言葉を口にすると、シリウス様は「アリシアを美しくしたのは僕だったのか」なんて言いながら笑っていた。
暫くすると、壇上に学園長が現れて少し長い挨拶と卒業の祝辞が述べられた。
その後は卒業生代表の挨拶となる。
本来は首席の私がするはずだけど、声を掛けられることはなく。次席のシリウス様も断固として断った。だから三席のパトリシア様に白羽の矢が立ったみたい。
壇上に上がるパトリシア様は、堂々とした様子で挨拶を述べていた。
流石は侯爵令嬢、しっかりと大役を果たしている。
(でもパトリシア様なら、もっと誇らしげにすると思っていたのだけど)
時折、悔しそうな目で私を見ている気がする。あ、もしかして……ちゃんと主席の座についた上で挨拶したかったのかしら?
実力で手に入れたものではないから、誇らしく思えないのかもしれない。
だとしたら、パトリシア様は立派な侯爵令嬢だと思うわ。
卒業生代表の挨拶も恙なく終わり、次はダンスの時間。
いよいよ練習の成果が試される時が来たわ!
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